【リメイク版】第6話 明かされる正体、生まれた理由

新たな仲間―—ラータ君の仲間が起こした『計画』の阻止に協力した私たちは事情聴取を終え、本拠地である地下シェルターに戻っていた。


「もしかしてだけどレゼ子、今までその錬金術とやらで武器作ってたの?」

「まぁ、そうッス。隠しててゴメンッス、ホントに」

「いやいや、いいよ。それってつまり、ある程度の代償があれば最終兵器みたいなのも作れるワケでしょ?ドッカーンってなるようなスッゴイのが」

「作れなくはないッス。アタシ、人間とエルフのハーフなので寿命は190年くらいはあると思うッス。アタシが錬金術の代償にするのは寿命ッスから、多分そういうときは問題ないと…」

「え!?エルフと人間のハーフって言った!?それって、精霊が召喚できるってこと!?」

「できるッスけど、錬金術を使うエルフは精霊にけむたがられるッスからちょっと難しいと思うッス」

「あ、そうだ。私、12歳からの記憶――あの戦場で戦うようになる前の記憶が無いんだけど、私の過去について知れるような装置を作ってほしいんだけど、いい?」

「ちょっと違うけど、それっぽいヤツはもう作ってあるッスよ。ほら、このタブレット端末ッス。こをれ使えば親と生まれた時のことが分かるッス。あ、これアタシの自作だから口外はタブーッスよ」

「これ?」

「下の円のところに血を垂らしてみるッス。そうすれば分かるはずッス」


言われた通り、そこに血を垂らしてみると…。


そこは、配線や複雑そうな機械がたくさんあるいかにも研究所っていう感じの部屋。

何人かの少女が機械から出ている配線で体中を繋がれ、未完成と思われるところからは古代のゴーレムの部品に似ても似つかないものが…。


「これを完成させれば、この今を変えることができる…。現代いまの、そして過去の、そして未来の平和を実現する為に…」


男はそう言いながら機械を操作していた。


「これってまさか…」

「そう、これが過去のシエラちゃんッス」

「待って!?どう考えても過去にこんな文明があるのはおかしくない!?」

「確かにそうッス。81年生きてきてそんな話は聞いたことがないッス。と、するなら…、未来ッスか!?」

「え!?その見た目で実年齢81!?それより、いくら私が人間離れした力を使えたり体が自己修復するからってそれはないんじゃ…」


『ご名答だ、【真の錬金術師(フ(発音))ラー・アルシミスト】』

「だ、誰ッス!?どこから話しかけてきてるッスか!?姿を現すッス!」

『私はフェリシエラの右手人差し指の第2関節から話している』

「えええ!?な、名乗るッス!」

『私はジーニル・リーベンスウェートァ、フェリシエラ、いや、クロガネの開発者だ』

「開発者…?一体何の冗談を?」

『私はあなたが後世こうせいに残したやり方を真似たおかげでうまく生み出すことができたのだ、レゼルヴ氏。感謝する』

「それってまさか…」

くろがねはそちらから考えて80年後のホムンクルスなのだ』


その言葉を聞いた時、目から何かが流れた。でも、それは涙じゃ…ないの?


「私が…、未来のホムンクルス…?」

『そうだ。お前は未来の平和を守る為、そちらから考えて5年前に発生した恐怖の大戦キリング・デス・テレヴォース、終戦3年と半年後に起こる終焉戦争キリング・ヴィィエンデンの勝者となり、こちら、80年後の平和を取り戻してもらう為に生み出した』

「それって…、私の平和を願う気持ちは…、ぷ、ぷろぐらむという、ものなんですか?」

『その可能性もある。しかし、お前は特別な存在だ』

「…!?…どういう、ことですか?」

『お前はプログラムのミスで感情が生まれた。他の感情が生まれなかったホムンクルスはみな死んだ。それに、お前は仲間を作っている』

「…ほ、ホムンクルスが仲間を作ることは、異常なことなんですか?」

『いや、そういう訳でもない。だが、そうやって仲間を作ろことはプログラミングしていない。つまり、それはお前の意志だ』

「私の…、意志…?」

『まぁ、健闘を祈る。お前の望む平和が叶えば、きっとそれがゴールだ』

「それが、私のゴール…」


そして、通話は途切れた。私は一体…何者?


「もしかしてシエラ、自分の正体が分からない?」

「…うん、分からないよ…。私は、一体何の為に生み出されたの…?平和にして何がしたいの…?」


また、涙ではない何かが、目からとめどなく溢れた。この、心の曇りは何だろう。この、感情は何だろう?そして…、これは感情なのか。そんなことさえ、思っていた。いや、ただのプログラムか…。


「アタシ、シエラちゃんが自分の技術で生まれたって知ったからって今まで通りッスよ」

「僕、シエラさんの笑った顔が一番大好きです。それに、あの人はシエラさんを利用したいとは思っていないはずですし、彼が僕たちとシエラさんを出会わせてくれたんですよ。だから、顔を上げてください。たとえ、まだ笑えなくても」

「シエラ、自分を見失わないで!シエラはシエラだから。自分を信じて生きていけばいいし、私の大好きなシエラなら、きっとそうするから」


そんな言葉をかけられ、今度はまた別の何かが自分の中で溢れたような気がした。それは、嬉しさか、喜びか、悲しみか。きっと、誰にも分からない【奇跡】、だ。


「シエラ、そう泣くことですか。そろそろしっかりしてください」


そう言ったユウナの唇が、私の唇に触れた。


「昼のお返しです。これでおあいこですから」

「そんなに私が必要なの…?しょうがない、終焉戦争キリング・ヴィィエンデンとやらが何かは知らないけど大金星あげて博士のものじゃない、私の、私たちの平和を手に入れてみせよう!」


すっかりいつも通りになったようなシエラは、沈む夕日に向かってそう叫んだ。それがたとえ虚勢だとしても、私はずっと、シエラとともにある。平和を手に入れるまで。


続く

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