　戦況は一進一退をつづけてゆく。

　ハンナばあさんを搭乗させた装甲車も造次顛（てん）沛（ぱい）もなく到着しアメリカ陸軍の天使軍団は肥大化してゆく。これがアメリカの力なんだわ。これが神の御（み）稜（い）威（つ）なんだわ。ハンナばあさんたちの装甲車は北側の防衛塔を攻略して城塞の大モスクへと侵攻する予定だったが爾（じ）時（じ）南側の防衛塔附近の装甲車から無線連絡があった。いわく「此（こ）方（ちら）南側防衛塔の攻撃要因を殲（せん）滅（めつ）完了。これより堡（ほう）塁（るい）を登（とう）攀（はん）しアイユーブ朝の宮殿内を攻略する」と。連絡のとどいた装甲車のなかでハンナばあさんは欣（きん）喜（き）雀（じやく）躍（やく）する。いわく「矢（や）張（は）り基（き）督（りすと）教（きよう）は勝つのよ。邪悪なる異教徒は負けるのよ」と。といえども対（たい）蹠（しよ）的（てき）に北側の攻防戦は難局におちいり防衛塔からの一斉掃射や狙撃およびロケット砲での攻撃で天使たちは墜落してゆく。爾（じ）時（じ）さらに南側の装甲車から無線連絡が這（は）入（い）った。いわく「此（こ）方（ちら）アイユーブ朝の宮殿前。敵対要因は数十発の劣化ウラン弾を使用した様子。此（こ）方（ちら）側装甲車二輌（りよう）が潰滅。死者十名を越える模様」と。