Bonus stage ゲームの差し入れはできますか?
後日、広報課の餅田は拘置所を訪れた。刑務官の同席のもと、那須と面会する。
「ご無沙汰してます」
「お久しぶりです、餅田さん。あのときあなたがビデオカメラを壊していれば、俺は捕まらずに済んだ」
那須はガラス越しに、餅田に恨み節を浴びせた。
「ごめんなさい~ 怒らないでくださいよ~」
餅田が愛嬌のある笑顔を浮かべたので、那須は憎むに憎めなかった。
「そうだ。刑務所ってゲームの差し入れはできますか?」
「120番! それは規定に反します」
同席していた刑務官がすぐに却下した。
少し雑談した後、広報課の餅田は拘置所を訪問した
亡くなった畠山の寝室の金庫がついに開いたのだ。アメリカから金庫のテクニカルサポートチームが派遣され、三日かけてようやく開いた。
驚くべきことに、中から出てきたのは紙幣数十万円と「ナスバタケチャンネル」の金の盾だった。餅田は一ファンとして、そのことを早く那須に伝えたかったのである。
那須は目を丸くした。
「嘘でしょ? てっきり捨てたのかと思ってた」
「畠山さん、きっと大切にしまっておいたんじゃないかなあ~ 5年間、那須さんと一緒に頑張って活動した証ですから。簡単には処分できないと思いますよ」
餅田は無邪気に微笑んだ。那須は鼻で笑う。
「ふっ。それはどうかな。畠山がそんなこと考えるはずはない」
那須がいうと、餅田は悲しそうな表情を浮かべた。
「前にあいつにいったんですよ。金の盾は貴重な物だから大事にした方がいいって。どうせ高値で売れると思って、金庫に入れておいたんでしょう?」
「いや、畠山さんはこの金の盾を宝物のように思っていたんじゃないでしょうか」
「どうかなあ」
「ぼくはそう信じたいな~」
餅田は粘り強く主張したが、那須は呆れている。
「あなたがそう思ってもねぇ」
「でも金庫の暗証番号は、ナスバタケチャンネルの結成記念日でしたよ」
那須は目を見張った。
「嘘だ。181203じゃ開かなかった」
「301203でした。2018年ではなく、平成30年」
那須は大きなため息をついた。
「そんな単純なことだったのか……」
「暗証番号が結成記念日だったってことは、やっぱり畠山さんはあなたとの思い出を大事にされていた。ファンの一人として、僕はそう信じたいです」
「まあ、個人がどう思おうと勝手だ。ご自由にどうぞ」
那須はニヤリと笑って続ける。
「あなたはいい人ですね。あの刑事とは大違いだ」
「橘さんですか?」
餅田は不思議そうにした。
「ええ。善人面しておいて、平気で人を陥れようとする。見かけによらず相当ブラックですよ」
「そうかなあ~」
那須の目は本気だった。
「あの人には気を付けたほうがいい」
「ユ〇チューバー殺人事件」(完)
尋問は犯罪者へのインタビュー ~橘刑事との対決~ いぬた @inuemon126
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