第32話柊にストーカー現れる③

翌朝


「おはようございます」


「おはよう」


と、軽いキスをする二人。

おでこを、くっ付けて顔を見て笑う二人。

コーヒーとサンドイッチを用意する柊。


「悠里、今日出勤前に、コンビニに寄る

からな」


「あ、は~い」


そして、二人でコンビニの防犯カメラを

借りて、その男のデータを入力しておいた。

それから署に、出勤した。

少しして早川が、出勤して来た。


「おはようっす、権田さん、柊さん」


と、言いながら早川は柊の所に来ると柊の

腕を掴んで


「柊さん、柊さん居るんすね!良かったっす!」


「ハハハ、早川ありがとうね、真理亜さん

にも、ちゃんと言っといてね」


「はいっす!」


「早川、本当にありがとうな」


「いえ、柊さんが居てくれて、僕は嬉しい

っす!」


すると権田が


「おい!柊、早川、デスクの上に手を

広げて置いて見ろ!」


「手ですか?何で?」


「どうしたんすか?権田さん?柊さんの

変人が移ったっすか?」


「早川~あんたね~朝から、やる気?」


「滅相も無いで、ござりまする」


手を置いて、ギャーギャー騒ぐ二人。

権田は、ジーッと見て


「もう、いいぞ」


キョトンとする二人。

目が合うと、お互いに首を傾げて居る。

権田は何も無かったかの様に、仕事をして

居る。


「何だったんすかね?」


「さぁ~?」


「やっぱり、柊さんの変人が~」


「あんたね、まだ言う気?」


口を押さえる早川。

そして、柊が席を外すと


「早川!」


と、権田が手招きをする。


「早く来い!」


「なんすか?」


「お前、この指輪のサイズいくつだ?」


「僕は1 1っすけど、あっ!あ~~~」


「お前、柊に絶対に言うなよ!言ったら

俺の空手の練習相手にするからな!」


「言わないっす!言わないっすけど柊さん

喜ぶっすよ!」


何故か自分のデスク迄、ピョンピョン跳ねて

戻る早川は、満面の笑顔だった。

そこに柊が、戻って来た。

跳ねる早川を見て


「早川、あんた何してんの?人間止めて

ウサギにでも、なるの?」


「もう~柊さんたら、僕はウサギより

可愛いっすよ!」


「は?幸せボケ?真理亜さんも大変ね」


「何とでも言ってくださいっす」


そして、もう一つピョンして、デスクに

座ると早川は、スケッチをし出した。

暫くすると、ドアがノックされる。


「どうぞ」


「あの~柊さん宛てに、これが届いて

おりまして」


「あ~貰っとくよ、ご苦労様」


「失礼します」


権田が受け取ったのは、レターパックだった。

こんな薄い爆弾は、無いだろうと思ったが

一応、耳を当てる権田。

そして


「柊、早川、お前達は一番後ろ迄、下がってろ!」


そう言って、権田は開封した。

すると中から、柊の写真が出て来た。

権田と一緒の写真も有った。

数は100枚とは、言わない位有った。

それを見た柊は


「もう~嫌だ~」


と、座り込んでしまった。


「早川!これ鑑識に持って行って、指紋

とかを調べて貰ってくれ!」


「はいっす!」


今日の早川は、動きが早かった。

権田は座り込んだ、柊を抱き上げた。


「悠里、大丈夫だ!俺が居るから、これから

毎日、悠里の家に行く、いや、悠里の家は

バレてるな?俺の家に来い!今日必要な

荷物を早川と、一緒に持って来い!俺は

今日、仕事が終わったら少しだけ、用事が

有るから、これ鍵な!」


と言って、家の鍵を渡された。

戻って来た早川に


「早川、悪いけど今日、柊の家に行って

必要な荷物を、俺の家迄一緒に、運んで

くれ」


「あれ?権田さんは?」


「俺は仕事が終わったら、少しだけ用事が

有るから」


「あ~~」


と、言って口を押さえる早川。

そんな早川を、権田が睨んで居る。


「分かったっす!真理亜さんにも言うっす!」


「何で、真理亜さん迄?」


「お二人の事で、何か有ったら言う様に

言われてるっす!言わなかったら、お仕置き

されるっすよ!」


「お仕置きって、早川お前大丈夫か?」


「何がっすか?」


全然、気にしていない早川を見て、権田は

諦めた。

柊はデスクに座って、固まっている。

でも明日が、高井夫婦の命日だった事を

思い出して


「権田さん、私明日の朝少し…」


「あ~分かってるよ、高井さんの命日だろう?」


「はい!」


「柊さん、今年も行くんすか?」


「早川、最初に言ったでしょう!私は

死ぬ迄、あの人達に謝り続けるの!そして

自分を見直すのよ!」


「柊さんは、そうっすね!見直した方が

いいっすね!」


「何で、あんたに言われなきゃ、いけないのよ!」


と、二人の言い合が始まった。

権田は、敢えて言わせておいた。

その方が柊の気が、紛れると思ったから

だった。

途中、早川と目が合った権田。

早川も、わざと言って居る事が分かった。

そして、落ち着いた頃を見計らって


「柊、一応被害届けを出しておけ」


「はい」


そして柊は、被害届けを出した。

仕事が終わると


「じゃあ、早川頼んだぞ!」


「はいっす!真理亜さんも署迄、来てくれる

っすから、三人で行動するっすよ!」


「あ~ありがとうな!悠里気を付けろよ!」


「はい」


そして、権田は足早に、走って行った。

権田は高井さんの命日に、柊と一緒に

行って、墓前でプロポーズを、しようと

ずっと思っていたのだった。

決して許して貰え無いが、どうしても

高井一家に見届けて、欲しかったのだった。

そして、それが柊の一番喜ぶ事だと思って

いた。

ジュエリーショップに行くと


「いらっしゃいませ」


「あの~指輪が、欲しいんですけど」


「どの様な?」


「プロポーズをするんで、あっ、でも

シンプルなのが、ペアで欲しいんですけど」


「エンゲージリングですね、じゃあこちらへ

どうぞ」


案内される権田。


「リングに刻印も、出来ますので、よろしかったら、お申し付けください」


「はい」


商品を見る権田。

こんな事には、とんと鈍い権田だがシンプルで、素敵なリングを見付けた。

リングの側面に


《I.will.standby》


この文字が刻印されていた。


(これは、何時も側に居るって意味だな!

よし、これだ!)


「あの~このリングを、サイズは多分

7だと思うんですけど、内緒なので、計って無いんですよ」


「そうですか、もしサイズが合わなかったら

お直しも、出来ますので、お客様のは今

計りましょうか?」


「お願いします」


そして権田は、リングの内側にTo'Yuri

From'Kensukeと、刻印して貰った。

ラッピングして貰うと、権田はその箱を

大事に胸のポケットに入れた。

そして、店を出た。

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