電波ヒロインには楽しいお誘いを①
短めの話が続きます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「えっと、このセリフを俺がミアの前で読み上げればいいのか?」
「そうだ。どうか、お願いできないか?」
俺は一週間後、ローレルの元に来て、頼み込んでいた。
「えっと、これを言ったら、本当にミアは喜ぶのか?」
ローレルは俺を疑いの目で見てくる。
「……あぁ。間違いない。彼女はきっと喜んでくれるさ」
俺は自信をもって、ローレルに告げる。
何故ならば、今日が逆ハールート、ローレルの攻略完了イベントの日だからである。
まぁ、ミアは最初の方で選択肢をミスったと落ち込んでいて、残りのイベントも十分にこなしていなかったが。
でも、攻略完了イベントが発生すれば喜ぶだろう。
……多分。
しかし、それだけ物語がズレたことによって、結末がどうなるかは全く予想がつかなくなった。
「……わかった。これ位ならやろう。彼女に何かお礼はしたいと思ってたから」
ローレルは疑いの目を俺に向けつつも、納得してくれた。
さて、どうなるか……。
その日の夕方。少しばかり訓練場で体を動かし、いい時間になったので帰ろうかと思っていたところだった。
ミアが入り口からぴょんぴょん飛び跳ねてやって来た。
〈ねぇ!聞いてよ、ターナー!〉
俺はあたりに誰もいないことを確認しつつ、口を開く。
〈どうした、ミア?〉
ミアは頬を上気させ、興奮を抑えられないといった感じで言う。
〈それがね、ローレルの攻略が終わったの!〉
〈そうか!それは良かったな!〉
〈ほんと!あの時は失敗したと思ってたんだけど、案外ガバ判定なのね!〉
〈ガバ判定?〉
〈少しぐらい間違っても大丈夫ってこと!〉
ミアはガッツポーズをとりつつ、にっこり笑う。
〈さぁ、次の攻略対象に行かなくっちゃ!〉
〈あぁ、そのことなんだけどさ……〉
〈……何?〉
ミアは首を傾げる。
俺はちょっと前から考えていたことを提案する。
〈ちょうど攻略と攻略の期間が少し空いてるからさ、明日とか、少し遊びに出ない?〉
——翌日。俺は学園前で、ミアと待ち合わせをしていた。
理由はいくつかあるが、一番ミアと遊びに行きたかった理由は、ミアのノートに書いてあったことに起因する。
——どうやら、王宮には、隠し部屋があるらしく、そこで手に入るあれそれが非常に便利そうだという事だ。
これが、物語本筋だと、王宮に出入りできるようになるのは、物語後半。
そこからでも、有用な道具なのだが、今入手しても問題はあるまい。
《えぇ……今、ターナーとの好感度そんなに高くないよね……?》
ミアも最初は渋っているというか、悩んでいるらしく、ぶつぶつつぶやいていたが、遊びに行く先が、王宮だと知った途端、
《え、じゃあ、アイテム取りに行けるじゃん!》
と了承してくれた。
そのアイテムたちは、俺にも使わせてもらおう。
ということで、ミアが到着し、色々と手続きを済ませた俺たちは、見事、王宮に足を踏み入れたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます