第40話 能力解放

「モルドレッド卿……なぜそう思うのですか?」


 忠義ただよしの言葉に、景梧けいごは顎に手をやりながら答えた。


「……確か伝承じゃあモルドレッドがアーサー王の死の要因になっただろ? だから、何か関係があるんじゃねぇか? そう思っているだけだ」


 あくまでも他人事として話す景梧に純汰じゅんたがなにか言いたそうにする。だが、それを視線で黙らせた。

 その様子を忠義が鋭い視線で見つめてくる。


「……なんだ?」


「いえ、なんでもありません。では、これからどう動きますか? ……というつもりでしたが」


「あぁ」


 二人は同時に剣を抜き、同じ方向を向いて攻撃に備えた。


「へぇー? 即席にしては良い反応じゃないですかー?」


「よう。会いたくなかったが、探してはいたぜ。百瀬川霧彦ももせがわきりひこ君よぉ?」


 そこにいたのは、モルドレッドの座に就いた霧彦その人だった。


「へぇ~? 覚えてくれてたんですね~! そいつはどーも、っと!」


 二人の剣を足蹴にして、一回転して霧彦は地面に着地する。舌なめずりをすると、三人に向かって不敵な笑みを浮かべる。


「いやー……獲物がいるのはありがたいですね? モルガン!」


『承知しました。モルドレッド』


 モルガンが半透明な女性姿を取る。それを見て、忠義が目を丸くした。


「魔女が半実体化? ……どういうことです?」


「知らねぇが……何か来るのは間違いねぇ! 備えろ!」


 景梧の言葉で、三人は防御態勢を取る。そのタイミングで霧彦が告げる。


「クラレント……オーバーレイ!」


『アシスト機能、解放。クラレント――。放射開始』


 能力を解放したクラレントが言葉通り複製され、光の刃が雨のごとく降って来た。


(不味いな! これじゃ避けようがねぇ!)


 その時だった。純汰が前に出る。……覚悟を決めた表情で。


「何するつもりだ、ガキ!」


「ずっと……僕は、足手まといでから……だから!」


 今にも迫って来る光の刃を目前に、純汰が叫ぶ。


「能力解放! 猛り狂う狼ランページ・ウルフ!」


 純汰の身体が変貌していく。その姿は……巨大な狼へと。


(これがあのガキの能力だってのか!? 人が変化? いよいよ、ファンタジーじみてきやがった!)


 狼となった純汰は、景梧と忠義を口で加えて背に乗せると勢い良く走り出した。

 霧彦とモルガンの猛攻を猛スピードでかわしていく。


「ちぃ! でかい割に素早いですねー? モルガン!」


『モルドレッド、それはでしょう』


「……あ?」


 モルガンが霧彦の命令を拒絶した。そして、一言告げた。


『……ここまでです』

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