最終話 真意

「あらあなたよく来れたわね? ここは普通の人には見つけられないはずなのだけど」


 ★もゼロ。一見してフォローもついていないそのエッセイは、普通の検索ならでるはずのない注目の作品に、普通にのっていたのはありえないことだった。あなたがクリックしたのは違和感からだった。


「私は夜久舞宵。職業は……今風にいったらウェブ小説家かしら」


 夜久がそう言って自己紹介する。歳はネットなのでわかりようがない。最終話と釣り合ってなくて、あなたは違和感が増してくる。


「ゆっくり読んで、フォローはする?」


 あなたは思わずしないと思ってしまう。


「そう、最終話だものね」


 夜久が訳知り顔で微笑む。


「なんたってあなたはそう、ノンフィクションをご所望みたいだから、今すぐカテゴリーエラーと思って閉じたくなるかもしれないものね」


 あなたは驚いた。ここが、エッセイ・ノンフィクションだということに、それに反応した夜久が言う。


「なんで知っているか? ですってなんででしょうね」


 文字に集中する。そういえば明るい他の作品を読むはずなのに暗い作品を読んでいた。


「いいわ、あなたのその願い叶えてあげる」


 夜久がクリックした最終話を指さした。あなたは最終話 真意のタイトルを見る。


「でももう引き返せないわ。1話目ならバーの描写でブラウザバックすれば、お日様の輝く日常に戻れるはずだった」


 あなたは動こうともしなかった。


「何どうしても最後まで読みたいんだって? あなたみたいな怖いもの知らず、私は好きよ。でもあなたはきっと後悔する」


 夜久はブラウザから一つのタイトルを指し示す。女性の名前でも不穏なタイトルだ。エピソードを夜久の手が指し示す。


「あなたには今日これを見せるわ。夜久舞宵。何かと戦う女『夜久舞宵シリーズ』」


 大事そうに夜久が自分を抱きしめる。


「見せる前にこの話との出会いを語るわね。あれはそう、KAC20231で『本屋』がお題だった時つくられたの。宿るところには宿るものよ。それがこんなかたちで完結するなんて。これが縁というものかしらね?」


 あなたはそんなことはいい。早く終わりが見たいと思う。それが伝わったのか夜久が言葉を告げる。


「さて、じゃあエピソードの真意を見せるわよ。覚悟はいい?」


 第1話 本屋では買えない本当に怖い本の話


 あなたは日本人を滅ぼそうとしている勢力を知ってしまった。


「よ。なに? 知ってるって? 陰謀論で出てきた? よくある陰謀論ですって?」


 不気味に夜久は口角を歪ませる。


「でもあなたはこの本は知らなかった? そうよね?」


 第2話 負の教育


 あなたは自分が書く小説の与える影響を知ってしまった。


「あなたの小説が今、敵対勢力にとって1番怖い本だってこと教えてあげるわ」


 一息入れて夜久が語る。


「あなたは知っているわ。読まれる為には万人向けに書かないといけないことを。それには平易な文を書かないといけないことを。高尚な文は誰にも読まれない、それでは意味がないと思っている。そしてあなたはメッセージを忍ばせることにするわ。それはキャラクターかしら? それともプロット? あらあら可笑しいテーマかモチーフかもしれないわね」


 第3話 道導


やることには目的がある。あなたはもう知っている。


「あなたはここであるものを投稿しようとしている。異世界ファンタジー、現代ファンタジー、SF、恋愛、ラブコメ、現代ドラマ、ホラー、ミステリー、エッセイ・ノンフィクション、歴史・時代・伝奇、創作論・評論、詩・童話・その他。その文章は直喩かも知れないし、隠喩かも知れない。直接読めるかも知れない。暗号になっているかも知れない」



――それがやつらの琴線に触れる。触れてしまう。



「そう、それでもあなたは書くのね?」


 あなたは私の小説を読んだのだから。



「そうでしょ?」

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