第15話出会いは魔術師 (11)

マレット③


 『瞬間移動テレポート』をしたはいいが、この後どうするか俺は悩んだ。

この少女はなぜ『魔眼』を持っている?いろいろ考えたが、何も分からない。

 正直、ミホをどうしようか迷う。

魔術師と世間に知られれば、この国でたぶん、生きていけなくなる。そうなると、俺の全世界の料理を食べたい!という目標が……。いや、そういうことじゃない。邪念を振り払った。

 殺すことは簡単だ。この娘には親がいないから、知られることもない。

しかし、ためらいはある。俺もひとだ。お世話になった人への恩はある。

 だが、それとこれとは別だ。怯えた目で見てくる少女をもう一度見た。

左眼に『魔力感知』の魔眼か。俺はいつも通りの声でミホに言った。

「その眼、どこで手に入れた?」

 本来魔眼は超上位魔法だ。

普通持って生まれる数は、魔術師で100万師にんに│1ひとりだ。

それを、普通の人間が持つはずがない。というか、人間が持てるはずがない。

「え、えっと~。そ、その~。」

少し威圧しすぎていた。

俺はもう一度、瞬間移動テレポートを使い、ミホを椅子に座らせた。

驚いたミホだが、覚悟を決めたのか、真っすぐ俺を見て話し始めた。

「2年ぐらい前に通りでケガをした時、フードを被った老人に手当をしてもらったんです。その老人は道に迷っていたみたいで、御礼に駅まで道案内してあげたんです。そしたら、老人が私の目の前で何か唱えて、『御礼だ。』と言ったあと、こう言われたんです。

『わしがあげたのは、魔術師かどうか判断する魔眼じゃ。魔力が多い人、つまり魔術師に会うと、その眼でオーラを感じることができる。その時まで、この事は秘密にしとくんじゃぞ。』老人は、そのまま電車に乗ってどこかに行ってしまったんです。

当時は何のことだかさっぱり分からなかったんです。でも今朝、目覚めると急に目が痛くなって、それが収まったら誰かを探しに行きたくなったんです。そして1日中歩き回って、マレットさんに出会ったんです。」

 ミホの話が終わった。

なるほど。その老人と俺が目覚めたのは何か関係あるに違いない。多分そいつは魔術師だ。しかし、魔眼に気づかないとは自分が情けない。

「あ、あの~。私は殺されるんですか?」

ミホが聞いてきた。

そうだ。それについてどうしようか。

「あなたの正体を知ってしまった以上、私殺されるんですよね?覚悟はできています。一思いに殺ってください!」

そう言って、ミホが手を大きく広げて、目をつぶった。

ミホさん、何というか……。それじゃあ胸を強調しているようで、はしたないですよ。。

まあ、いい。答えは決まっている。

「いや、殺しません。」

「え、じゃあ、一生苦しめられる無限空間に放り込まれるんですか?」

「いや。」

「じゃ、じゃあ、四肢をじっくり全部切るんですか?」

「いや、いや。」

「じゃ、じゃ、じゃあ、私に辱めを?」

「待ってください!そんなことしませんよ。師なんで良心ぐらいあります。しかも……。そんなことできませんよ。」

ミホの話を遮り、ツッコんだ。

この娘、怖すぎだろ。思考も行動も全て。

え?て言うか、俺そんなに悪い奴に見える?すごく傷ついた。悲しいわ…。

いやいや、平常心だ、平常心。ミホといると、こっちのペースが乱される。

「と、とりあえずミーホ。」

俺が名前を呼んだ瞬間、ミホが吹き出した。

「ハハハ。やっぱりマレットさんだ。ミーホって、私は美穂です。」

「あ。ハハハ。」

うん、彼女には笑顔が似合っている…じゃなくて。

「その老人について、もう少しくわしく教えてくれませんか?」

「ごめんなさい。でもその日以来、その老人とは会っていないんです。なのでその後は、わかりません。」

そうか。なるほどね。ほとんど情報がないのか。

ま、とりあえず、この国で暮らすことは変わらん。なにより、世界中の料理が俺を待っているからな……じゃなくて。とりあえず、寝れる場所でも探すか。

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