第28話早川の婚礼

それからの早川は、忙しかった。

真理亜の両親への挨拶、式場の手配、衣装

合わせ、それに仕事と。

見ている、権田と柊は


「大変なんだな?」


「そうですね、見てる方が疲れますね」


と、呑気にコーヒーを飲んでいた。

すると早川が


「今日なんすよ!」


「何がだ?」


「真理亜さんの、両親に挨拶に行くっすよ」


「そうなの?でも、お見合いで相手も

知ってるんだから、何時もの早川で行けば?」


「大丈夫っすか?僕?」


「まぁ~そう言われたら、大丈夫じゃ無い所が多いけど、相手が分かってくれてるんだから、自信持って行けば?」


「あの~柊さん、大丈夫じゃ無いとは?」


「まぁ~その話し方だよね!」


「うっ!やっぱり、そうっすか?」


「うん、せめて今日は頑張って、言葉使い

気を付けて見たら?」


「頑張るっす……頑張ります?」


「何、聞いてんのよ!それで合ってるから」


「分かり……ました」


「出来るじゃん!」


「ありがとうございます」


そんな二人を見て、権田は


「ここは、語学教室か!」


と、言って三人で、笑っていた。


「お二人は、婚礼に出席してくれるっすよね?」


「お?俺達か?まぁ、お祝い事だからな

行かないと、いけないだろう?」


「早川!あんた、もう話し方が戻ってるよ!」


「向こうに行った時に、気を付けるっす!

何か変な感じがするっすよ、じゃあお二人は

出席と」


「大変だな~早川」


「本当だね」


心配する権田と柊。


「そんな事、無いっすよ!明るい未来の為

なら、楽しいっすよ」


「か~羨ましいよ!お前のその性格が」


「早川は、性格はいいもんね?」


じと目で柊を見る早川。


「柊さん?朝から、次から次へと大変失礼な

事ばかり、言ってるっすよ!性格はとは

何なんすか?」


口を押さえる柊。


「あ~いや~その~言葉のあやだね」


「自分の時は、そんな事言って、僕だったら

叩くくせに、ずるいっす!」


「お?早川、私とやる気?」


「僕は、負ける戦いは、やらないっすよ!」


キッパリ断る早川。


「ハハハ、早川、お前は偉い!長生きする

秘訣だぞ!」


「フフフ、本当だよ!」


そして、瞬く間に日は、過ぎて行く。

早川の婚礼を、明日に控えた権田と柊。

柊は、婚礼様に、ドレスをレンタルして

いた。


「悠里、明日迎えに行くよ」


「でも、賢介さん車は、駄目ですよ!どうせ

飲まされるから」


「分かってるよ、タクシーで行くから」


「はい」


権田には素直な柊。

そして当日、権田は柊を迎えに行った。

出て来た柊を見て、権田は言葉を失った。

柊は、何時も形振り構わずに、殆ど

ノーメークでスーツだった。

この日は、バッチリメイクをして、髪も

アレンジして、ドレスだった。

その姿は、本当に美しかった。

何も言わない権田に


「賢介さん、おはようございます」


「お、おはよう」


それっきり、黙る権田。


「あの~賢介さん?私やっぱり変ですか?」


柊自身も、こんな格好はしないので、黙る

権田を見て、不安になった。


「いや、あの~悠里、キレイ過ぎて言葉が

出なかった、ビックリしたよ!」


「フフフ、本当に?」


「あ~」


「やった~嬉しい~」


そう言って、柊はピョンピョン跳ねる。

事件の時とは、全くの別人だった。


「じゃあ、行きますか?お姫様」


と、言って権田はエスコートしてタクシーで

式場に向かった。

受け付けを済ませると、座る席の案内を

渡された。

二人は隣に座る様に、なっていた。

二人は席について


「今日の早川は、どんなんだろうな?」


「へましないと、いいんですけどね」


もはや、保護者目線に、なっていた。

そして、いよいよ新郎が先に入って来た。

ロボットの様に、立って居る早川。

真理亜が父親と、入場して来て、真理亜の手を、早川に渡すと、その途端早川は大泣きを

し出した。

真理亜の父親に


「真理亜さんを大切にするっす!誓うっす!」


と、言って居る。

その早川の涙を、真理亜が拭いて居る。

権田と柊は、頭を抱えた。


「やっちまったな!」


「そうですね!」


二人は苦笑いしていた。

一通りの儀式が、終わると新郎、新婦が

各テーブルを回り、挨拶をしていた。

そして権田と柊の所に、やって来た早川と

真理亜。


「今日は、権田……」


早川が、突然黙ってしまった。


「どうした?早川?」


「権田さん、もう浮気っすか!僕は柊さんに

招待状を送ったっすよ!」


「バ~カ、良く見ろ!柊だよ!」


じ~っと見る早川。


「柊さん?こんなに変わるんすか?」


そう言うと、早川は真理亜に、つねられる。


「痛いっすよ、真理亜さん」


「勇也さん!失礼ですよ!柊さんは元々

美しい人ですよ!何時も仕事で、スーツを

着てらっしゃるからですよ!」


と、早々に怒られる早川。


「そうっすね、真理亜さん、すみませんす」


「私じゃ有りません!柊さんにですよ!」


「柊さん、すみませんす」


「いいわよ、おめでたい日何だから」


「お詫びに、今日の柊さんを、後日スケッチして渡すっす!」


「え?早川、そんな事出来るの?」


早川は又、ニンマリして


「出来るっすよ!」


「お~じゃあ早川!二枚頼むわ!」


「あ~権田さんも要るんすね?了解っす!」


「勇也さん!凄い!じゃあ私のもね?」


「真理亜さんのは、毎日でもスケッチするっすよ」


「ありがとう」


「お~仲の良い事で」


「本当、お幸せにね」


「はいっす!」


「はい、ありがとうございます」


そして二人は、次のテーブルに行った。



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