第九話  またこうして一緒にお勉強

 僕の家でのダイニングテーブルで、最も一緒にごはんを食べた同級生は、まず間違いなく結依ちゃん。

 ではそのダイニングテーブルで、最も一緒に宿題をした同級生はだれでしょう?

 正解は? もちろん結依ちゃんなのでした。

 そんな結依ちゃんから、中間テスト考査前に出された国語の漢字プリント宿題を、一緒にしようとのお誘い。

 よくあることなので、どうぞどうぞと我が家で宿題バトルが、繰り広げられることとなった。

 今日は白い服の上にクリーム色のベスト装備、薄ピンク色のスカート。

 ちなみに僕は、厚手の紺色長そでシャツに黒の綿パン。

「中学三年生って、こんな難しい字も習ってたかしら? 覚えてないわぁ」

「昔と今で、覚える漢字が一緒かは、わからないけどね」

「それもそうよねぇ~。お母さんも歳老いちゃったわ、あはっ」

 うちの母さん、元気です。

「それじゃあマシュマロとホットココアなくなったら、雪忠におねだりしてね、結依ちゃんっ」

「ありがとうございます」

 やや大きめの木の器に、いろんな味のクリームやぐにゅぐにゅしたのが挟まってる、様々な小袋入り一口マシュマロがてんこ盛り。横に開けた袋入れておく用の別の木の器もあり。

 それと、結依ちゃんにイルカさんマグカップ・僕にはシャチさんマグカップに注がれしココアも用意してくれた。どっちも結依ちゃんのお気に入り宿題のお供。

 その母さんはリビングリビングルームを出ていった。

 ああ、静か。

(僕の心の中はどっきんどっきんですけれども!)

 そりゃこんな静かな空間に結依ちゃんと二人だけだよ? どきどきしないわけないじゃん……。

 結依ちゃんは、ほんとにこの環境が勉強に集中できるんだろうか? 僕なんてどっきどきして、とても集中できてるようには思えないんだけど。

(でも結依ちゃんのこと考えてたら終わってた、っていう超速での出来上がりが、大きなメリットだけどね!)


(ほんとに好きなんだなぁ、それ)

 マシュマロもっきゅもっきゅする結依ちゃん。ほんとこの世界って平和だなぁ。


 ん~。伸びっ。

 結依ちゃん結構進んでるなぁ。追いつけるかぁ……?


 ココアは僕も好きな方で、飲むか聞かれたらお願いしている。

 結依ちゃんと明確にわかっている、共通の好みっていうのかな。


 あ、消しゴムやってるときに、プリント折り目付いちゃった。


 あ、結依ちゃんココア飲んでる。僕も飲もう。

 サイズ的には同じマグカップだけど、やっぱ結依ちゃんの手ちっちゃくて細いな。


「あ、あのさ結依ちゃん。僕と一緒に宿題するの、そんなにはかどる?」

「うん」

「よ、よかったよ」


 ココア飲あ、なくなった。結依ちゃんのは? まだある。くっ、計画性は大事だ。


(ここにいる結依ちゃんが、かぁ……)

 ……僕が、こくぅはくっていうのを結依ちゃんにしたら……結依ちゃん、受けてくれるんだろうか。

 やっぱり今のままの、この平和な関係がいいのだろうか。

 お、おつぃきあぃって、したことないから、それが平和から遠いのかどうかも、詳しくはないけど。

 やっぱ断られるのがきついよなぁ……。

(でもなぁ…………)


「おしまい」

「な!?」

 さすがは早苗結依……やるなっ。

 宿題をすぐさま片付けにかかる結依ちゃん。普段はのんびりしてそうだけど、手際はなにかといい結依ちゃん。だからお花さんもお元気なのでしょうね。


(結依ちゃんに見られてるぅ……)

 あぁまた消しゴムでプリントやっちゃった。


「終わったあぁー……」

 僕は最後の漢字を書き終わった瞬間、だぁーっと机の上に腕を伸ばして顔を伏せた。

 夏休みの宿題とかでも慣れているとはいえ、ぶっ通しはさすがにキツいっスよ結依様ぁ……。

「一緒にしてくれて、ありがとう」

(………………この瞬間があるから!!)

「次もぜひ誘って!」

 僕はすぐに握りこぶしを作って見せた。

「うん」

 そして、結依ちゃんのすてきな笑顔がありました。

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