4話 移動
島の大地を踏み歩き続けて数十分。
参加者たちの歩く速度は決して早いとは言えなかった。
なにせ俺も含めてほぼ全員が生気を感じられない歩き方をしているからだ。
進行速度がとても緩い。
だからといってその移動の遅さにドローン、つまりサイレダイスは一切注意してこなく、むしろしっかりと誘導してくれていた。
おかげで俺の、いやきっと他の参加者も特に疲労感を感じずに移動できているはずだ。
ドローンの後をついて歩きながら周囲の景色を眺めると、そこら中に住宅が建てられている。
ある程度、緑の自然が実っていてのどかな景色の中に違和感を感じるほどに目立った文明的な外観だ。
偏った価値観かもしれないけれど、こういった島に建てられる建造物と言ったら古民家のような自然の材料で作られた物が定番だ。
俺以外の参加者も周囲に建てられた住宅に何か疑問を抱いているだろうか。
また、疑問を抱くのは建造物の外観だけではない。
建てられた住宅の数も多いのも違和感を感じる。
“楽園”、いや
俺は島の様子から浮いている情景を眺めながら他の参加者に混ざってドローンについて行った。
数分後。
俺たちは島の土を踏み続けながら移動し終えると、眼前には大きな長方形型の建物が建てられていた。
参加者全員が入るには十分の広さがある。
きっとこれが体育館なのだろう。
先に到着していたサイレダイス社員が体育館の扉から姿を現し、スピーカーを片手に俺たち参加者に向けて喋りかけてきた。
「黙島にいらっしゃったみなさん、長い移動お疲れ様です。ここが体育館で、今後みなさんが集まる場所になります。島の中心に位置しているので、比較的簡単に来れるようになっています。それではみなさん、黙島で生活を送るための説明を行いたいので、中に入ってきてください。靴はそのままで大丈夫ですよ」
サイレダイス社員が一旦会話を終えると、踵を返して体育館の中に入っていく。
もちろん一人勝手に入っていくわけでなく、俺たち参加者を招き入れるように。
会話を聞き終えた参加者たちはサイレダイス社員に続いて館内に進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます