第19話怒る権田

最近は、大きな事件も無く、ゆったりして

いた三人だが、2時を過ぎた頃に電話が

鳴る。

権田が出ると


「了解です」


その一言で、用意をする柊と早川。


「事件だ!行くぞ!」


「はい」


「はいっす」


「権田さん?今日は?」


「刃物を持った男が、人質を取って

立てこもってるそうだ」


「急がないと!」


「そうっすね」


現場に着いた三人は、巡査から説明を

受ける。

すると柊が


「私が行きます!」


「いや、早川行くぞ!」


権田の意外な、言葉にオロオロする早川。


「え~僕っすか?無理っすよ!柊さん

どうぞっす!」


「ったく!お前は!」


そして、何とか犯人を確保した、権田と柊。


「権田さん、私は被害者の所に、行って

来ます!」


「あ~」


柊は、高井一家の事件以来、ずっと被害者の心のケアをしていた。

車で待つ、権田と早川。


「無事に確保出来て、良かったっすね!」


「あ~」


早川は、権田の、その一言で、機嫌が

悪い事に気が付いた。

そして、柊が車に乗り込む。

権田の機嫌が、悪い事に柊も気が付いた。

柊と早川は、首を傾げて黙っていた。

署に戻った三人。

早川が


「権田さん、柊さん、コーヒー入れるっす」


「俺は、要らね~ぞ!」


「え~どうしたんすか?権田さん?」


「そうですよ、権田さん?今日は何か

変ですよ!」


権田は、腕組みをして、柊を見る。

一瞬、ビクッとする柊。

そして、権田が口を開いた。


「柊!お前は女だぞ!武道が強くても

相手は凶器を持った男だぞ!何時まで

前に出て、戦う気だ!」


「えっ!でも……」


「分かったっす!権田さんは柊さんを

心配してるんすね?」


「早川!お前は、何時まで後ろに居る気だ!

お前も刑事だろう!」


「いや~僕は、何も出来ないっすから……」


「もういい!少し二人共、考えろ!」


権田は、部屋から出て行った。


「早川~あんな権田さん、初めて見たね?」


「それだけ、権田さんは柊さんを、大切に

思ってるって事っすよ!」


「それは嬉しいけど、私が前に出ないと

権田さんが、一人になっちゃうし、早川

あんたね、強くなんなさいよ!」


「そんな、無茶苦茶を言わないで、くださいっす!出来る事なら、もっと早く、強く

なってるっすよ!」


「だよね?やっぱり、私が前に出ないと」


「でも又、権田さんが怒るっすよ?」


「は~だよね~」


二人で頭を、抱えて悩むが、答えは、自ずと

決まっていた。

部屋を出て行った権田にも、それ位は

分かっていたが、無鉄砲な柊が本当に心配で

つい言ってしまった。

三者三様で、悩んで居る。

権田は、なかなか戻って来なかったが、仕事が終わる頃に、やっと戻って来た。

安心する、柊と早川。

すると権田が


「柊?お前は、やっぱり前で戦いたいか?」


「はい!それは、高井さんに誓った事ですし

私が行かないと、権田さんだけに、なって

しまうんで」


「よし!分かった!ただし、これからは

俺の後ろに居ろ!何か有っても、俺が

守るから、絶対に俺より前に出るな!

分かったな?」


「はい!」


柊は、権田の気持ちが、嬉しくて、堪らなかった。

一人、取り残された早川が


「あの~僕は?」


「早川、お前は何かを、身につけろ!

お前の観察力は、高いから犯人の似顔絵を

書くとか!出来るか?」


「僕、一生懸命に習うっす!そして

お二人の役に立つっす!」


「よし!じゃあ、これで決まりだな?」


「はい!」


「はいっす!」


三人に、とって長い長い、1日が終わった。

だが、これでこの三人の絆は、又、強く

なった事は、確かだった。





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