第二転生

目が覚めた。

「病院??」

周りを見ると、ナースらしき人が驚いた顔をして「起きた!」みたいなことを言っている。


ああ、そうか。


俺は勇者に殺された。不意を突かれてうっかりってやつだ。本当に運が悪い。

もっと運が悪いことといえば、どうやら現世に戻ってきちゃったってことだな。


医師が病室に入ってきて、いろんなことを聞いてくる。

記憶はある?とかそんなところだろう。

でもいじめについて特に話すことはしなかった。


だって、不幸中の幸い。いや不幸中の幸どころではない。


俺には、スライムの能力が残っている…!1


つい不敵な笑みがこぼれてしまう。


能力を手にしてしまったことで生まれる狂気、『あいつら』いや、この世界の腐った人間どもを蹴散らせるという歓喜を強く感じる。


息が上がってきてしまった。今まで腐った上下関係の底辺で押しつぶされていた俺が、時を経て上下関係の外、いわば別次元の人間として転生したのだ!


ピーーピーーピーー


あら?

どうやら心拍数が上がって機械が反応してしまったようだ。


「おい、君大丈夫かい!!」


勢い良く医者が入ってきたが、どうってことはない。

もちろん今まで心臓なしで生きてきたわけだから、今ここで心臓を取ってもおそらく生きていけるだろう。血はカモフラのようなものなのだろうか。まあいずれ使えるかもしれないし、あくまで人間として生きていく訳だから心臓と血はないとダメだよな。


心拍数を下げて機械を鳴り止ませると医者は落ち着いた様子だった。


「君は全治二ヶ月の怪我をしているんだ。安静にね。」


「いやいや」


待ってられるわけないだろ!?


「今日『退院』でしょ!お医者さんしっかりーー!」


俺はしれっと呪文を使って、自身の完全回復をさせる。

もちろんそれだけだと怪訝に思われるため、相手を混乱させる呪文でお医者さんの記憶を少し操作させてもらった。


「おう、そうか!いやあ、今日までよく頑張ったな!」


効く効く!楽勝で効いた!この技は、『あっちの世界』では強い相手には効かないんだけど、人間には簡単に効くらしい。

もちろん呪文なんて何個でも知っている。この力を使えばこの世界ではいわば最強の生命体になれる。


『あいつら』に。いや、この世界への復讐、、。

楽しみで仕方ない!!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る