プチコフレ(6)

 白髪の魔女……。


 バークヤードの鏡の中に、白髪の老婆が居た。


 若い頃から苦労ばかり。

 私の髪の毛は、二十歳を過ぎたころから白髪が混じり始め、今は黒い髪の方が少なかった。

 琥珀色の瞳は、どこか古びた化石を思わせる。


 だけど、若草色の上品なリボンブラウスと、シトラスの葉のような深い緑の巻きスカートで支度をすると、私の瞳は質のいい、蜂蜜がかったレモンのようにいきいきと輝く。


「マダム リュミエラ、申し訳ありませんでした……」


 ルフレがすまなそうに俯いている。


「……あなたは、弟さんや妹さんがたくさんいるものね。慣れてくればお客様の気持ちがわかってくるから、これからも小さなお子様にどんどん話しかけてほしいわ」


 もう、ルフレは何がいけなかったのかわかっていると見て、私はそれだけ伝えた。


「さて、フロアに戻りましょう!ルフレ、溌剌はつらつとしたリボンブラウスと落ち着いたスカート、あなたに良く似合っているわよ!」


 マダム リュミエラ・コフレタビジューの正装は、ルフレの赤い瞳にも良く似合っていた。

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