【リメイク版】第3話 平和の糧

敵国エッセカマーの有力者を殺す任務を与えられていたが、とある理由から殺すのをやめて彼らを守った私。私は、平和の為に覚悟を決めた。1人でも多くの犠牲を減らす為、私が敵軍に直々に手を下してやる。


エッセカマーとエンヴェルクの国境と国境はそれなりの距離があり、そこには広大な土地が広がっているけど、その時は見渡す限り互いの国の軍隊や兵器が埋め尽くしていた。


私は浮遊魔法を使って人がたくさん集まってる場所から拡声魔法で呼びかけた。


「エンヴェルク全軍に通達する!全軍下がれ!広範囲に結界を張る為に5分以内に国まで退却!結界の中に残ったら命は無いものと思って!」


すると、エンヴェルクの中で私が【殺戮人形】として顔が通っているからか、ある人はおびえながら、ある人は喜びながら帰っていった。

5分待たずとも、3分ほどで全軍の撤退は完了した…はずだった。

1人、私と同じような装備をしたヤツが文句ありげにこちらを見ていた。


「私の命令に背いて結界の中に残るなんて、死にたいのか?」

「お前もエンヴェルクのアサシンだろ?それなら友達も同然じゃないか。それより、どうして彼らを殺さなかったの?」

「まさか、お前もエンヴェルクのアサシンか」

「そうだよ。私はメノカ・イチノミヤ。友達のよしみで、いや、100歩譲ってアサシンのよしみであいつら殺してくれよ」

「無理。私は、無駄な犠牲を少しでも減らしてこの戦争を終わらせたいの」

「でも、【殺戮人形】なんて呼ばれてるじゃん」

「あれはもう半年以上前の話。眠りから覚めた今の私は違う。それより、さっさと始めたいから無駄話は後でいい?」

「無駄話言うなよ…」


私は、もうここまで来たのだから後戻りできない。この敵軍が死ぬのは尊い犠牲。

そして私は、彼らに警告した。


「私たちエンヴェルクは本来、貴様らの国を滅ぼさなければならなかった。しかし、私はそれが我が理想にあたいしないと思い、貴様らの国の王含め有力者十数名の暗殺を免除した。しかし、その為に貴様らには尊い犠牲になってもらう!国の為に死ねることを誇りに思え!」


そう私は叫び、両手に握ったダガーに爆発的な量の魔力を込めた。

前進してくる軍に突っ込み、一振りあたり3~5人程度をっていった。

途中で面倒くさくなって拳に替えたところる効率が上がって、つい楽しくなって世界や国がかかっていることも忘れて敵兵を次々となぶり殺していった。

けど、人数が多すぎてらちが明かない。

ここはいっそ…。

私は周りの敵を軽く相手しながら詠唱を始めた。


『我、意気衝天にあり。故の乾坤一擲けんこんいってき。我、頑冥不霊がんめいふれい、英俊豪傑でなくとも夷険一節、嘔啞嘲哳おうあちょうたつにして鬼哭啾啾きこくしゅうしゅうたる悪鬼羅刹を一刀両断、紫電清霜しでんせいそうに蝕まれ、常寂光土じょうじゃくこうどとなるがいい!<慧刳璃臥エクリプス>!』


手のひらサイズに凝縮した鮮やかな紫色の魔力弾を空中から敵兵に投げつけると…。

激しい光と爆風が起こって、しばらくは目を塞いでいた。

光が収まって目を開けると、そこには隕石でも落ちたのかというほどの超巨大クレーターができていた。

しかし、男が1人生きていたみたいで、瓦礫がれきを押しのけて立ち上がった。


「まさか、私が強化魔術を施したあの軍を一撃で全滅させるとは。そんな力を持ったヤツがエンヴェルクにいるとは聞いてないぞ!?彼らは私が全力を込めて上位魔人クラスの強さまで強化したというのに…。しくじった、このままでは私の作戦が…。この2年近くの計画が帳消しになるのは想定外だった…」

「お前は何者?さっきからのその独り言…。まさか、この戦争の黒幕か?」

「独り言が過ぎたか。まあ、そこまで聞かれちゃここで殺すしかないか…。貴様、名乗れ」

「私はフェリシエラ・ヘルダー。きっと、今ここであなたを殺す為に生まれてきたのかもしれない、なんて思ったよ」

「一言余分だ、小娘。私の名はテウフェル。原初の魔人の1人だ。まぁ、そう警戒するな。封印から抜け出して5年も経ってないから体がまだ随分と鈍っている。瞬殺はしないさ」


気づいた時には、彼は私の横にいた。一撃喰らわそうとすると、腕で薙ぎ飛ばされた。

間一髪で受け身はとれたけど、もしもてれなかったら確実に死んでいた。


「ほう。いくら体が鈍ってるからといって、私に攻撃されて受け身を取るなんて人間の芸当じゃない。それに、あの<慧刳璃臥>は人間なら5人、魔人なら2人はいないと発動できないはず…。貴様、一体何者!?」

「さぁね、私も私自身についてはまだよく知らないの。私の記憶があるのは1年とちょっと前からの記憶。それから今までも半分以上は生命活動してなかったから、まだ自己分析はあんまりできてないんだ。」

「そうか、尚更なおさら貴様に興味が湧いた。殺して我がゼッシュトゥルオン帝国に持ち帰ってやる。やはり、エッセカマーなどただの捨て駒に過ぎなかったか」

「私を殺す?その前に、私がお前を殺してみせる!」

「やれるモンならやってみろ!」


こうして私とテウフェルは会話で互いをけん制しながら殴って、かわして、魔法攻撃して、躱して、蹴って、躱して…。

互いに互角な勝負が何時間も続いた。


「貴様、やはり原初の魔人の1人ではないか!?」

生憎あいにく、もし私が本当にもともとお前らの仲間だったとしても、それを認めてお前らに従うつもりはないね!」


さて、そろそろ決着を付けようか!


続く

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