まとめ

 まとめです。


 かしこいとは何か? 知略を小説に出す上で、何を考えるのか?

 とても大事な内容を書きます。

 


 ――知略とは一見すると、何かすごいものに見えます。

 しかし実際のところ、そんな大したものではありません。


 ここまで書いて身もふたもないことを書きますが、ぶっちゃけます。

 人間はそこまで賢くありません


 人間を動かすのは感情です。

 知性が全ての問題を解決してくれるわけではありません。


 でたらめにスイッチを押して、たまたまはじき出された結果。

 その結果が合理的に見える、得をしたように見える。

 現実ではそんなことのほうが多いのです。


 人が考えて動くことは、そう多くありません。

 感情や直感に基づいて、デタラメに行動するのが普段の振る舞いです。


 ここまで書いた知略の話では、こういった冷静さを欠いた行動までは予測しません。デタラメを確実に予測なんかできません。だからデタラメなんです。


 国家の存亡が関わる決定に、人の感情は歓迎されません。

 しかしそれは往々にして発生します。

 東欧において、それが現在進行系で起きているので、納得できるでしょう。


 ナッシュ均衡に基づいた選択が、最適な答えなのはわかっています。

 しかし人の感情はそうではありません。「負けたと見られたくない」これだけで人の認知は大きく歪みます。


 知略というのは、相手が合理的な判断をすることが前提になっています。

 揺れ動く人間の感情まで考慮に入れると、なかなか決定できません。


 知略を考える上で、「ただし指導者に感情はないものとする」この一文が必要となります。そうでなければ、どのセンテンスもとても2000文字以内では書けなかったでしょう。それだけ複雑なのです。


 しかし、相手の動きを先読みするのも、知略の大事なポイントです。

 感情も好悪判断という情報にすぎないので、一応の推測は可能です。

 敵は損得勘定より感情を優先するか? もしするなら、どこがしきい値になるのか? この情報は現実でも、小説でも、かなり重要です。


 負けられないものがあるかどうかは、キャラクターの根幹ですので、そこを決定すると、知力バトルに深みが出て、失敗に妥当性が生まれます。

 ここに注目するべきなのです。


 あとよくやりがちですが、主人公が勝利を独り占めする。

 これもあまり良くありません。


 何故かというと、利益を独占すると、次は主人公がヘイトを買う側になるからです。利益を得られなかった側からの反感、あるいは慢心。自信過剰。


 これらが悪影響を及ぼし、読み手が「主人公に負けて欲しい」と思わないようにしなければなりません。ちゃんと主人公の戦う動機、納得できる感情を用意しましょう。ここがすっぽり抜けていると、危ういことになります。


 方法に対する忌避感というのは、意外と大きいものです。

 日本の文化的、教育的素養なのかも知れませんが、主人公らによる、敵方からの徹底的な収奪というのは、あまり好まれないようです。


 相手を徹底的に叩きのめして、その利益を全て奪い取るという西欧的やり方。

 相手のルールの穴につけこみ、その利益を破壊するという中華的やり方。

 相手を兄弟、友邦化、属国化して、利益を吸い上げる東欧的手法。


 我々が馴染み深いのは、囲い込んだ密室で利益を分け合う日本的手法です。


 日本で成功する人物というのは、協力すると、継続的に「うまい汁」を吸わせてくれるという人です。利他的な人物のほうが、成功をつかむことができます。


 それぞれの国は上記の各要素をちゃんと持っており、要素の濃淡があります。

 日本においては、ひときわこれが強いようです。


 しかしこれらの要素があっても、結局のところ運用するのは人間です。

 小説の中で意思決定をするのは人間、「キャラクター」です。


 「利益をいかに高めるか?」「損失をどう減らそう?」こういった目的を支える価値観は、そのキャラクターにあります。


 しっかりとした価値観を持たせましょう。

 キャラクターに考えの芯を感じられると、読み手はその選択の妥当性を感じます。なんでこうしたのか? それが伝わりやすくなります。


 愛を何より尊いと思っている人は何を選ぶのか?

 金こそ全ての守銭奴は、何を捨てるのか?

 信頼できる人を失った独裁者は、どう考えるのか?


 何を犠牲にして、何を得ようとするのか?

 ここにキャラクターへの「共感」が発生するポイントがあります。


 「自分にとって何が大切だったのか?」それを見失って、犠牲を払って勝利したものの、戦いの後、大きな喪失感に悩まされる。そんな話はありふれています。


 「本当に求めているものは何か?」


 知略という選択が浮き彫りにするのは、この問なのです。


 勝ち抜くとはどういうことか?


 「勝つこと自体が幸せ」という人もいるかも知れません。

 人が幸せになることが最大の目的なら、幸せとは何でしょう?


 知略はあくまで戦いの一形態です。

 戦いの先にあるのは、幸せになりたいという想い。

 そういった普遍的な目的、誰もが持つ目的です。


 さて、最後に問いましょう。

「何のために争っているのですか?」


 この言葉がなにかの役に立てば幸いです。


 ではでは!

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【知略とは?】賢いヒロインコンテストの前に、知略を知ろう! ねくろん@カクヨム @nechron_kkym

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