第6話 WEAK!

 そんな感じでモンスターを倒しながらダンジョン内を進んでいくと、俺らは地下へと続く階段を発見した。スマホのライトで階段の先を照らしながら……俺は呟く。


「階段か……まだ先があるのか?」


「じゃあ次が二階ってこと?」


「地下二階だけどな。それで……どうする?」


「どうするって?」


「このまま進むかどうかだよ」


 俺の言葉に彩花は「行かない選択肢があるの?」とでも言いたげに、階段の方を指さして。


「もちろん行くよ! だって類もまだまだ行けるでしょ?」


「いやまぁ、行けるか行けないかで言ったら、行けるけど……」


「けど?」


「本音を言うならもう帰りたい」


『草』

『草』

『ルイは出不精だからな』

『お前が怖がりでどうするww』

『お前が戦闘要員なんだぞ?』


「えーどうして! サンダーとか出るならワクワクするでしょ!」


「いや、この技も無限に使えるとは思えないし……それにゲームみたいな仕組みなら、敵だってどんどん強くなるはずだろ? 安全を考えるなら、この辺りで引き返したほうが良いのは確かだ」


『なるほど』

『確かにな』

『冷静なのはルイだったか』

『武器も心もとないしなぁ……』

『でももっと見たい!!』


 そんなコメントの掌返しは置いといて。彩花も俺の言いたいことは伝わったらしく、一瞬だけシュンとしてみせた……が。すぐに元通りになって。


「そっか……でも! 私は進みたい! もっとこの場所をみんなに見せたいの!」


 そうやって言い放ったんだ。彩花は一度決めたことは曲げないということを、俺は痛いほど知っているので……まぁこう応えるしかなくて。


「はぁ……それ聞いたら、一人で帰れねぇんだよなぁ」


「……! ふふっ、ありがと類!」


 そして嬉しそうに彩花は俺の肩に触れるのだった……ま、階段を見つけた時点で、こうなることは予想出来てたけどさ。俺は「やれやれ」とわざとらしく頭を掻きながら、暗い階段を降りていったんだ。


 ──


 第二層。ダンジョンの雰囲気はそれほど変わっていないが、さっきは見なかった大きな岩やため池なんかがあることから、ダンジョンの構造は変わっていることが分かった。念のため、トラップとかにも気をつけないとな……あ、カメラマンはまた彩花に変わってもらったから、先頭歩いてるのは俺な。


「んー。なんか静かだねー?」


「それフラグだから……あとレイもちゃんと周り見てくれよ? いきなり襲われたら、多分俺スライムでも勝てないからな」


「あははっ、りょーかい…………って、類! あそこ、上見て!」


「えっ?」


 彩花の焦った声を聞いて上を見ると……そこには紫の羽が生えた、コウモリみたいなモンスターが天井にぶら下がっていたんだ。俺は目を凝らしながら、更に様子を確認する。


「なっ、あれは鳥モンスター? 例えるなら……ドラキーっぽいか?」


「いや、どっちかと言うとズバットじゃない?」


「……じゃあズバキーでいこう」


『草』

『草』

『適当だなwww』

『命名しとる場合かww』

『早く攻撃するんや!』


「よし、じゃあ戦おう、類!」


 そう言って彩花はゴルフクラブを渡し、一歩下がって撮影の体勢を取ったんだ……でも、天井はかなり高いし。ここで下手に刺激する方が不味いんじゃないのか?


「でもアイツ、天井にぶら下がってて攻撃が届かないぞ? ここは無視して進むべきじゃないか……」


 ……と言った所で、ズバキーは口から針のようなものを飛ばしてきた。その攻撃は大きく外れたが……予想外の攻撃に俺ら二人はパニックになってしまった。


「うわああっ!!? なんか飛ばしてきたぞ!?」


「ほらぁ!! やっぱやっつけなきゃ駄目なんだって!!」


「だからゴルフクラブじゃリーチが足りないって……!」


「そういう時の為のサンダーでしょ!!」


「そ、そっか!!」


 サンダーの存在を思い出した俺は、急いで力を込めて……右手から稲妻を放った。


「さっ、サンダー!!」


 だが精度が足りないのか、その電撃はズバキーの右側に大きく逸れた。続けてもう一発サンダーを放ったが……次は大きく左に逸れてしまった。


「……クソ、全然当たんねぇ!!」


『命中率×』

『ノーコンか?』

『ジグザグに飛ぶんだな』

『Rスティックを押し込んでロックオンするのだ!!』

『モンハンで草』


「大丈夫、類、落ち着いて!」


「分かってる……!」


 俺は心臓に手を当てて心を落ち着かせる……ゲームだと選択してるだけだけど、実際に戦うとこんなに攻撃は当たらないものか……! ゲームで外した時、俺もボロクソに言ってた気がするけど……実際は当てるのが凄いのであって、当たらないのが普通なんだよ!! ポケモン勢に言ってやる!!


「……ッ、サンダー!!」


 そして俺は目を見開き、今までのサンダーの軌道、ズバキーの移動方向まで全て考え抜いた上でのサンダーを放った。FPSゲームで偏差撃ちを練習していたもあったのか、その攻撃は奇跡的に上手くいって……。


「当たった!」


 サンダーはズバキーの胴体に命中したんだ。そして感電したのかビリビリと震え、そのまま地面に落ちて……ズバキーは消滅した。直後、彩花が俺に駆け寄ってきて。


「凄いよ類!! お手柄だよ!」


「あ、ああ。でも一発って……コイツ、防御力は低いのか?」


 そう聞くと、彩花はこくこくと頷きながら。


「んーこれは弱点って可能性が高いね。飛行に電撃は効果抜群だから!」


 少しゲーム脳過ぎるが……まぁ、その可能性はありそうだ。


「なるほど……でもちょっと不便だな。弱点ならWEAKとか周辺に表示して欲しいよな」


『草』

『雷』

『雷』

『雷』

『だからペルソナじゃねぇか』

『お前もゲーム脳になってきたな』

『さっきのシーン、カッコよかったぞ!!』



 ──

 ──

 伏せ字を無くしました。怒られたらちゃんと隠します。

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