第30話 知識には2種類あってですね、フローとストックという。まあこれはビジネス用語なんですがカンファレンス等の場面では使わないので。王国でなんてもってのほかです。

 その青い騎士はナスカという名前だった。


 ナスカの馬にショーンKは乗せられ、王国街に向かっている最中だ。


 ナスカは馬の少し前を歩いている。


 しばらく歩いた後、木の影から街が見えてきた。


「あれが…」

『あれが王国街か!』


 思わず声に出しそうだった。また同じ過ち詐称バレを犯す事になる。


 次やってしまったらもう命は無いと思っていいだろう。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「で、あなたは何者なの?」


 王国街内にある、小洒落こじゃれたレストランでナスカはショーンKに聞いた。


 兜を被っている時とは口調が違うため、仕事のオンオフを使い分けているのであろう。


 今は柔らかな口調なのでオフモードか。


「何者って言われても…」

 さりげなく周囲を見渡す。客はショーンKたち以外にもいたが、皆日本では見慣れない服を着ていた。


『ほんと、中世ヨーロッパのせかいだ。ボクはタイムスリップしたのかなあ??』


 ショーンKに関してはパジャマなので、現代日本だろうが中世だろうがどのみち場違いな服装なので目立ってしまう。


 その証拠に周りの客がチラチラショーンKの方を見て笑っている。


『う…なんかみられてると思ったけど、きのせいじゃないな』


 さらに予想外だったのが兜を脱いだ際、ナスカは女であったという事実にも驚いた。

 そして


 ナスカはグイッと顔を近づけてくる。


「答えられない?さてはやましいことがあるの?」


 青色の瞳がショーンKの目を睨みつける。


 敵意と疑念を持っているはずの目なのだが、吸い込まれそうなほど綺麗だった。


「違う。周りの目が気になるんだよナスカ」


 適当な言い訳を即興で作ることに関して、ショーンKの右に出るものは居ないだろう。


「あ、そうか確かに!頭おかしいおじさんだと思われちゃうね」


『くちわる…』

「ナスカ、君はとても美しい女性なんだからもう少しおしとやかな言葉を選んではどうだろう」


「うるさいな。分かったからちょっとついてきて」


 ー・ー・ー・ー・ーー・ー・ー・ー・ーー・ー・ー・ー・


「え、ちょ…え、ここ王宮だろ?」


「そう。アナタの雰囲気といい語彙力といい、少なくとも平民じゃない」


 そう。彼はニートである。


 ナスカは国王のいる謁見室の前までショーンKの手を引っ張ってきた。


 まさか王宮に連れてこられるとは思わなかったショーンKは、かなりヒヨッていた。


 気を抜くとまた失禁しそうなほどに。




 トントン…

 大きく、そして美しいレリーフが彫られた両開きの扉をノックするナスカ。


「入れ」

「失礼します」

 ナスカが扉を開ける。


 椅子に座っていたのはブリッジ国王という人物だった。


『いやめっちゃえらい人じゃねーー!?』


 彼はショーンKをひと目見るなり、ひとこと言い放った。


「その容貌と纏う気品…さては法務省の人間か?」


 ショーンKの只者とは思えないカリスマ性のようなものは、日本だろうが異世界だろうが関係ないらしい。


『またでたその単語!』

「どうでしょうねぇ、私はただNo Return的感性で出歩いていたのですが街外れの森で迷い、そこで少女の皮を被った人狼にたぶらかされ、残酷なまでに搾取されそうになったところでこの気高く美しい御方であるナスカさんにアジャイル要素をもってして救われたという事実を持っているだけの人間なので議論の余地はないと解釈しています。この話を続けるということはTime is moneyな観点から言えば時間の無駄ですよ。しかし、こんな場面のコンティンジェンシープランは考えていなかったな…」

『おうちに帰りたい…。さっきから思ってたけど、ここは天国じゃないみたいだ』


「なんという話術…!」

 ブリッジ国王は驚いている。


「そういえば名前聞いていなかった!なんて言うんですか?」


 ナスカが国王に背を向け、ショーンKに聞いてきた。


 王の眼前とは思えない態度だ。


『この世界ではなんて名乗ろうか。中世の国っぽいからな。考えろ…頑張れボク頑張れボクがんば…』


「…ガ、ガンバルデウス」


「…ガンバルデウス?」

「…」

『ヤバかったか!?江戸川コナン的なノリで言ってしまったんだがこのせかいじゃ不自然だったか???』


「ガンバルデウスだと!?あの伝説の!?」


『は?伝説?』








 思ったより長引いたなぁ。ショーンK編は終わりです。

 読んでいただいた方には感謝です。

 

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