第26話事件発生④

柊は、早川の取り調べ室を見ていた。


「知りませ~ん」


「だって、あなたが写ってるんすよ?」


「良く似た人が、居るって言うからさ~

刑事さん」


完璧に、嘗められていた。

柊は、取り調べ室に入って行った。

現れたのが、女刑事なので、山口は又

嘗めてかかっていた。


「早川、変わるから、この山口百合花さんの

家の家宅捜索令状を、取って来て」


「はいっす!」


「さぁ~家も、あなたも調べるわよ!」


「……」


「黙って無いで、防犯カメラに、あなた

何度も写ってたよ!事件当日は夜なのに

目深に帽子を被って、異様だったわ!

あれも、あなた?」


「あれは……」


「何?」


「……」


黙り込む山口百合花。


「あなた、和田さんとどういう関係?

もう、ここ迄来たら、隠し通せ無いわよ

相原さんが、してた事は、もう察しが

付いたから!」


「え!」


「うん!分かったよ!今はそれを買った人達を、洗い出してるから」


「……」


項垂れる山口。


「さぁ、どうするの?まぁ、黙ってても

いいわよ、家を調べれば出て来るでしょう

あれが!」


柊は、カマを掛けて見た。


「ち、違うんです!刑事さん、最初は私が

仕事で疲れるている時に、和田さんが

この薬を、使ってごらん、と言って薬を

くれたんです!そしたら本当に、元気に

なって又、欲しいと言ったら、今度は

お金を請求されて、その内に要求が

ドンドン、エスカレートして身体迄、でも

薬は欲しいから、相原さんと一緒に

パソコンや、携帯で売る様になって、すると

相原さんが分け前を、もっと増やせと

言い出して、和田さんとケンカになって

私も居たんですけど、止めれ無くて

和田さんが、相原さんを刺したんです!

自殺に見せ掛けようとして、わざわざ

壁に包丁の柄で、へこみを付けて!」


「間違い無い?」


「はい!」


「よし、分かった!あんたも和田に騙された

被害者だね、でも、もう薬は駄目だよ!

いい機会だから、止めるんだよ!出来る?」


「もう、普通の暮らしがしたいです!」


「そう、それで、いいんだよ!普通の暮らしが一番、幸せなんだよ!あなたは、でも

薬を売ってしまったから、どれ位の判決が

降りるかは分からないけど、これからが

大事なんだよ、あなたの、これからの

人生を左右する大事な時だよ!一度でも

手を出したら又、一緒の事だよ!分かった?

根性出して、乗り切るんだよ?どうしても

辛い時は、ここにおいで、私が居るから」


山口百合花は泣き出した。

柊は優しく


「そう、思いっ切り泣いて、前を向くんだよ」


「……はい」


そして柊は、早川と変わって、権田の所に

行った。

権田に耳打ちした。


「山口が口を割りました、和田が相原を

刺したそうです」


権田の和田を見る目が変わった和田は、その目を見ると、サ~ッと血の気が

引くのが分かった。


「おい!今なら、もう一度チャンスをやる

自分の口で言え!」


観念した和田は、口を開いた。


「……相原さんを、殺したのは私です」


「よし、そうだな!じゃあ、その薬の

入手経路は、一体何処なんだ?」


「それは……」


渋る和田に、権田は怒る。


「お前な~言っても地獄、言わなくても

地獄だぞ!でも外に居るより、務所に居る

方が、まだ安全か!」


それを聞いた和田は、諦めて話をし出した。


「うちの会社は、通信会社で、普通に企業に

パソコン等を納入してるんですけど、ある日

一件の会社から、電話が有りましてパソコンが、起動しないから、多額の損害を被ったと

連絡が入り、私は直ぐに、お茶菓子を持って

謝罪に行ったんです、すると、その会社は

表と裏が有って、反社会勢力の会社だったんです!脅されて、お金を請求されましたが

会社は、お金は出してくれず、すると毎日

私の事を、尾行して直接、脅して来たん

です!そして、この薬を売ってお金を作れと」


「その時に、何で警察に行かなかったんだ?」


「刑事さん、毎日尾行されて脅されたら

殺されると思って、行けませでした」


「でも、そこで勇気を出してたら、お前は

犯罪に手を染めずに、済んだのにな!

そして、相原を殺す事も、無かっただろう?」


「それが、薬を売ると私にも、分け前を

くれて、段々、感覚が麻痺して行って

分け前を増やせと、相原さんが言い出して

無理だと言うと、会社にばらすと迄

言い出して、気が付いたら、殺してました

自殺に見せ掛けようとしましたけど、駄目

でしたね」


「当たり前だ!警察を嘗めるな!それで

その会社の名前、住所は分かるな?」


「はい」


「じゃあ、教えろ!それと、お前に直接

指示した奴の名前もな!」


そして、権田はその情報を、麻取に渡した。

ここから先は、麻取の仕事だった。

麻取が踏み込んだ、その会社は、やはり

反社会勢力の団体だった。

一網打尽に逮捕となった。

一応、この事件は、これで終わりとなったが

こんな一般人にも、薬が蔓延していると言う

事実に、権田、柊、早川は、やるせない

思いだった。


「権田さん、今日は気分転換に、一杯

行くっすか?」


「やだよ!お前は酒癖が悪いから」


「え~!」


「でも、柊お手柄だな!」


「いえ、だって和田の所に行ったのは私と

早川だけでしたから、ね?早川」


「僕は今回、殆ど柊さんの、使いっ走りしか

して無いっす!」


と、落ち込む早川。


「早川、お前は何を、落ち込んでんだよ!

何時もと変わらないじゃ無いか!」


「あ~言ったっすね!権田さん?言っては

いけない事を、言ったっすね!」


「何だ?」


「もう、いいっす!今日は、やっぱり飲みに

行くっす!僕は、やけ酒を飲むっす!」


そう言って、早川は無理矢理、権田と柊を

連れて行った。

案の定、やけ酒は尚、たちが悪かった。


「権田~」


「柊~」


もう呼び捨てだった。

早川の気持ちが、分からなくも無い二人は

黙って聞いていた。

何とも、優しい二人だが、明日は早川は

今日の事を、覚えて無いだろう。

きっと、二人から仕返しは、されるだろう。


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