第27話 新たなゲーム

 俺様は教室にはいると、みんな身構える。

 その後ろから九条がついてくる。

 俺様は用意された席につくとスマホをいじり始める。

「あー。龍彦くんってばみんなに挨拶しなきゃ」

「あん?」

「「「龍彦!!??」」」

 九条がそう呼ぶのに驚きを隠せない同級生たち。

 もしかして下の名前で呼んだからか? それとも……。

「あのー。お二人は付き合っているのですか?」

 ピンク色のおさげの子が怖ず怖ずと訊ねてくる。

「はい」「ちげーよ」

 九条と俺様の声が重なる。

(((どっちなんだ……)))

 ここにいる全員が同じ疑問を浮かべていた。

「もう、龍彦くんは素直じゃないんだから」

「は、バカも休み休み言え。てめーに惚れる要素なんて――」

 俺様を庇った瞬間の記憶が蘇る。

「――あるわけないだろ?」

「なんだか、妙な間が生まれたような気もするけど?」

「は。ほざいてろ」

 しかし、伊里奈は無事なのだろうか。

 今頃、いじめられていないだろうか。

「ほら。お前たち、席につけ」

 担任の先生がやってきて、その後ろについてくる一人の生徒。

 銀髪ハーフツインの髪を揺らす。

「新しい転入生だ。ニーナ=プロシン」

「ニーナ=プロシンです。よろしくね♡」

 パチリとウインクをするとクラスにいる全員が大盛り上がり。

「か、彼氏とかいるの?」「おれっちと仲良くならない?」「今夜は僕がエスコートするよ」

 いきなり初対面で失礼なことをかます連中がいた。

「あ。いた! 未来の旦那様!」

 そう言ってニーナは俺様のもとに駆け寄ってくる。

「龍彦のために転校してきたんだよ♡」

「おい。キャラ変わってねーか?」

 俺様は苦笑いを浮かべながら九条に助けを求める。

「彼女じゃないんで知りません」

 つーんとしている九条。

 こうなれば自力で抜け出すしかない。

「てめーに用はねーよ」

「ぐすん。いつもそんなんだったね♡」

 少し興奮している様子でニーナは泣き笑いを浮かべる。

「え。こ、こいつ正気か?」

「そんな龍彦も好き♡」

 いやいや、デレ方がおかしいだろ。

 俺様は何もしていないんだぞ?

「やだ。感じちゃう♡」

「きめー」

 苦笑いを浮かべて俺様はスマホに興じる。

 ちなみにスマホゲームで、《味噌味噌体験談》という味噌を集めていくゲームだ。

 いやどこら辺が体験談なのか、分からないが。

「ゲームやっているから、後にしてくれ」

「さすが〝青の騎士団〟」

「「「青の騎士団!!」」」

 ゲーマーが多いこのクラスで〝青の騎士団〟は目立つ。

 ちなみに騎士となっているが、俺様と伊里奈が手足を使って六キャラを扱っていたからに他ならない。

「もう、いいか?」

 担任の先生が教卓前に真顔でめつけてくる。

「「「は、はいぃぃぃぃいいい!」」」

 訓練された連中は賢い。

「それから相羽」

 俺様は眉根をピクリと上げる。

「ゲームはほどほどにな。これからもゲームの勉強をするわけだが……」

「へいへい」

 俺様はそう言い、先生の威圧に負けてスマホをポケットにいれる。

「賢いな。ここでの抵抗になんの意味もないと理解したわけか」

 ニーナは先生に勧められた席に向かって歩いていく。

 そこはちょうど、俺様の後ろの席。

 何やら危険を感じるが、大丈夫か?

 自衛のために柔道くらいはできるが、体力がないから一発で決める必要がある。

 後ろから荒い息づかいが聞こえてくるが、俺様は無事この高校生活を送れるのか?

 ドキドキと不安でいっぱいな高校生活が今、始まった。

 今までのニート生活とは違う。

 何か、生き生きしたような気持ちになる。

「さて。午後の授業だが、面白いものが見られそうだな。相羽、プロシン」

 午後になり、校庭に集まる。

「さあ、鬼ごっこを始めよう――!」

 先生の一言で俺様の意思が変わった。

 この学校は遊戯ゲームで評価を下す――実力主義の教室だった。

「へへん。ニーナさんには負けないからね」

「そういう九条さんにも、負けないよ♡」

 なんだか。ここで別のバトルが始まっているような気もするが気にしてはいけない。


◇◆◇


「伊里奈ちゃん、一緒にあそぼ?」

「はい。なのです……」

 ローテンションなわたしに話しかけてくる人がいるなんて。

 でもこれでも友達作りは大切と聞く。

 自分の気持ちを抑えて遊ぼう。

 胸の辺りがムカムカするけど、これは人見知りなせいだ。

 ちゃんと話してみればいい子かもしれない。

「じゃあ、カラオケにいこ?」

鈴木すずきさん。カラオケ好きなのです……?」

「うん! 大好き!」

「で、でもカラオケ、行ったことないです……」

「大丈夫大丈夫、アタシがついているから。どんと任せない!」

 鈴木さんは頼もしそうに自分の胸を叩く。

「な、なら……」

 わたしは押し切られる形で行動を共にするのです。


 学校帰りにカラオケに入り、みんな熱唱する。

 皆さんの実力がすごくて、わたしには難しいです。

 でも、歌わないと。

 アニソンの有名どころを歌い出すと、周りが盛り上げてくれる。

 なんだか、楽しいかも。

 わたし、ゲーム以外でこんなに楽しいの初めてかも。

 それに友達がいる。

 わたしを好きでいてくれる友達が。

 あまり意識していないけど、わたしは頭が良いらしい。

 それが人々の不安をかき立てることもある。

 そしてそれは人との隔絶を意味する。

 わたしに親しい友達はできなかった。

 でも今は違う。

 九条さんのような子もいて、わたしのことを素直に褒めてくれる人もいる。

 それを知ったから、わたしはこうしてカラオケに来ている。

 お兄様、わたし、友達ができました、よ……。


 ◇◆◇


 デスゲームのリスト。

 その中に相羽龍彦と、相羽伊里奈の文字が載っている。

 それは次のゲームの始まりを告げる。

 人生のすべてを変えてしまうデスゲーム。

 そんな恐怖がチーム編成を変えて、また争う。

 前回の戦いで起きたイレギュラーを審査してさらなるゲーム向上に向けて動きだしている。

 この国のトップが裏で回している。

 AI先進国になるために――。

 そのために生きた人間の思考をトレースする。

 やはり、外道に見える相羽龍彦と、可愛らしい相羽伊里奈は最高の情報源になる。

「さぁ。ゲームの時間だ――」



                         fin

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外道な俺様が可愛い妹と一緒にデスゲームする 夕日ゆうや @PT03wing

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