第9話 俺は最後まで諦めねぇ!!
強制ロックを解除するには、そこにいるボスを倒すしか方法は無いだろう……だが、今の俺達が適う相手ではないってことは、火を見るよりも明らかだった。でもここから逃げれない以上、戦うしかなくないか……!?
「類、こっち来てる!!!」
「……ッ、気づかれたか!!」
そしてその超巨大カブトムシは俺らの存在に気づいたらしく、Uターンして俺らに向かって飛んで来た……だけど方向転換は苦手なのか、俺らに向かってくるスピードはかなり遅くなっていたんだ。
「これなら狙える……!? ……てやぁああッ!!」
イケると思った俺はその飛んで来たヤツに対して、剣を振り下ろした……が。その鉄のような硬さの殻に阻まれ、俺の剣は大きく跳ね返されたんだ。
「なっ……!?」
こいつ……装甲が!? もしかして物理技が効かないのか……!?
「類、危ない!!」
「えっ────」
『あ』
『ヤバい』
『よけろナッパ!!!!』
『正面見ろ!!!』
そして俺は剣を弾かれたその格好のまま、ヤツの突進攻撃をモロ喰らって……大きく跳ね飛ばされた。そして地面に落下すると当時に……全身に痛みが走った。
「いっ……!!!??」
や、やべぇ……!! 頭がカチ割れそうなくらい痛ぇッ……!!
『ヤバいヤバい!!!!!』
『骨折れてないか!!??』
『速度の割に大きく飛ばされたな』
『しっかりして!!』
『救急車ー!!!』
「『ヒール!!』 しっかりして、類!!」
そんな光景を見ていた彩花は、すかさず俺に回復魔法を使ってくれて。俺の身体の痛みは徐々に引いていった。この驚異的な回復力、やっぱりゲーム的な力が働いてるとしか思えない……いや、そんなこと考えてる場合か!
痛みが収まった俺は立ち上がって、彩花にお礼を言った。
「あ、ありがとう……でもこの状況、まずくねぇか?」
「類も魔法使うんだよ! 私はサポートしか出来ないけど、類は攻撃出来るから! 戦うんだよ!」
「……ああ。分かった」
今のところ俺しか攻撃魔法は使えない。そしてヤツに試していないのは、サンダーだけ。これを当てるしか……きっと勝ち目はない! 俺は落ち着いて右手を構え……もう一度、俺らに突進しに来ようというタイミングで。
「サンダー!!」
サンダーを放ったんだ。そしてそれはヤツのデカい図体に命中して……カブトムシはフラフラと地面に落下した。
「当たった!!」
『怯んだ!』
『WEAK!』
『弱点だったのか!?』
『叩け!!』
『これで敵は総崩れだー!』
「よし、狙える!!」
ヤツは落下して混乱状態……今なら殴り放題だ。だけど物理技が効かないから、今の俺に出来ることと言えば……。
「連打だ!!」
──
──そして俺は連続でサンダーを放っていった。俺がサンダーを打つ度、ヤツはバタバタと足を動かしてもがいているから、効いてない訳じゃなさそうだけど……。
「はぁ……はぁっ……!!」
こっちの体力が限界だった。どうやら魔法を使いまくると、大きく体力を消耗するらしい。途中で彩花に回復魔法を使ってもらったが……どうやらあれはケガとかにしか効かないみたいだ。
『なんかスピード落ちてね?』
『サンダーもブレてるも!』
『電撃が弱点でホント良かったなぁ……』
『飛ばされた時はヒヤヒヤしたよ』
『かれこれ20分は打ち続けてるか?』
「類、多分もうちょっとだよ! 頑張って!」
「頑張ってる人に頑張ってって言っちゃいけません……!! サンダー!!」
何とか歯を食いしばりながら俺はサンダーを放ち続けた……が。
「……あれ?」
途中で手から何も出なくなったんだ。何かやり方をミスったのかと、もう一度俺は手を向けて魔法を放とうとするが……。
「サンダー!!」
「……出ないね?」
「……さんだー!!!!!」
「……」
それからは何回試しても、サンダーが出ることは無かったんだ……ここで俺は、最悪な考えに至った。まさか……MP切れ……!?
「類、起き上がるよ!!」
『ヤバい!!』
『復活したらまた突進が来る!!』
『今までの分お返しされるぞ!?』
『サンダー打てなかったらどうすんだ!!』
『策はあるのか!?』
……ヤバい。ヤバイヤバイヤバイ。俺のサンダーは恐らくMP切れでもう発動できない。彩花は今のところ回復魔法しか使えない。物理技は効いてるとは思えない…………この状況、詰みか? 俺の人生は……ここで終わっちまうのか?
『まだ諦めるなっ!!』
『死んじゃやだよぉ!!!!』
『ルイならやってくれると信じてる』
『レイちゃんを守ってくれ!!』
『お前はこんな所で終わる男じゃない』
『いつも通り神回を見せてくれ』
……そうだ。俺だけじゃない。彩花もいる。こんなどうしようもない、クソみたいな人生を変えてくれた恋人がいるんだ。そんな大切な人を護れないなんて……ここで諦めるなんて。彼氏として……配信者として失格だっ!!!
「……ッ!! 俺は最後まで諦めねぇ!! 来いよ! デカブツ!!」
そして俺は起き上がったヤツに対して、剣を構えた……所で。
「…………類!! 目いっぱい口を開いて!!」
彩花の声が聞こえてきたんだ。
「えっ……?」
「良いから!!!!」
「……?」
その勢いに圧倒されて、言われるがまま俺は口を開けた……そしたら彩花は持てる分だけの薬草を、俺の口の中に突っ込んできたんだ。
「フッ、フゴッ……!!??」
驚きながらも俺は咀嚼する……に、苦ぇ……!! でも……! それをかき消す程、あり得ないくらい力が湧いてくる!! ……ああ、そうか!! この薬草はHP回復アイテムじゃなくて……MP回復アイテムだったのか!!
それに気づいた俺は、剣を持っていない左手をヤツに向けて。
「うおおおおおおおおッ!! サンダァーッ!!!!」
魔法を放ったんだ。それは今までで一番大きな轟音を鳴らして、ヤツに飛んでいって……ど真ん中に命中した。そしてヤツはまた地面に落下して……消滅した。同時に『ファン』と謎の音が聞こえたが……多分これはロックが解除された音だろう。
『きたああああああああああああ!!!!!!』
『88888888』
『すげええええええええええええ!!!』
『やりやがった』
『やっぱルイならやってくれると思ったよ』
『見てるこっちが緊張したわ』
『生きててくれて良かった……!!』
それで彩花もコメントと一緒に喜んでくれて。
「やったー!! 凄いよっ!! 本当に倒しちゃったよ、類!!」
「あ、ああ……早く帰ろう……このままだとガチで死ぬ」
「でも、討伐アイテムはちゃんと持って帰らないと……リュックに入れておくね?」
「早くしてくれよ……何よりも命が大切なんだからな?」
そんな説得力マックスの俺の言葉を聞きながらも、彩花はカブトムシが落としたドロップアイテムをリュックに詰めて……そしてそれが終わったら、改めて俺にお礼を言ってきたのだった。
「分かってるよ……ね、類。助けてくれて本当にありがとね!」
「そんなの後でいくらでも聞くから、早く帰ろう……」
「……うんっ!」
『マジで疲れてそうで雷』
『お疲れやで』
『本当に神回だったな!!!!』
『今なら飛ばされるルイの切り抜き、笑って見れるなw』
『MAD素材にしよう』
『でもルイの魔法カッコよかったぞ?』
『ダンジョン配信ってマジで面白いなぁ……!』
『ルイ……貴方はダンジョン配信者になりなさい』
『そういやこいつらVTuberだった』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます