第8話  風の精霊、リカルド

 銀の森の学び舎に帰ってきたアリシアは、早速精霊が多く集っているという、森の奥へ行ってみた。


(ウン、ウン、精霊が見えるようになってるわ)


『ねぇ、レンドル。これは、あなたのおかげなの?』


 <せやな。ワイが、お前さんの魔力をちょっとだけ押し上げてるねん>


『ちょっとだけ?』


 <それにしても、あんさん、レトア語下手やなあ!!ボー読みや~>


 精霊に馬鹿にされているアリシアである。

 でも、気にしないアリシアであった。

 何せ、自分とは、無縁だと思っていた精霊と契約が出来たのだ。

 これを足がかりにすれば良い。

 アンドリューは、そう言った。


 水の精霊の口が悪いことくらい、へのかっぱであった。


 それで精霊が見えるようになったので、上位の精霊を探しに来たのだ。


 大きな古木の上で、何やら二匹の精霊がやり取りをしていた。

 寝床をどうとか?精霊にも縄張りがあるんだろうか?


 熟年の女性と若い男の精霊のようだった。


 <あなたは、わたくしの寝床が余程お好きなのですね?>


 <誤解だ~!! 奥方、気が付いたら此処にいたんだよ~!!>


 <早く、契約者を決めて出ていきなさい!>


 何か、若い方の精霊が熟女の奥方に一方的に怒られている。


 そこで、アリシアが出ていって、契約者になることを立候補した。


 <お前、誰だ~?>


『アリシア・エメットよ。あなたは、風の精霊さん?よその精霊のお家に居候してるなら、私と契約して、上位を目指そうよ』


 <俺は、これでも上位だよ。お前、ホントに魔法使いか!?古代レトア語がかなり危ないぜ>


『わたしは、まだ、見習いだもの。後、10年修行して一人前になるの。力を貸して欲しいわ』


 若い男の精霊は悩んでいた。

 見たところ、まだ学生だ。

 だけど……

 お転婆、跳ねっ返りの契約者は、前例がある。もう、御免だった。

 リカルドは、アリシアを舐めるように、観察した。

 容姿は可愛く、性格もあくまで普通に見えた。


 《奥方の寝床にこれ以上、居候はできねぇし、そろそろ潮時かな……》とリカルドは考えた。

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