第2話 綺麗にならない街

『シルキー家政婦社』

『シューズ専門店 レプラコーン』

『ザントマンが作った眠り粉!!今なら半額で買える!』

『サキュバスの恋愛相談室がオープン!』


カナリーはポストの中に入っていたチラシを眺めながら、朝食のトーストをかじっていた。

「今日はどんな相談がくるのかな~」





「どんなに掃除しても綺麗にならない街?」

カナリーはリリィから手渡された資料を読む。


相談者は、シルキー族のエクリュさん。


シルキーというのは、家事などを手伝ってくれる妖精だ。常にシルクのドレスを着ているためシルキーと呼ばれるようになったとか。


相談内容は、街の環境を良くするため掃除をしているが、綺麗にならない。住民やその街を訪れる客がゴミに対していい加減すぎる……とのこと。


「えっと……ライラック街という街の掃除をしているんですね」

「カナリーちゃんは、ライラック街って知ってる?」

リリィにそう問われ、カナリーは記憶の引き出しを開ける。


「ライラック街……確か、屋台が沢山ある街ですよね。安いけど美味しい食事処が沢山あると有名な街」

「俺、何度かその街に、友人達と酒を飲みに行ったことがあります」

別件の資料を作成しているノワールがさらりとそう言った。

「ライラック街ね~屋台があっちにもこっちにもあってさぁ、飲み歩いたなぁ」

シエルは「また行きたいなぁ」と呟く。


「へぇ……私、一度も行ったことなくて……」

カナリーがそう言うと、ガシッと肩をリリィに捕まれる。

「じゃあ今から行こう」

「……え?」





「うぉお……これが、ライラック街」

カナリーの顔は何とも言えない表情をしていた。

今の時刻は正午よりちょっと前。

客と思われる人はそんなにはいない。

ひしめき合うように並ぶ沢山の屋台は、夜の営業に向けて今は準備中だ。

「今はこの程度の人だけど、夜はすごいんだよ。悪魔、天使、妖精、人間で溢れて……もみくちゃでどんちゃん騒ぎ」

カナリーの隣に立つリリィがそう言った。


ひしめき合う屋台。

そして、散乱したゴミが目立つ。

よく見れば吐瀉物もある。

眺めていたら、シルクの服を着た妖精……シルキー達が掃除しに来た。


「私も何度かこの街に来たことあるんだけどさ、たくさん屋台とか食堂とか食べる所があって、色んなお酒が飲めて楽しい所なんだよ……」

リリィの語りをカナリーは静かに聞いている。

「そんなわけで、羽目を外して飲みすぎたりする人もいるんだよね」

そう言った客が吐いたり、ゴミをその辺に捨てたりしている。

「なるほど……」



「カナリーちゃんは、どうやって解決に導く?」

リリィがカナリーのことを試す様に見ている。

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