第41話 彼ら

「……どういう意味です? モルガン」


 問いかける霧彦きりひこに対し、モルガンが静かに答える。


『彼が来ました』


 その声でようやく気配に気づいた霧彦が、舌打ちをしながら距離を取る。その動きでクラレントの攻撃が止まったため、景梧けいご達は純汰じゅんたの背から降りた。


「なにが起こって……は?」


「お前も知らないっつーことは……最後の騎士か?」


 警戒する二人の横で、純汰が元の人の姿へ戻る。息を切らせる彼を庇うように、忠義ただよしが立つ。その様子を横目で見つつ、景梧は霧彦と現れた男を睨みつけた。


「どうやら、生き残っている者は揃っているようだな。あぁ、ランスロットの座に就いた……湖西頼こにしらいという。ふむ、名乗った方が確かにいいな?」


 一人語ると、頼は高らかに宣言した。


「さぁ、裁定の時は来た! アーサー王をモルドレッド卿! そして……ガレス卿とベディヴィエール卿! 三人には死んでもらおう! あぁ、ケイ卿。君には話があるので後回しだ」


 どこまでも死んだ瞳に、殺意だけを宿して。

 頼はランスロットとしての力だけではない……全能力を解放した。


「アロンダイト! 全てを終わらせよう……リーレ!」


『えぇランスロット様。終わりにしましょう』

 

 アロンダイトが分裂していく。それは先程のクラレントと似ていた。

 だが……決定的に違うのは――。


「君達は知っているかい? ランスロットは……全てを裏切った。愛に目覚めてね? だからこそ、その愛に! 答えようじゃないか!」


 分裂したアロンダイトが、巨大な円を描く。そして、回転しながら光を纏い出した。霧彦が叫ぶ!


「この戦い! 勝たせてもらわないと……困るんですよ! モルガン! いいから言うこと聞いて展開を!」


『……承知しました。クラレント、展開』


 先程の攻撃を繰り出そうとする霧彦。それを見て、景梧と忠義がそれぞれ剣を構え直した。


「行くぞ! あぁ、もし……ついでの二人以外にケイ卿、君も殺してしまったらすまないね?」


 不敵に笑うと、自身が手にしているアロンダイトを掲げ、光の輪をそのまま


 高速回転する光の輪は、四方八方に光線を放ちながら霧彦に向かって行く。その攻撃を解放したクラレントで防ごうとする。だが……。


「なんっで! 威力がこんなに落ちているんですかね!? モルガン! モルガン!!」


『障壁、展開できません。魔力不足です』


「……はぁ!? ふざっけんな! 死んでもいいんですかー!? 自分、重要人物でしょう!? なんせ!」


「アーサー王……もとい、狩屋朝春かやあさはるを殺したからだろう? だが、そんなことは粗末なことなんだよ。そう、そうとも! 我が愛の前に、全ては無に還すのさ!」


 頼が初めて大声を上げて笑った。その表情は狂気に満ちていて……見る者に恐怖を与えた。

 その間にも、光の輪はあらゆる場所を破壊しながら霧彦に迫る。


「ちぃ! ちくしょう!」


 叫ぶ彼の前に――景梧が現れた。

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