プチコフレ(5)

「なんだよ白髪魔女ババア!出戻りのオールドミス!!!」

 失礼な。主人は働き盛りでなかなか帰って来ないけど、私は幸せなオールドマダムだ。

「魔女ババア!早く見せろよ!!見せろってんだよ!!!」

 ケビンは年相応の子どもらしく、癇癪かんしゃくをおこし始めた。

「だからダメだって言ってるでしょ!?」

 私は暴れるケビンを必死に押さえつけた。

 髪を留めていたピンが外れて、美しい白髪が混じりの前髪がバサバサバサと落ちてきた。

「ランタンが壊れるでしょ!?落ちつきなさい!!」

「うるさい!!早く出せったら!!!」

「どう言えばわかるの?あんただけに見せないわけじゃないから!」

「うるさい!」

「ケビン!」


「ババア!」

「ババア!!」

「魔女ババア!!!」


「帰れ!!!」


 私は叫んでやったのだ。


 遠ざかっていくレモン・シトラスのランタンの灯りを見つめながら私はため息をついた。

 闇の中に乱暴に揺れるイエロー。

 それは嵐の日の月みたいだった。

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