第2章 再会  第2節 楽しい食事

7


 「何これ…60憶…どういうこと?」


 「私もわからないから、怖いのよ。

振込名義人もすごいでしょ?」


 「うん?…セカ…イト…ノカ…ケハシ…?」

 


 二郎じろうは昔から、

国語はあまり得意ではなかった。


 中学生の時、

ひらがなが羅列られつした古典がわからないから

予習をすると言って、

沙恵さえに『更級日記さらしなにっき』の現代語訳について

質問してきたときのことであった。


 「ん?『もんで』って何?」


 「ああ、これは『かどで』って読むのよ。」


 二郎は『門出』を『もんで』と読んで、

意味がわからないと言っていたことを

急に思い出した。



 「多分、『世界との懸け橋』だと思うんだけど。

組織名か何かかな。」


 「うわー、なんか、

ミステリーって感じだなあ。」


 全く、現実感がない。


 しかし、これは事実なのだ。


 銀行の窓口で、確認もした。



 二郎が、夏目漱石なつめそうせきの『夢十夜』の『第一夜』を、

幽霊の話だから怖い、

としか読み取れていなかったことも、

急に思い出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る