知略と逆転劇

 知略を使った逆転劇について解説します。

 逆転劇では何が起きているのか? それを紐解いていきましょう。


 さて、現実でおきる「闘争」とは実に複雑なものです。

(この闘争とはゲーム、ビジネス、戦争、利益を争奪する行為全てを指します)


 2人でリバーシを遊んでいたら、途中からジャンケンになり、将棋になり、果ては6人プレイのモノポリーになることは、まずありえません。


 しかし現実における「闘争」はこういった変化が起きます。

 まずこれを前提として理解してください。


 変化とはどういったことか?

 その場で得るべき「利益」守るべき「ルール」決定のタイミング(同時か交互か)2人の争いがそれ以上の多人数の規模に展開する。


 変化とはこういうことです。

 そしてこの変化は度々「あること」を引き起こします。


 それは何か? 「勝利条件の変化」です。

 逆転劇とは、ことにより発生するのです。


 例えばこんなのはどうでしょうか。


 田舎にいる主人公は、錬金術師で、革命的なハイポーションを作成しました。

 そのハイポーションは人体の欠損部位すら修復します。


 しかし、とある貴族がそのハイポーションのレシピを奪い、都会で大規模に販売を行い、そのハイポーションの名声、利益を奪いました。


 主人公は知略でこれを乗り越えることができるでしょうか?

 とても高い障害が用意され、ハラハラします。これを知略で乗り越えることができれば、きっと読み手はスカッとするでしょう。


 ここでやるべきことは、勝負が成立する前提の破壊です。

 主人公は「ゴールポストを動かす」のです。


 さて、最初に勝負の勝ち負けを決めたのは何でしょう?

 「ハイポーションの大量供給」です。


 いくら能力があっても、主人公は個人にすぎません。

 資本力の違う貴族と大量供給で争っても、とても戦いにならないでしょう。


 しかし主人公はハイポーションを作って争うことはしませんでした。

 それどころか、より効力の弱い「ローポーション」を制作します。


 貴族はかすり傷しか直せんものなどゴミだ! と高笑いしてハイポーションを作り続けます。そして国にも効果が認められ、軍隊、冒険者にも供給されます。

 貴族は「ケガをする全ての人々のために、ハイポーションを!」といって大量に薬を作り、「偉大な錬金術師」という大いなる名声を手にします


 主人公はローポーションを作り、村の人や労働者へ販売します。

 日常のケガ程度なら、これで十分だからです。


 そして、ハイポーションを売り続けた都会ではある変化が出てきました。

 治安が急激に悪化したのです。


 手足を失ったとしても、ハイポーションで治療できるので、悪党は無茶な襲撃を街のあちこちで繰り返し、冒険者たちも、とても気性が荒くなりました。


 そしてハイポーションは依存症を発症させ、街には廃人同様になった人々が歩き回るようになりました。この事態を引き起こした貴族はハイポーションの販売について追求されます。これは麻薬の販売と同じだと。


 結果、金と名誉に目がくらんだ貴族は斬首され、主人公はこれまで通り、ポーションを作って生活できます。


 ローポーションはハイポーションに対する、最適のイメージ戦略でした。

 強いポーションは心を傷つける。そういった理解が人々の間に広まり、ローポーションはただの効力の弱い薬では無いことに、人々は気づいたのです。

 これは錬金術師の「人々に健やかであって欲しい」そういう想いが詰まったポーションがローポーションだったのです。


 そして主人公は名声を取り戻します。

 主人公こそが、人々のためになる、本当の「偉大な錬金術師」だったのです。


 主人公はハイポーションを作り続ければどうなるか、それを知っていたのです。

 それが師匠の知識から来るのか、前世の知識から来るのかはお任せします。


 ともかくこれを、「情報の非対称性」といいます。

 

 戦いの質を変えられるものは、情報の他にもあります。

 先ほどの例では、プレイヤーの数を増やすことでもよかったはずです。


 もしハイポーションの服用にデメリットがない場合であれば、各地の錬金術師と連絡を取って、数で対抗する方法だってあったはずです。

 単純な生産性ではなく、地域の特色に合ったハイポーションを各地で出せれば、いくら資本があっても、貴族に勝ち目はありません。


 鉱山街では荒っぽい扱いに耐える、頑丈なボトリングにする。

 港町ではすこしでも箱に積みやすいように角瓶にする。

 そう言った具合です。


 こういった差別化戦略をされると、貴族は成す術がありません。

 なにせ大量生産、大量投下が強みなわけですから。

 いちいちニーズに合わせた生産なんかしていられません。


 そう、これもゴールポストを動かされたことによる敗北となります。


 あるいは相手を切り崩す方法もあるかも知れません。

 

 貴族の手下の集団、その一部を切り崩して味方につけることができれば、その分相手は弱体化されますし、こちらは強化されます。


 手下の彼らがハイポーションを作る理由は、なんでしょう?


 作者のあなたが、彼らの目的を決めてください。


 一つ注意ですが、ちゃんと貴族と別の目的をもたせましょう。手下の彼らが貴族と同じ目的をもつ一つのプレイヤーでなければ、必ず、彼らは味方にできます。


 手下が貴族と同じ目的「名誉と金」を持っていた場合、切り崩すのは困難です。

 しかし、街を良くするためという目的を持っていれば、主人公の錬金術師の話をきっと聞いてくれるでしょう。


 まとめます。


 「知略による逆転」に必要な要素は以下です。


 ・主人公とライバルの間で起きる闘争は、複雑で変化する。


 ・逆転は「ゴールポストを動かされた」事によって発生する。


 以上です。


 次のお話はまとめになります。

 題して、何のために知略を使うのか? と言った内容です。


 そちらも呼んでいただけると嬉しいです。

 ではでは。

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