第31話柊にストーカー現れる②

「柊さん!早川っす!」


「真理亜です」


柊は、そ~っとドアを開けた。

二人を見て、少し落ち着いたのか


「ごめんね、今日は真理亜さんとの、約束の日だったのに」


「いえ、柊さん!こんな柊さんを、放って

帰って来た勇也さんは、後でお説教しときます!」


目を白黒させる早川。


「違うの真理亜さん、私が大丈夫って言ったの、早川は心配してくれたのに」


「そうなんですか?じゃあ、お説教は無しに

します」


胸を撫で下ろす早川。

そして、暫くすると、慌ただしく押される

チャイムの音。


「おい!悠里!俺だ開けろ!悠里!」


早川が、ドアを開けに行った。

早川を見て、驚く権田。


「早川?真理亜さん迄?」


「権田さんが来る迄、心配だから行こうって

真理亜さんが」


「早川、真理亜さん、ありがとう」


お礼を言うと権田は


「悠里!大丈夫か?」


権田を見た柊は、緊張の糸が切れたのか

大粒の涙をポロポロ流し出した。

権田は柊を、力強く抱き締めた。

その様子を見た真理亜は、早川を手招きした。

そして、小声で


「私達は、帰りましょう」


そして、柊の部屋からそ~っと帰って行った。

権田は、柊の気が済む迄、泣かせた。

柊の涙を見るのは、これで二度目だった。

普段は、どんなに辛くても、決して涙を

見せない柊。

高井さんの時と、今回だけだった。

それだけで、柊がどれ程、怖かったか

想像が出来た。

権田は、その男が心底憎くて、許せ無かった。

泣き止んだ柊は、チョコント権田の隣に

座った。


「ありがとう賢介さん、賢介さんの顔見たら安心しちゃって」


「い~よ!そんな事、俺の前なら幾らでも

泣けばいい!我慢する必要なんて無いからな」


「うん!」


「大体、早川から話は聞いたけど、悠里は

その男を知らないのか?」


「うん、向こうは覚えて無いの?忘れたから

お仕置きとか言ってるから、何かで会って

るのかも知れないけど、私は大体の事は

覚えてるけど、あの男は分からないの」


「そうか」


そう言って、権田は柊の頭をポンポンと

した。


「フフフ、子供みたいだね?」


「いいじゃん、子供で俺の前だけなら」


そう言って、権田は又、頭をポンポンする。

嬉しい柊。


「あっ!賢介さん、ご飯まだでしょう?

簡単な物だけど、何か作るね!だから

今の間に、シャワー浴びて来たら?」


「そうだな!でも服が無いからな?」


「私のバスローブで我慢して、洗濯して

直ぐに乾燥するから」


「悪いな~」


「何言ってんのよ!さぁ、行ってらっしゃい」


「あ~行って来るよ」


柊は冷蔵庫を開けると、食材が乏しかった。


(こんな日が来るなら、ちゃんと買い物

しとくべきだったな~)


後悔をするけど、遅かった。

定番にはなるが、カレーなら何とか作れ

そうだった。

そして、シャワーから出て来た権田は

バスタオルを、腰に巻いてキッチンの柊の

横に立つ。


(そんな格好で、横に来られると)


ドキドキする柊を、よそに権田は


「何を作ってるんだ?」


「うん?材料が無かったから、カレーを

作ってるの、今度はちゃんとした料理を

作るからね」


「カレーで十分だよ!」


と、笑う権田。


「悠里、火加減見ててやるから、悠里も

シャワー浴びたら?」


「いいの?」


「うん、見とくよ」


「じゃあ、今の間に入って来るね」


「うん」


そして、柊もシャワーを浴びた。

柊はパジャマに着替えた。

権田は柊のバスローブは小さいので、這おっていた。

そして、二人でカレーを食べる。


「美味しいよ!」


「本当に?ありがとう」


食べ終わると、コーヒーを飲む二人。


「早川と真理亜さん、何時の間に帰ったのかな?」


「悠里が泣き出したから、気を効かせたん

だろう?きっと真理亜さんが」


「有り難いね!」


「あ~さぁ、明日も早いから寝るか?」


「そうだね」


「じゃあ、俺はここで寝るから」


権田は、リビングのソファーで寝ようと

した。


「え?駄目だよ!身体が痛くなるから!

良かったら私のベッドで、一緒に寝ましょう!」


「え?」


真っ赤な顔の二人は、ベッドに入った。

枕が一つしか無いので、柊は権田に枕を

渡した。

すると権田が、腕枕をしてくれた。

疲れている筈の二人だが、目がパッチリと

開きなかなか、寝付け無い。


「賢介さん、起きてる?」


「あ~なかなか寝れ無いな?」


「一緒、安心と緊張で」


「そうだな、悠里」


そう言って、権田は身体の向きを柊に

向けた。


「俺が居るから、大丈夫だ、ゆっくり寝ろ」


そう言って、権田は柊の、おでこ、頬、鼻

そして唇にキスをした。


「今が暗くて良かった」


「どうして?」


「多分、顔が真っ赤だから」


「俺もだよ!」


「何だか寝れそう」


「うん」


そう言って、二人は眠りについた。



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