第34話柊にストーカー現れる

扉を開けた柊が、目にしたのは、処置を

受けて居る権田と医師と看護士の姿だった。

涙でボロボロの柊は


「賢介さん!」


と、言って抱きついた。


「あの~今、処置してますので」


と、直ぐに看護士に離された。


(生きてた、賢介さん!生きてた!)


今度は安心して、泣き出す柊。

少し遅れて、早川と真理亜が、やって来た。

もう処置室は、満員だった。


「権田さんは、人気が有るんですね」


そう医師に、権田が言われると、早川は


「そうっすよ!うちの署に、権田さんが

居なかったら、権田さんが居なかったら…」


今迄、我慢して居たのに、泣き出して

しまった。

真理亜は、ヨシヨシと早川の背中を

トントンしていた。

何とも微笑ましい、病院には迷惑な光景

だった。

処置が終わって外に出ると権田が


「俺を刺した奴は、悠里のストーカーだったよ!」


「え?」


「そうなんすか?」


「あ~顔を見たから、間違いない!これから

俺は状況説明と、あいつを取り調べるわ!」


「私も取り調べの様子を、見てもいいですか?」


「僕もっす!」


「私は、一般人だから無理ですね、私

権田さんの家で、皆さんの帰りを、ご飯を

作って待ってます」


健気な真理亜に権田は


「そんな事、いいですよ!真理亜さんは

帰ってゆっくりしてください!ビックリ

したでしょう?」


「いえ!私は勇也さんの妻に、なったんです

から、皆さんの一員です!作らせてください!」


「権田さん、お願いっす!」


「どうする?悠里?」


「甘えますか?」


「そうだな、じゃあ真理亜さん、お願いします」


「私からも、お願いします」


「はい!お任せを」


そう言って、満面の笑顔で真理亜は、権田の

家に帰って行った。


「でも賢介さん、軽い傷で本当に良かった!」


「悠里、お前が守ってくれたんだよ!」


「え?私が?」


「柊さんすか?」


「あ~これを、胸のポケットに入れて

たんだ」


そう言って、権田は小さな箱を出して

見せた。


「これは?」


「あ~明日は高井さんの命日だから、高井さんの墓前で、悠里お前にプロポーズしようと

思って、今日買ったんだよ!それを胸の

ポケットに入れてたから、あいつの刃物が

刺さらなかったんだよ、でも箱は駄目に

なったけどな、すまん!」


「もう~箱なんか、どうでもいいよ!賢介

さんが生きて居てくれたら!」


「そうっすよ!もう柊さん、大変だったん

すから!」


「そうか~二人共、本当にすまん!」


謝る権田


「賢介さんが、謝らないで!元はと言えば

私なんだから、賢介さん取り調べで、私と

何処で会ったか、絶対に聞き出してね」


「あ~任せとけ!」


「やっぱり権田さんは、頼りになるっす!

格好いいっすよ!」


「早川、今頃、何言ってんのよ!気が付く

のが遅いのよ!」


「あ~それを、言うっすか!」


権田が元気だと分かると、ギャーギャー

うるさい、何時もの二人に戻る。

権田は柊の、あの取り乱した姿、そして

泣き出した早川、真理亜さんに本当に

感謝して、その気持ちが心から、嬉しかった。


「じゃあ、行って来るわ」


「はい」


「はいっす」


一応の状況説明をすると、権田はあの

ストーカーの居る、取り調べ室に入った。


「お前、本田拓也28歳、無職なのか?」


「あ~そうだよ」


「お前は、どうして俺を刺そうとしたんだ?」


「あんたは、どうやら僕の柊悠里さんの

大切な人みたいだから、あんたが居なく

なれば、悠里さんは僕の所に、帰って

来ると思ってね」


「お前さっきから、僕の悠里さんとか

言ってるけど、付き合ってたのか?」


「付き合う?そんなんじゃ無いよ!僕達は

運命で結ばれて居るんだよ!」


「運命?」


「あ~あの悠里さんは、僕が悪い連中に

囲まれて居る時に、助けてくれたんだよ

そして困った事が有ったら、言ってねって

私は柊悠里、港署に居るからって言って

くれたんだよ!あれは、きっと僕を守ろう

として、僕だけの為に言ってくれたんだよ?

これが運命じゃ無きゃ、何なの?」


「電話を掛けて来たのも、写真を送って

来たのも、お前か?」


「そうだよ!少し会わない間に、僕の事を

忘れて居るみたいだから、ヒントを上げた

んだよ!でも、思い出さないから、今回は

お仕置きで、あんたを襲ったんだよ

フフフ」


「何が、可笑しいんだ!」


「いや、これで悠里さんが思い出して

くれると思うと、嬉しくてフフフ」


「お前の部屋、家宅捜索するからな!」


「あっ、いいけど悠里さんの写真は

触らないでね」


「フ~」


権田は、大きなタメ息をついた。

そして、先に取り調べをしていた刑事に


「あいつ、精神鑑定が必要だな!うちの柊に

異常な執着心を示している、柊は、もう

被害届も出してるし、証拠の映像も有るから

一度、精神鑑定する様に頼むな!」


「はい!直ぐに、上に報告しときます!」


「じゃあ、お疲れ」


「お疲れ様です!」


やっと終わった権田は、柊、早川の所に

行った。


「悠里、思い出したか?」


「あいつ、28歳って言ってましたよね?

もう10年前に、悪い連中に囲まれて居る

高校生を助けた事が、有ります!多分

その子かと?10年も 経つと変わってしまって、でも間違いないです!」


「じゃあ、10年もお前の事を?」


「あ~怖いっす!」


「まぁ、今迄そんなのが無かったのが

可笑しかったけどな」


「へ?賢介さん?」


「どういう意味っすか?」


「それだけ悠里は、強くて可愛いんだよ!」


「権田さん、顔が真っ赤っすよ?」


「うるさ~い!さぁ、帰るか?真理亜さんが

待ってるぞ!」


「そうですね」


「そうっすね」


三人でタクシーに乗って、真理亜の待つ

権田の家に帰って行った。

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