【リメイク版】第7話 力試し?いえ、決闘です

私はレゼ子の造った生まれた時のことが分かる装置を使った結果、80年後の未来から送られてきたホムンクルスであることが分かってしまった。

だからこそ、博士が私に作らせようとした未来以上の世界を築いてやろう、そう

思ったけど…。


「あと4か月で終焉戦争キリング・ヴィィエンデンが始まっちゃうけど、どうすれば強くなれるんだろう…?」

「なら、強い人と何回も戦ってみればいいと思うッス」

「じゃぁさ、レゼ子のもといたパーティーの強い人とか紹介してよ」

「それならやっぱり、イリーベさんッスかね」

「でも、あのは私より断然強いだろうし…」

「いや、そんなことないッス。というか、シエラちゃんと大差ないくらいの強さだと思うんッスけど。アタシを通してでよければ勝負とか申し込んでみるッスか?」

「いっそ決闘くらいのつもりで!」

「ちょ、ちょっと、決闘っていう風には申し込めないッス」

「え?なんで?とりあえずなんでもいいからさ、決闘って形で申し込んでよ」

「仕方ないッス。その代わり、どんなことになっても知らないッスよ」

「分かってる分かってる」


こうして、私とイリーベさんの決闘は2日後に行われることになったのだった。



遂に決戦の当日。場所は街の外で一番冒険者が集まりやすい場所…、魔物狩りの名所だ。


「レゼから話は聞いたけんど、げに(訳:本当に)決闘でえいんやか?」

「はい、お願いしますね」

「うち、決闘で手抜く気は無いぜよ。後悔せんでくれよ」


「両者、準備できたッスか?それじゃあ、始めッス!」


レゼ子の合図と同時に――イリーベさんの雰囲気が変わった。その瞬間に私はイリーベさんに間合いを詰められてしまったけど、剣を振り下ろす為のごく僅かなタイムラグで防御態勢に入ることができてなんとか一撃目をかわすことはできた。

でも、この数秒で分かった。この人、かなり強い!?


反撃の隙を見せるわけでもなく、イリーベさんは恐ろしいスピードで身長よりも長い大剣を振り回して私を潰しにかかってくる。

でも、その動きには弱点があった。振り下ろす前の一瞬だけ胴に攻撃を入れることができる。殺すつもりでかかるのは流石にアウトだけど、少し反撃するくらいのつもりで狙ってみるか…と思っていたのに剣の振り回し方がどんどん乱雑になってきて攻撃の隙があるかも無いかも分からなくなって…。


くろがね、お前はまだ己の身体の構造についてイマイチ理解できていないようだな』

「その声は博士!?どうして今…」

『私はリアルタイムでお前の動きを見ている。お前は武器がなくても99.8%の冒険者とは楽に戦えるようになっているはずだ』

「つまり、イリーベさんはその0.2%の例外ってことですか!?」

『まぁ、そういうことになるが。とりあえず、お前は今武器でその攻撃を防いでいるが、素手で戦ってみろ。戦いやすくなるぞ』


私は博士と話しながらだった所為せいでおろそかになっていた防御に再度集中した。おっと、博士の言う通りに武器を捨てないと。

私は2本のダガーをイリーベさんに投げつけた。


「武器を使わんなんて、よっぽど死にたいみたいのぉ。これで終わりにしちゃる!」


そう言って彼女は大剣に雷レベルの電気を溜め、振り下ろしてきた。

私は死…いや、故障を覚悟してその一撃を拳で受け止めようとした――。


光が収まり、目を開けると私は生きていた。そして拳はその大剣を受け止め、斬られるどころか剣の方にヒビを入れていた。


「まさか、そがなわけがない!こがなのウソや!」


いつもどこか見た目に会わない雰囲気をまとっているイリーベさんが珍しく見た目相応の駄々っ子を見物の前でしていた。…正直、可愛い。


「ごめんなさい、この剣って壊しちゃいけないものでした?私も決してここまでのことになるとは思ってなくって…」

「大丈夫や、レゼに作り直いてもらうだけやき」

「それで、怪我けがとか無いですか?」

「怪我は無いけんど、ちっくと(訳:ちょっと)無理しすぎて頭痛いかもしれん」


そう言って、イリーベさんは私の膝に頭を乗せてきた。これって…、膝枕してってこと!?急にどうしたんだろう…?


「うち、実年齢は体の通りで、まだまだ子供ながや…。強うなってしもうた所為であんまり人に甘えられざったき(訳:甘えられなかったから)、おまさんみたいにうちより強い人が出てきてくれたのは嬉しい。これからはたくさん甘えさせてもらうぜよ」

「は、はい…」


さっきまでの鬼気迫る様子はどこにもなく、とろけたような甘い寝顔をするイリーベさん、改めイリーベちゃんはそれはとても…


「おい、ここにあの無能が来ていたっていうのは本当か?」


せっかく天使の寝顔に浸っていたのに、聞き覚えのある堅苦しい声に邪魔された…。私はついカッとなってソイツに怒鳴りつけてしまった。


「誰のことかは知らないけど、他人ひとのことを無能ってさげすむのはよくないよ!もしそれが私の知り合いに対してだったら明日の朝日はおがめないよ!?」

「お前って…、この前ギルドで悪党どもに王様ゲームやらせた挙句オモチャにされてあの無能とキスさせられてたヤツじゃん!」

「ちょっと~?それってあなたの言う無能ってユウナのことですか~?よし、お前を死罪に処してやる!(冗談のつもり)」

「私を処刑する…。つまり、『コントーレル』一同を敵に回すってことでいいんだな?」

「あんな3年前の戦争で幹部クラスが死んだ程度で衰退したようなアサシン教団にはソロでも絶対負けませんよ?何て言ったって、私はあのフェリシエラ・ヘルダーだからね」

「…は?お前、生きてたのかよ!?心配させやがって!」

「まさか、メノカ・イチノミヤ!?うわぁ…」

「うわぁ…。って何だよ!!友達みたいなモンだっただろ?」

「もともとそんなモンじゃなかったし。それに、今は敵だね。ユウナを無能呼ばわりしたことは謝ってもらうよ」

「無能は無能だ。そうか、『コントーレル』全員とり合って無様に死ぬといいさ」


こうして、新たな宿命が私には課された。


続く

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