第十六話  漢たちの渡り廊下

 あれ、六場だ。こんなところでなにしてるんだろう。

 渡り廊下の柱にもたれて座っている六場。

「やあ。こんなところでどうしたのさ?」

 声をかけて、僕も座ることにした。うわ~大きなため息。

「女子誘うの、どうすればいいんだ?」

「さ、誘う? 休みの日に遊ぶとかってこと?」

「ああ」

 つまり~……若稲誘おうとしてる、ってこと?

「女子からのパターンだけど、京香ちゃんは僕を遊びに誘うとき、あんな感じだったから……あれでいいんじゃない?」

「あれは女子からだろう……」

 あーうん、だよね。

「じゃあ六場が僕を遊びに誘うとき、どう誘う?」

「今度の日曜日、遊ぶか」

「を、若稲に言えばいいんじゃ?」

「若稲は女子だろう……」

 あーうん、だよねぇ。

「道森は女子と遊ぶとき、どう言う?」

「僕は……」

(今度の日曜日、お出かけしよっか結依ちゃん!)

 ……なんか違う気がする。

「……今度の日曜日、遊ぶ? とか」

「変わらないじゃないか……」

「ぼ、僕も緊張しないわけでもないけど、僕の場合は、すでに仲がいい女子から誘われているから、僕からも誘えるっていうか、そんなのだからなぁ……」

 そしてできればこれからも仲良くしてください結依ちゃん。

「なら、最初は女子とどうやって仲良くなった」

「最初、かぁ……」

 結依ちゃんと今仲良くできているけど、最初は幼稚園だったなぁ。

「……お遊戯ゆうぎ室で、跳び箱とかの順番待ちをしているときに、しゃべったとか……そんな感じ? 今で言うなら、授業で班になったときにしゃべる、とか?」

「ふむ……」

 僕も若稲とは、主にそういう場面でしゃべってるかな。

「若稲はかっこいいから、誘っても遊んでくれると思う……よ? たぶん」

 若稲と遊ぶって、どんな感じなんだろう。結依ちゃんみたいに、少女マンガ読むとか?

「いきなり誘うの、変じゃないか?」

「いきなりって、僕たちもう若稲と一緒に過ごして三年目だよ」

 若稲とは、小学校は別だった。それでも僕たちは今、中学三年生だからね。

「でも、若稲誘ったことない」

「最初はみんなそうだって」

 僕だって、結依ちゃんと遊んだことがなかった時代が、ありましたのさ。

「大丈夫だろうか」

「大丈夫大丈夫」

 結構緊張しぃなんだなぁ、六場。僕も自分のことを結構緊張しぃだと思っていたけど。

「……やるだけ、やってみる」

「そうだその意気だっ」


 という話がついたところで、僕たちは掃除の時間に向けて、人通りの多い廊下へ戻っ

「うぉ」

「あ」

 てきたところで、廊下を歩く若稲とエンカウント。しかも目が合っちゃった。

「く、来るぞ」

「僕たちはクラスメイトだからね」

 そして若稲が、僕たちの前まで来た。

「や、やあ若稲~」

 とりあえず僕がごあいさつ。

「ん」

 一文字のお返事をいただきました。

 僕はちらっと六場を見てみると、あぁだめだ、六場緊張ってるのが見え見え。

 若稲が六場に鋭き視線。

「うぉ」

 六場なにもしてないのにおどおど!

「掃除場所に行くか?」

「あ~っそうか今の席は若稲と同じ班だったなああははあは~」

 それで僕を見つけて接近してきたのかな?

「どうした」

「うぉ」

 とうとう若稲のどうしたが、六場に向けられたぁ~! 六場ピィ~ンチッ!

 っていうか、六場よりも大きいんだね、若稲。

「力になってやろうか」

「うぉぉ」

 六場うぉしか言ってなーい!

「なにかあったのか?」

 あ、僕に向けられた。

「ま、まぁ、あったと言えばそうなんだけど~」

(ええい! こうなったら奥の手だ!)

 秘奥義! 僕が代わりに言う作戦!

「六場、若稲と遊びたいってさー!」

「道森いー!」

 ごめんよ六場、勝手に。でも僕ができることって、このくらいじゃないかなっ。

「私とか」

「うぉぅ」

 なんだか六場が小さく見える。がたいいいはずなのに。

「いつ遊ぶ」

「ぅぉ……?」

 お? これって……。

「いつなのだ」

「ぉ、ぉーっと……」

「日曜日! どう六場!?」

「ぉ、ぉぅ」

「何時だ」

「朝十時! えーっと校門前で集合! 裏門じゃなくて正門! でどう六場!?」

「ぉ……ぉぅ」

「わかった。二人とも来るのか?」

「うぇ?! あー僕その日用事あるんだ! また別の日に遊ぼう」

「わかった。掃除場所に行こう」

「そ、そうだね! じゃ六場!」

「ぉ」

 こうして、強行作戦だったけど、六場と若稲が次の日曜日に、遊ぶことが決まったようだ! ジャキーン!


「道森は、いつ私と遊ぶ」

 掃除場所へ向かっている途中、延長戦?!

「うぇっと、あー、じゃあまた空いてる日わかったら言うから。若稲は、僕となにかしたいことはある?」

「なんでもいい」

 さすが若稲。どんな勝負でも受けて立つというわけだなっ。

「じゃあ……」

 ……なにしよ。若稲結構謎に包まれてるしなぁ。

「……デパートのフードコートのところの改装が終わったらしいから、そこ行って……なにか食べる、とか?」

「わかった」

(めっちゃ京香ちゃんの案をパクらせていただきました)

 どんな食べ物がお気に入りなのかとかも、まったくわかんないや。どんな日になるんだろう。

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