第16話早川は、愛のキューピッド

翌日


「おはようございます」


柊が出勤すると


「あ~おはよう」


「柊さん!おはようっす!」


ルンルンで、ハイテンションの早川が

いた。


「何?あんた、朝からそのテンションは?」


「僕、お見合いして、お付き合いする事に

なったんすよ!」


「え~!」


「お~早川が?」


「何で、そんなに驚いてるんすか?」


「いや~」


「その~」


歯切れの悪い二人がいた。


「あ~二人共、僕がお見合いしても駄目

だと、思ってたんすね?」


言葉を失う二人。

何も聞いて無いのに、一人話出す早川。


「もう、おしとやかで、可愛いらしくて

名前が真理亜なんすけど、聖母マリア

見たいな人だったんすよ!」


「お~そうか、良かったな」


「そうそう、良かったね早川」


「次は権田さんと柊さんの番ですよ!」


ピキーンと、固まる二人。


「それがね早川~私にも、お見合いの話が

来てて~」


「え?柊さんにっすか?怖い物知らずっす

ね~」


それを聞いた権田は、無言で固まっている。


(嘘だろう?柊が、お見合いするのかよ!)


「早川ね~あんたは、私の事を本当に

何だと思ってんの?」


「無敵の柊悠里ですけど、なんすか?」


「私は女よ!そんな、言われ方は嫌だよ!」


「でも、事実っすからね?ね?権田さん?」


「……」


「権田さ~ん」


「あ、あ~何だ?」


「どうしたんすか?ボ~ットして、あ~

ひょっとして、柊さんがお見合いするから

ショック受けてるんすか?」


「バ、バ~カ、どうして俺が?」


「そうよ!早川、何を言い出すのよ!」


「二人して、ムキになって、何か益々

怪しいっすね~」


能天気な早川のせいで、権田と柊は

アタフタしている。

そんな二人を楽しんで、見ている早川。


「あ~もう、その話は終わりだ!仕事だぞ!」


「はい」


「はいっす、権田さんは都合が悪くなると

直ぐに仕事を、出して来るっす」


「何だ?早川~」


「何も無いっすよ」


そして、何時もの様に仕事をする三人。

だがやはり、権田、柊は心ここに有らずの

状態だった。

それを見た早川は


「もう~二人は、駄目っすね!コーヒー

でも、飲むっすか?」


「あ~頼むわ」


「早川、お願いね」


「任せるっす!そして僕が、恋敵だった

権田さんと柊さんの、愛のキューピッドに

なるでござりまする!」


「な、何をバカな事を!」


「本当よ!」


二人は動揺を隠せず、真っ赤な顔で

うつ向いていた。


「さっ、コーヒー入ったっす!どうぞっすよ!コーヒーでも飲んで、気を落ち着かせる

っす!で、柊さん?お見合い相手は

どんな人っすか?」


権田は、気になるが、何時もの様に

ポーカーフェイスで、聞き耳を立てていた。


(早川、偉い!良く聞いた!)


「え~最初から断るつもりだから、写真も

何も見て無いけど」


「と言う事は、やっぱり他に思う人が

居るんすね?」


「早川~あんたは、どうしてそう、ズケズケと私の心の中に、入って来るのよ!もう

出禁にするからね!」


「柊さん、前にも言ったっすけど、柊さんは

顔に出やすいんで、直ぐに分かるっすよ!」


慌てて顔を、押さえる柊。


「ほら~やっぱりっす!ね?権田さん?」


と早川が、権田を見ると、何故か権田も

顔を押さえていた。


「権田さん迄、何してるんすか?」


ハット我に返る権田。


「いや、何も」


「今、顔を押さえてたっすよ?」


「たまたまだ!」


「そうっすかね~」


ニンマリする早川。


「やっぱり僕は、二人の愛のキューピッドに

なるっす!二人は今日、仕事が終わったら

食事に行くっす!僕は真理亜さんと食事

っすから」


「何で、お前が決めるんだよ!」


「そうよ!勝手に!」


「僕は愛のキューピッド、逆らえ無いっすよ!さぁ、打ち合わせするっすよ!」


そして、ニコニコしながら、権田と柊を

見る早川。


「あ~柊、飯でも行くか?」


「そうですね」


事務的な二人の、やり取りを見た早川は


「もう~二人は、事件の時は、カッコ

いいのに!恋愛は幼稚園レベルっすね」


「早川~お前には、言われたく無いぞ!

お前も付き合うの、初めてだろうが!」


「まぁ、そうっすけどね~でも、こんな

事務的な会話は、しないっすよ」


「事務的って、何処が?」


「全部っすよ、まぁ、それで柊さんが

喜んでいるなら、いいっすけどね、ね?

柊さん?」


「早川、早川のバカ~」


「もう照れちゃって、可愛いっすね」


「早川、お前には、もう真理亜さんが

居るんだろう?簡単に柊に可愛いって

言うな!」


「あれ~権田さん、やきもちっすか?」


「バ、バカか、お前は~」


でも柊は、嬉しかった。


(早く、お見合いを断ろう)


そう決めたのだった。

そして、仕事が終わると、権田と柊は

食事に行く事になった。


「権田さん、柊さん、楽しんでください

っすね、ちゃんと射止めて、くださいっすよ!」


「お前は、その能力を仕事に使え!

もう、うるさいから、お前は早く真理亜さんの所に行け!」


「人には、得意、不得意が有るっすよ!

言われ無くても、真理亜さんの所に

行くっすよ~じゃあ、お疲れ様っす」


早川は、手を振って去って行った。

気恥ずかしい二人は


「じゃあ行くか?」


「そうですね」


と、歩き出した。

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