第7話  精霊の生まれる地

「此処は、精霊の生まれる地としても有名だよ。アリシア」


 アリシアは、辺りを見渡す。何も見えない。

 普通の、景色の良い村の様子だ。


「何処にいるの?」


 という、アリシアにアンドリューは、笑って言った。


「属性は何が良いの!?風? 水? 大地? 火……は難しいから……そうだね!! 水なんてどう?この神殿の裏の泉には、沢山の精霊がいるよ」


「この建物神殿だったの!?」


「これでも、デュール谷の中心だよ。裏には治療院も併設してるよ」


 アンドリューは、人好きのする笑顔でアリシアの手を引っ張って、泉の所まで連れて来た。

 そして泉に向かって挨拶していた。


「やぁ、おはよう!! 水のお嬢さんたち」


 アンドリューの言葉に、泉の水がきらめいた……感じがした。

 アリシアの目には、何も映ってこない。


「挨拶したら!? アリシアの周りに沢山の水の精霊が来てるのに」


「古代レトア語でもないのに、どうして精霊と話が出来るの?あなた……」


 アリシアは、不思議そうにアンドリューを見た。

 アンドリューは、微笑んで言った。


「それは知らないけど、僕は、精霊に好かれる質なんだって。アリシア、精霊が見えないの!?こんなに沢山いるのに~」


「えと、この泉は、他と違って良くキラキラしてると思うわよ」


「そう思えるなら、才能あるかもだよ。最初の子は僕が契約してあげる。

 その子を手掛かりに、腕を磨いていけば良いよ」


 そう言うと、アンドリューは、靴を脱いで、ズボンのすそを膝の高さくらいに折り上げて、泉の中へ入って行った。

 泉の浅瀬で水をすくって独り言を言っている。


 やがて戻って来て言った。


「彼が、契約してくれるってさ。まだ生まれて間もないけど、上位に行ける可能性はある奴だよ。」


 何時用意したのかアンドリューは、木の器に水を汲んでいた。


「彼女が、アリシア・エメットだよ。レンドル、彼女のことをお願いしたよ」


 <了解>


 何処からか、声が聞こえてアリシアは、少し自分に力が上がったことを感じることが出来た。


 その日は、谷長のアンドリューの家に泊まらせてもらった。

 興奮気味に、レンドルと契約して以降、少しずつこの谷の風の精霊が挨拶している様子や、レンドルの姿が見えてきていることを、谷長の家族の前で話した。

 アンドリュー以外は、興味も無いという態度であったが。


 帰る時にアリシアは、アンドリューに聞いてみた。


「どうして、こんなに良くしてくれるの?」


「お兄様が、好きなんでしょう」


 赤くなるアリシア。


「なっ!!」


「正直だね。アリシアは。お兄様のことが好きでも、ここまで来た人はいないよ。だから、協力してあげたくなっただけ。後は、頑張ってね」


 そう言うとアンドリューは、魔法陣まで送ってくれた。 

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