第25話 戻ってきて2

 なぜかホッとした顔をして泣き出した紗良を俺は抱きしめて癒やした。


「なんでそんなに泣くんだ?」


「別れ話かと思ったから・・・。」


「それで、、一緒に住んでくれる?」


「うん、、もちろんだよ。」


「ごめん。。何か不安にさせてたんだな。でも大丈夫。ちゃんと紗良だけと一緒に居るから。」


「うん。ありがと。ずっと大好きだからね。」


「俺もだ。紗良のことを好きだよ。」


 どうも俺はハッピーエンドを先に作りたがるようだ。詐欺師も甚だしいけど、一寸も疑われないように嘘をつき通した。だけど、退路を自分で封じたからには、次は佳奈にちゃんと別れを告げるしかない。



 後日、俺は佳奈に電話をして話を切り出した。


「佳奈、ごめん。俺は紗良を選ぶよ。佳奈は慎也と結婚して俺なんかと違ってちゃんと愛してくれる人といるべきだ。」


 え? なんで?


 いつそうなったの?


 目の前が真っ暗になったような気持ちで言葉が出ない。

 佳奈は紗良と古都の付き合いを破綻させる寸断だったのに。

 理解が追いつかないと、ぷつっと糸が切れたようになった。


佳奈「ね、ねぇ、なんで? どうしてそうなるの?」


古都「だって、お前は慎也に結婚を申し込まれるんだろう?俺はそれで良く考えた。お互い、今いる人と一緒になるべきだって。」


佳奈「いやよ・・・、違うそんなはずじゃ・・・。ねぇ、やめて、。そんなこと言わないで!」


「私を選んでよ・・・。ずっと待っていたのに。。。結婚なんてしたくない。古都じゃなきゃ・・・」


古都「・・・ごめん。でももう決めたから。」


(俺は佳奈のことも本当に好きだったし、今でも好きだ。ただ、けじめをつけるために決めたんだ。)


 そう言おうかと思ったけど、、それではダメなんだと言われた。喜美ちゃんに。優しさや誠実さ、正直さなどが返って毒になることがあると。まさにそうなのかも知れない。


「ごめんな、振り回してしまった。」


佳奈「うそっ、うそぉ・・・。嫌だってばっ!古都ぉっ!」


古都「ごめん。じゃ、切るから。」


(これからも友達でいて欲しい。縁を切らないで欲しい。たまには会いたい。)


 それらの言葉も浮かんだが全て口には出さなかった。

 これでいいでしょ?今一緒に居る人を裏切れない。


 佳奈は慎也と。俺は紗良と。もうできあがっているんだ。


 それからしばらく佳奈からの着信が続いたけれど、俺は一度も出ることなく。数日して佳奈からの連絡は来なくなった。誰も知らない、二人だけが知る関係を終わりにしたんだ。








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