第24話 戻ってきて
紗良視点
なんか嘘をつかれている。隠し事がある。
実は前からそう思っていた。
古都はすごく優しい。だけど、たまに心がここにあらずな時がある。にわかに核心に近づいたのは、先日のこと。電話をするからといって古都が外に出たきりしばらく帰ってこなかったことがあった。
実家で揉め事があったと彼はいったけど、、彼は2時間近く外へ出ていて、電話をしただけだと言ったけれど、、石けんの匂いがした。。
イヤだけど、どうしたって確信めいたモノがある。なぜ石けんの匂いがするかって、疑わしいのは1つしかないでしょ?
私の要望はこうだ。彼と結婚したい。まだ年齢的に早いのかも知れないけれど、若いうちに結婚する人だっている。婚期ギリギリまで考えなくたって、彼がいい。だけど彼はまだそこまで考えていないだろう。だからせめて一緒に住みたいの。ずっと一緒に居たい。しっかり結ばれるようにそばにいて。
この疑惑はどうしたらいいの?黙っているべき?それとも証拠を・・・?ああ、こう思っている以上は確信に近い。
彼、浮気しているかも。
古都視点
状況を整理しないと・・・。これはまずい。慎也がとうとう佳奈に結婚を申し込むかも知れない。
いや・・・。なにがまずいんだ?まずいのは俺のしていることだろ?
結婚なんて、俺はまだ考えたこともない。だけど、佳奈が慎也とそうなれば、俺と佳奈の関係性は終わりだとそう言われている。誰かが結婚するときに、俺たちの関係は終わりだと。それが嫌なら俺と佳奈が結婚すればいい。そういう話だ。
いよいよ精算する時が近い。俺は自分が二人の女性を同時に好きでいることを許された気分になっていた。佳奈がそう理解を示してくれていたからだ。でもちがう。佳奈は猶予をくれただけだ。理解を示したわけではない。
いよいよ、自分の愚かさに嫌気がさした。こうなったら、俺がしっかり態度を決めないといけない。当たり前なんだけど、今気づいたんだから仕方ない。。
「なぁ、紗良。」
「なに?」
ある週末、俺は紗良の家に泊まりに来ていた。話がある。ちゃんと話す。
「話したいことがある。」
紗良はなぜか少し、ハッとした顔をして聞きたくなさそうな、嫌なモノを見るかのような目でこちらを見た。
「あはは。なんか、、嫌だな。聞きたくないなぁ。」
紗良がそんなことを言うので俺は何が何だかわからなかった。まだなにも話していないのに。しかし続けて、「俺は紗良と一緒に住みたい」と、そう言おうとしたんだ。
「ね、浮気してる?」
「え?」
驚いた。俺は紗良を選ぼうと決めた途端、紗良に浮気していることがバレたんだと・・・。
「隠さなくていいよ?なんとなくそう思ってたし。」
「いや、違う。そんなことは、」
「別れ話?」
紗良の目はすでに真っ赤で、今にも涙腺が崩壊しかけていた。
ああ、俺はやっぱり間違えていた。もう、これ以上は隠し事もしてはいけないし、傷つけられない。
「浮気なんてしてない。別れ話もしない。」
「俺は、紗良と結婚を前提に一緒に住みたいと言いたかったんだ。」
自分で自分の退路を封じた。
次は、佳奈に話さないと。
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