第20話権田の思い

署を出ると権田が


「柊、飯行くか?」


「はい、行きます!」


「あの~僕は?」


「お前は、真理亜さんが居るだろう?」


「今日は会わないっす!僕も一緒に

行きたいっす!」


権田と柊は、目を会わせ肩をすくめる。


「よし!分かった、早川も行くか?」


「行くっす!」


ルンルンの早川。

そして、三人で近くの居酒屋に入った。

やはり、柊は痩せの大食いなのか、大量に

注文する。


「柊~お前な~又、こんなに食べるのかよ?」


「もちろん!」


満面の笑顔で、答える柊を、権田は


(可愛いな~そんな顔で笑うなよ!)


そう思っていた。

そこに早川が


「権田さん、先が思いやられるっすね!」


「本当だな」


「早川~あんたね、もう帰んなさい!」


「嫌で、ござりまする、許してくださいで

ござりまする」


「しょうがないわね!」


「ハハハ」


「ハハハ」


笑いながら、楽しく飲んで、食べていた。

すると、酔って来た早川が


「権田さん、僕が愛のキューピッドに

ならなくても、本当は柊さんの事が

ずっと好きだったんすね!」


(うっ!こいつ、変な所で勘が鋭いからな)


「バ~カ、お前はもう酔ってんのか?」


それを、聞いていた柊は、自分が権田の事が

気になりだしたのが、先だと思っていたから

権田の答えを、聞きたかった。


「権田さん、私も聞きたいっす!」


「柊、どうして話し方が、移ってるんだよ

バ~カ」


「だって私は、権田さんの事を、早川が

言う前から、気になっていたから……」


「お?」


「柊さん、マジっすか?」


「う、うん」


真っ赤な顔の柊がいた。

そんな、柊を見て権田は、観念したのか


「俺は、ずっと柊を見て来たぞ!でも

同僚だから、心を無にして、仕事をして

たんだよ」


「な~んだ!僕が居なくても、二人は

両思いだったんすね!」


「バ~カ、お前がきっかけを、作ってくれた

んだよ、それには、変わりは無いぞ!な?

柊?」


「はい、早川に初めて、感謝したよ」


「なんすか?その初めてとは?」


「だって、他に感謝する所が、無いじゃん」


「僕は、犯人の似顔絵を勉強して、二人に

貢献して必ず、感謝して貰うっすよ!」


「お~それは楽しみだな~」


「本当、頑張れ画伯」


「もう~からかわないで、くださいっす!

僕も早く、一人前の刑事になるっす!」


「やけに、力が入ってるな?早川お前

どうした?」


「本当、どうしたの?」


「一人前になったら、僕は、僕は真理亜さんに、プロポーズするっす!」


「お?」


「え?」


「本気っすから、二人で応援して、ください

っすね!」


「あ~まぁ、応援するけど」


「うん、応援するよ」


「ありがとうっす!一緒に、権田さんも

プロポーズするっすか?」


吹き出す、権田と柊。


「何で、お前と一緒に、プロポーズするんだよ!お前が、一人前になる迄、どれ位

掛かると思ってるんだよ!」


「え~じゃあ、権田さんは先に、プロポーズ

する気っすか?」


「早川、よく考えろ?今、柊が居るんだぞ?」


「それが?」


「それがって、お前は本当に、抜けてるな?」


柊は、プロポーズ?と、思いながら権田の

本心が聞きたかった。

一人、考えていると又、早川が


「柊さん?又、百面相してるっすよ?

プロポーズの事を、考えてたっすか?」


「な、何を言ってんのよ!酔っぱらい!」


だが、顔に出やすい柊は、顔が真っ赤に

なっていた。

事件の時は、冷静沈着で無表情に、近いのに

プライベートになると、全然違った。

権田は、プロポーズの事は、それ以上は

口にしなかった。

少し残念な柊。

そんな柊の様子を、見ていた権田は


(待ってろ!柊、お前が一番喜ぶタイミングで、ちゃんとプロポーズするからな!)


そう思っていたが、口には出さなかった。


「さぁ、食べて飲んだし、明日も仕事だ

帰るか?」


「え~もう、帰るんすか?」


「早川、お前は酒グセ悪いぞ!」


「そんな事、無いっすよ!ね?柊さん?」


「真理亜さんの前では、飲まない方が

いいかもね」


「なんすか~」


「さぁ、帰るぞ」


「はい」


「分かったっすよ!」


しぶしぶ、席を立つ早川。

三人は、店を後にした。


「じゃあ、僕はこっちっすから、お二人で

仲良く帰ったくださいでござりまする」


「あ~そうするよ!じゃあな早川」


「は~いっす」


「え?」


「あいつ大丈夫か?」


「酔ってましたね」


「柊、家迄、送るよ」


「え?いいですよ」


「何言ってんだよ!こんな時間に、お前を

一人で帰せるかよ!」


嬉しい柊は、素直に


「ありがとうございます」


と答えた。

そして、歩き始めると権田が


「はい、柊」


そう言って、腕を差し出した。

腕を組む事、なんだなと柊は思い、恥ずかしいけど、権田の腕に自分の腕を、絡めた。


「あったかい」


「そうか?なぁ?柊?俺達は何時まで名字で

呼び会うんだ?」


「フフフ、そうですね、そう言われれば」


「仕事以外は、下の名前で呼び会うか?」


「さんせ~い!」


「柊、お前も酔ってるのか?」


「大丈夫ですよ、嬉しくて、じゃあ呼んで

見てください!」


「……」


「あれ?」


「いや、いざとなると、照れるな」


「早く、呼んでください!」


「悠里」


「フフフ、賢介さん」


「ハハハ」


そして、普段寡黙な権田が、柊のおでこに

自分の、おでこを付けて来た。

嬉しいけど、恥ずかしい柊は、権田の顔が

見れなかった。


「悠里、ちゃんと見ろ」


目線を会わせる柊。

すると、暗いけど分かる位、権田は照れて

いた。

二人は、見詰め会って笑った。

いい大人が、本当に子供の様な、恋愛を

してるのが、可笑しかったからだ。


「早川が言う様に、俺達は本当に子供より

恋愛は下手だな!」


「免疫が無いですから」


「悠里、これから二人で、少しずつ

出来る事を、増やして行こう」


「うん!賢介さんとなら、出来る」


そして、権田は柊の頬に、キスをした。

すると柊が


「ヒャ~」


と、変な声を出した。


「ハハハ、何時もの現場の、悠里からは想像

出来ない声だなぁ?でも、そんな声を

聞けるのは、地球上で俺だけだから

いくらでも、出していいぞ!」


「うん!」


柊は権田の、胸に顔を埋めた。

しばらく、そのままでいた。

そして、二人は又、歩き出した。

二人は、本当に幸せだった。

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