第10話  アリシア・ロイル

 それから10年は、あっという間であった。

 リカルドは、大人しいというより、魔法に対して免疫のないアリシアに対して、忠実に命令に従った。

 流石に、父親がAランクだけあって魔法の力は、潜在能力があったようだ。

 五年後に古代レトア語を大完全マスターしたアリシアは、大地の精霊とも契約した。


 だが、第一精霊の頭上の位置は、リカルドで譲らずにいた。

 大地の精霊、キキは中位だったがプライドが高く、女同士で結託しようとアリシアに話を持ち掛けてきたが、アリシアに断られリカルドに地面に吹き飛ばされて、諦めたのだ。


 三匹の精霊を連れた見習いのアリシアは、教授の課題を悉くクリア。

 試験に至っては、歴史、呪文はリカルドが教えてくれ、古代レトア語の足りない部分は、キキがそっと教えてくれた。


 25歳になって、卒業の年になった。

 25歳の終わりの月までに卒業試験を受けて、ランクを決められる。

 アリシアは、ギリギリまで試験を受けなかった。

 少しでも失敗すれば、そこでランクを決められてしまう。

 こちらから、勤務地を志望をするなら、ある程度試験の結果が良くないといけないだろう。


『リカルド、キキ、レンドル。テストでは思い切りやるわよ!!』


 アリシアは、試験の日を来月が26歳の誕生日という日に設定した。

 その日まで、教授たちの前でやる魔法の披露を考えていたのだ。


 レフは三年前に、学び舎を卒業してアルテアへ留学をしている。

 ジェドは、早々に光の神殿への勤めが決まった。



 ♦


「アリシア・エメット、ここにSSSランクの証、ロイル姓を授与します。

 この姓に恥じぬ行いをして、頑張ってください」


 ミルドランおさが、光の神殿でアリシアに銀の外套と共に、アリシアの新しい身分証をくれた。


「はい!! ロイルのおさ。必ず!!」


「三賢人会議では、光の神殿所属だったけど、君は、デュール谷赴任を希望したんだってね!? 皆、神殿所属になりたいのに」


「約束ですから」


 アリシアは、元気よく答えた。


 そして、その日の内にデュール谷へと旅立ったのだった。

 レフは、今日留学を終えて帰って来るという。

 アリシアの家も用意されていたが、谷長の館では、ちょっとした歓迎会をしてくれた。


 酒には強いと聞いていたレフが酔っていた。

 アンドリューがアリシアに寄って来て、指輪を渡した。


「何、これ?」


「懐妊リング。お兄様は、正攻法では落ちないよ。だ、か、ら、ね!?」


 アンドリューは綺麗な顔で、片目を閉じた。

 10年前より男前になっていた。


 アリシアは、アンドリューの言う通りにレフの部屋に忍び込んで行った。


『リカルド、キキ、レンドル、目を閉じててよ。恥ずかしいことするんだから』


 そうして、ぐすっり眠っているレフの服を脱がしてしまった。


 後は、本能のまま行動した。


 次の日、レフの雄叫びで目覚めたアリシアであった。


「お前……本当にロイル姓を貰ってたのか?」


「うん、約束でしょ。よろしくね」


「人を食べてから言うな!!」


 アリシアの妊娠が分かったのは、これから二か月後のことである。



(完)


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アリシア奮闘記 ~恋は魔法を無双する!?~ 円香 @erisax

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