第二十二話  いざ食品展示会へ出陣! 今回は三人編成だっ

「さあ着いたぞ」

「でかい」

「テレビで見たことある」

 なんとやってきたのは、テレビでも見たことがあるでっかい白い会場!

 スポーツする施設のイメージだけど、でっかい屋内型イベントも行なえるらしい。

 深い紺色のスーツ装備の父さんによる運転で、僕たち三人は、食品展示会会場へやってきた。

 青い服の警備員さんもいっぱい。車もいっぱい。

 父さんが事前に僕たちの手続きをしてくれて、正式に許可が下りたので、僕と結依ちゃんは、青いひものネックストラップで、入場許可証をぶら下げている。

 顔写真もいるらしかったけど、学生手帳のコピーでいいよということで、学生手帳の顔写真と同じ、一年生のときの僕のお顔が、この入場許可証にも写っている。

 ちなみに僕と結依ちゃんは、それぞれ夏服である、長そでカッターシャツ制服装備で挑むことになった。カバンもいつも学校へ行くときに使ってる学校指定紺色セカバン。校章も校名もばっちり白い文字で書かれている。

 父さんによると、派手じゃない服ならなんでもいいと思うけど、制服が無難かなぁ? ということで、これになった。

 でも結依ちゃんはそれに加えて、深いオレンジ色の髪留め装備な上に、髪がひとつにくくられている。これが結依ちゃん本気装備ということなのだろうか。

 父さんが運転席、その後ろに僕、左隣に結依ちゃんが座ってる。この車は最大五人まで乗れる。僕の家族は四人だから、五人で乗る機会はめったにないけど。四角めな青い車。

 古い車らしく、確かに同じ車が走っているのは、見たことないかも。

 僕は家の車と言ったら、ずっとこれしか乗ったことがないから、見た目もエンジンの音も僕の家の車だって、一発でわかって便利だなぁとは思う。

 結依ちゃんでさえ、僕の父さんの車を見かけたと、報告してくれたことがあったくらいだ。


 係の人の誘導もあり、駐車場に車が止まった。

「行こうか。お父さんについてくるんだよ」

「はい」

 僕と結依ちゃんが、はいをハモらせハーモニーした。僕が思わず結依ちゃんを見ると、結依ちゃんにこっとした。いいね。

 それではシートベルト、解除っ。


 会場にたどり着くまでも、スーツを来た人がとにかくいっぱい。

 早速父さんに知ってる人とも出会ったようで、僕たちもぺこっとお辞儀した。ああまたお辞儀しなきゃ。


 ひんやりする施設の中をしばらく歩くと、

「ここが会場だ」

「でかい」

 天井までの高さ。横幅奥行き。とにかくスケールがでけぇ。人もテーブルも、たぶん会社の看板もいっぱいだ。


 会場入口の手前で、長い事務用な灰色机がいくつも使われている、受付で手続きを済ませた。受付の人でさえも、何人もいる。名簿を見てチェックしているみたい。

 そして僕たちは、いよいよ食品展示会会場へ入場した。

「それじゃあ早速で悪いが、お父さんはまず先にお話ししなきゃいけない相手がいるから、しばらく会場を見回っててくれないか?」

「わかった」

 前来たときは、単独行動ってなかったなぁ。

「おもしろい物を見つけたら、後でお父さんにも教えてくれよ」

「わ、わかった」

 おもしろいもの~って、またざっくりなぁって思ったけど、

「結依ちゃん。雪忠から離れないようにね。しばらくしたら~、そうだなぁ……」

 父さんが軽く会場を見回して、

「あの大きな時計の下で集まろう。いつ戻れるかわからないから、時々確認するくらいでいいよ」

「わかりました」

 という御命令が下った。会社さんたちの紹介の場の横の壁に、白くて丸い、大きな時計が掛けられてある。

「それじゃあ雪忠も、結依ちゃんと離れないようにね。ああどうもおはようございます!」

 父さんがまた知り合いの人? かを見つけて、僕たちのところから離れていった。

 とりあえず~……結依ちゃん見よう。セカバン装備夏服結依ちゃんがいる。

「人いっぱいだね」

 とりあえず~無難なセリフを。

「うん」

 ですよねー。

「……じゃ、じゃあ、ちょっと回ってみる?」

「うん」

 人が多くてちょっと緊張しているのかな? まぁ僕も少しは緊張してるけど。


 会場内は、スーツを着た大人な人たちが、いーっぱいいるけど……僕たちみたいな子供は、全然見かけない。

 父さんは僕と結依ちゃんを誘ったけど、子供を誘う人って、そんなに少ない会なの? ここ……。

「あらっ、かわいらしいお客さんね!」

 ……あ、僕たちのこと? 声がした方へ振り返ると、僕たちのことをにこやかな笑顔で見ている人がいる。

 白いテーブルクロスが敷かれた机の内側にいる人なので、展示する側の人、っていうことになるんだと思う。

 この会社さんの係の人は二人いるようで、声をかけてきた女の人と、こっちから見て左横に男の人が立っている。けど男の人は、別の大人さんを対応中。やはりみんなスーツ姿。

 あ、ここはドーナツに関係する会社さん? 砂糖かかった丸いドーナツの模型とかを置いてある。

「……こ、こんにちは?」

「こんにちは」

 僕が切り出すと、結依ちゃんも続けてこんにちはした。

「こんにちは! ああ、初々しいわねぇ……中学生さんかしら?」

「はい、三年生です」

 制服もセカバンも、三年生だから使い込んでます~……よ?

「よかったらこれ、食べていって! 中学生さんの感想を聴きたいわ!」

 と、女の人が、小型で四角い銀色の入れ物に、爪楊枝が刺されしやっぱり茶色なドーナツと思われる物を、トトンとふたつ置いた。

「……食べていいの、ですか?」

 なんだか恐る恐る聞く結依ちゃん。

「もちろん! 感想聴かせてねっ」

 にっこにこだなぁ、この女の人。

 あ、僕を見てくる結依ちゃん。ここは僕が率先して戦わねばっ。

「い、いただきまーすっ」

 僕は銀色の入れ物ごとドーナツを受け取ると、やっぱり結依ちゃんも僕に続いてくれた。

 もぐもぐ。食べてみると……

(ぼ、僕はグルメなコメントとかできないと思うけどっ)

「香ばしくておいしいです」

「ほんと!? よかったぁ~。その香り出すのに苦労してるんだぁ~」

 ……一瞬淋子が浮かんだのは、なんだ?

「さくさくでおいしいです」

「よかったわぁ~。チョコ味もあるのよっ。食べてみて!」

 続けて出てきたのは、さっきのより濃い茶色のドーナツ。

「いただきまーすっ」

 もぐもぐ。こちらも食べてみた。

「濃くておいしいです」

「さくさくでおいしいです」

「よかったわぁっ。今日はどうしてここへ来たの? だれかの子供さんなのかな?」

「えっと、僕の父さんから誘われて、で、僕の友達も誘われて……」

 と言いながら、僕は入場許可証を見せてみた。

「へぇ~……芝川しばかわさん、道森さんってご存知ですか?」

 あ、いつの間にか大人さんへの対応を終えていた男の人に、女の人が聞いている。

「道森さん? あぁ~、ひょっとして珍しい車乗ってない?」

「え、あ、たぶん? 青くて四角いの」

「やっぱりあの道森さんかぁ! 一度だけ会ったことがあるけど、車の話で盛り上がったから、よく覚えているよ!」

「今日も青い車に乗せてくれました」

 結依ちゃんもよく知る青い車。

「おぉ~まだ乗ってるのかぁ! いやぁ~いいお父さんだよ道森さんは! 車のエンジンは心のエンジン、ってね!」

 車ってすごいなっ。

(こうして、父さんはいろんな人と、知り合いになってるんだなぁ)

「じゃあ、父さんに後でここに来てあげてって、言っておきます」

「よろしく頼むよ!」

 父さん顔広いなぁ。

「あ、これお土産! さっきのドーナツ入ってるから、持っていって!」

 と、女の人から、会社の名前などが書かれた白いシールが貼られた、銀色の袋をもらった。レトルトのカレーの袋みたいな超銀色。

「もらって、いいのですか?」

 ここは結依ちゃんが聞いた。すでにこの食品展示会の説明は父さんからもあったけど、やっぱり心配になって聞いたみたいだ。

「どうぞどうぞ! お試しのだから、遠慮なく持っていって!」

 ということで、僕は食べ終わった銀色入れ物を、机の上に置いて、

「い、いただきます」

 銀色お土産を両手で受け取った。

「ありがとう、ございます」

 結依ちゃんも、ゆっくり両手で受け取った。

「また来てくれたら、ドーナツ食べさせてあげるからね~!」

「あ、ありがとうございます」

 女の人がばいばいしてくれたときには、男の人がまた別の大人な人とおしゃべりしていた。次から次へと、いろんな人がやってくるんだなぁ。


 僕たちは、もらったお土産をセカバンの中へ入れた。

「こんな感じ……かな?」

「本当に、食べてお土産もらっちゃった」

 いろんな知らない大人な人がいっぱいいる中、よくよく知っている結依ちゃんがここにいる安心感たるやっ。

「結依ちゃん気になるところあったら、寄っていいからね」

「いっぱいあって、よくわからない」

「ごもっとも」

 右見ても左見ても、人会社人会社人……確かに目が回っちゃいそう。

「と、とりあえず回ろう」

「うん」

 いっぱいの人たちが行き交う中、僕たちは再び、会場内を歩き始めた。


「んまい」

「あまい」


「こんなにもらっていいんですか?!」

ゆうちゃんも喜ぶと思います。あ、弟です」


「独特な味がします」

「初めて食べました」


「父さんは、すぐに僕たちを誘ったみたいです」

「初めてこういうところに来ました」


「まだいないね」

「うん」


「冬のスイーツって……まだ夏っスよ!?」

「おいしい」


「結依ちゃんは、ラーメンならどれ派? 僕はしょうゆかなぁ」

「……しお?」


 僕たちはいろいろな会社さんを回り(というかほとんどのケースは呼び止められて、って感じだったけど)、セカバンに今まで入れたことがないと思うほどの量の、お土産がどっさり。

 父さん母さんとも分け合って食べてって、よく言われた。母さんが言ってた紹介の場所でもあるって、こういうことなのかな?

「雪忠くん」

「ん? おいしそうなのでも見つけた?」

「そうじゃなくて」

 結依ちゃんは、どうやら僕に見てもらいたい方角? があるようで、目線の先を僕も見てみると、

「えっ、僕たちみたいな子供って、他にもいたんだ!」

 なんと! 深緑色のズボン装備の男子&灰色中心のチェック柄スカート装備の女子を発見!

 二人とも、僕たちと同じように、上は長そでカッターシャツっぽくて、下は学校での制服なのだろうと思う。

 ということから、きっとブレザー装備の学校なのだろうと予想。

「中学生なのかな?」

「見た感じは、歳近そうだけど……」

 さすがに小学生ではないと思うし、けどもしかしたら高校生かもしれないし。

 色や柄が違うっていうことは、別々の学校だと思うけど、じゃあなんで一緒にいるんだろう? ってちょこっと思ったけど、

「僕たちみたいに、どっちかの親についてきて、そのお友達パターン?」

「どうなのかなあ」

 横目でちらっと結依ちゃん見る。横顔いいね。

(近いね!)

 そりゃ父さんから離れないようにって言われてるけど、にしても改めて見ると近いね!

(はっ!)

 こんなにじろじろ見ていたら(結依ちゃんのことじゃなくて、正体不明の二人のことだよ! ……結依ちゃんのことずっと見ていられるけど!!)、ばちぃっと目が合ってしまった!

「雪忠くんっ」

「お、おぅ」

 今のなんか六場っぽくなってしまった。

(うおっと! 接近してくるぞ!)

 AN ENCOUNTER遭遇した

 ふかみどりいろのズボンをはくもの 1

 はいいろのスカートをはくもの 1

 どうする雪忠!?

「こ、ここは友好的に接しよう。き、きっと大丈夫さっ」

 結依ちゃんは、小さくうなずいた。って、女子の方が汐織式あいさつ的に、右手を広げて見せる先制攻撃を仕掛けてきた!

「こ、これより臨戦態勢に入るっ」

「はい」

 どんなに短い言葉でも、結依ちゃんの声だと、すっと頭に入ってくるんだよなぁ。って前向かないと。

 僕も、ちょこっと右手を見せた。至近距離にまで接近!

「あたしたちみたいな子供が他にもいたんだ。こんにちは!」

 どうする雪忠!?

「こ、こんにちはっ」

 無難すぎる応戦をした!

「こんにちは」

 結依ちゃんは、声の感じだけだといつものこんにちはに聞こえる!

「こんちゃ! 何年生?」

 おぉーっと男子から早速情報収集攻撃を仕掛けられた!

「えとっ、三年生っ。あ、結依ちゃんも。あ、僕たち二人とも」

「三年生って、中学三年生ってこと?」

「はい」

 女子は身長が僕たちよりも高く、髪がポニーテール。男子はさらにもう少し高く、髪はかなり短い。運動部なのかな?

「あたしよりもひとつ上の先輩じゃん! よろしく、あたし栗生くりゅう芽依菜めいな! 中学二年生だよっ」

 と言って、僕たちと同じ~……かと思いきや、赤いひものネックストラップに入れられし、入場許可証を見せてくれた。なるほど、これなら名前の漢字も一発でわかる。

「オレは彦田ひこだ龍汰りゅうただ。芽依菜と同じ中学二年生。よろしゅうな!」

 なるほどなるほど。ふ、二人とも後輩さんなんだね。こっちは緑のひも?

「僕は道森雪忠。と、早苗結依ちゃん」

「よろしくお願いします」

 僕たちも入場許可証を見せた。

「さなえゆい?! めっちゃかわいい名前じゃん! どっちも下の名前みたいで!」

「よ、よく言われます」

(そうだよねめっちゃかわいい名前だよね!)

 きっと結依ちゃんは、どっちも下の名前っていう点だけのことを、言ってそうだけど。

「っていうか同じ漢字だぁ~!」

「少しびっくりしました」

 声のトーンはいつもとほとんど変わらないみたいだけど、びっくりしたと言っているのだから、結依ちゃんきっとびっくりしたのさっ。

「早苗~って呼ばれても、はたから聞いてたら、名字ってわかんないやろうなぁ」

「先生みんなから、さなえって言われています」

「うわそれかわいっ!」

(そうかわかってくれるか結依ちゃんのかわいさを!)

 ええやつやん。とか心の中でうなずいていたら、僕を見てくる結依ちゃん。

「ほ、褒めてくれたんだよ? もっと自信を持ってっ」

 なんで自信なんて単語を言っちゃったのか、言ってしまってからなんでだろうと思ったけど、言っちゃったから、手をぐーにして見せてっと。

「……雪忠くんが、そう言うのなら……うん……」

「かわいすぎかっ!」

 気が合うじゃないか。

「芽依菜とはえらい差やねぇ」

「ほう? あたしの学生手帳に、例の写真が入っていることを、この先輩たちに見せて、思い出させてあげようか?」

「やめてくれぇー! それだけはあああ」

(ど、どんな凶悪な写真なんだ?)

 栗生さんがスカートのポケットに手を伸ばしていたが、彦田さんは頭を抱えてカタカタしている。

 ん? ここでまた僕を見てきた結依ちゃん。これは~……なんだろう?

「あぁいったん時計のとこ戻ってみる? ってこと?」

「うん」

「時計のとこ? あそこでなにかあるの?」

「ああ父さんとそこで待ち合わせしてて。父さんが用事をいつ終えられるかわからないから、時々見に行くことになってて。さっき見たときは、まだいなかったけど」

「そういうことかぁ」

 なんか。すっかりいろいろおしゃべりしちゃったぞ。

「オレたちもそろそろ戻っか? 時間やろ?」

「そだねぇ」

 ……結依ちゃんは、ポニーテールにしないのかな?

「じゃ、あたしらは戻るよ! またどこかで会ったらよろしく!」

「ほななぁ」

「あ、ああ。じゃあっ」

「ありがとうございました」

「さなえゆいちゃん、覚えたからねっ!」

 手を振りながら去っていく女子栗生芽依菜と、手を上げて去っていく男子彦田龍汰の二名だった。

 僕も手を少し上げておいた。結依ちゃんもちょっとだけ手を上げた。

「ふぅっ」

 思わず一息。

「雪忠くん、知らない人とおしゃべりするのも、平気?」

「そりゃ緊張はするけど、あれくらいなら大丈夫だよ」

「すごいなあ」

 結依ちゃんからのすごいいただきました。やったぜ。

「じゃ、じゃあ行こう」

「うん」

 僕は別の意味で、結依ちゃんとおしゃべりするとき、緊張しているけどね!


 時計が見えるところまで戻ってみたら、父さんがいたので、僕たちは向かった。

「おお二人とも。どうだった?」

「ああまあ~……いろいろあったよ?」

 今度は僕から結依ちゃんを見た。

「お土産いっぱいいただきました」

「そうかそうか。見た感じ、学生は全然いないねぇ」

 いきなりその話題だった。

「……ねぇ結依ちゃん?」

 結依ちゃんのまばたきも、どれほど見てきたことかっ。

「二人、中学二年生の人に声をかけられて、少しおしゃべりしました」

「そうか、いたのか!」

「でも女子は赤いひもで、男子は緑のひもだったんだ。僕たちは青なのに」

 僕と結依ちゃん、それから父さんも青である。太陽に当てると色変わるとかないよね?

「ああそれは、どういう関係者なのかで分かれているんだ。青は商品を買いたい関係者。赤は商品を売りたい関係者。緑は運営スタッフ関係者だ。たぶん、それらの関係者として参加している人の、子供だったんじゃないかな」

「そんな違いがあったのかっ」

 でも言われてみれば、確かにそうだ。受付の人は緑のひもだったし、ドーナツくれた人とかは赤のひもだった。

「ドーナツくれた人が、青い車の人って、知っていました」

「ドーナツ? だれだろう」

「えっとー。しば~……なんだっけ?」

「芝川さん?」

 父さん思い出そうとしているようだ。

「ああ~思い出した思い出した! そうかあの人も来ているのか。案内してくれるかい?」

「こっちです」

 なんかちょっと珍しい、結依ちゃんが僕たち二人の前に立つお姿。


 その後、父さんはドーナツの人たちとおしゃべり。またよろしく~となった。

 それからも少し一緒に見回ったけど、そろそろ帰ろうとなった。

 車に乗って、高速道路も走って来たから、もっとがっつり一日かけて会場にいるのかなとも思ったけど、思ったよりは長くなかった。

 なんだかいろんな出会いがあった、一日だったような気がする。


 そんな一日の帰り道。

 高速道路にあるサービスエリアに寄った僕たち。

 記念スタンプ用紙へ、一緒にぺたぺたご当地スタンプを押した。

 何の記念なのかわかるように、結依ちゃんと一緒に食品展示会記念、と書いた。展の字をちょっと失敗しそうになった。

 結依ちゃんは自分の分に、雪忠くんと一緒記念、と書いていた。ちょっと省略されている。やや小さめだけどきれいな字。

「ぅえ?」

 それでおしまいかと思ったら、結依ちゃんちょっと笑顔になりながら、僕の方のスタンプを持っていって、結依ちゃんが押してメモした方を、僕に差し出してきた。

「かえっ、こ?」

「うん」

 やっぱりその笑顔でのうんが、いいよね。さっきのとこじゃ、緊張していたんだなぁ。

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