第6話  デュール谷のアンドリュー

魔法学の専攻が始まった。

精霊と契約する実習もあった。

銀の森の奥には、上位の精霊も沢山いると言われていた。


何人かの子はそこで、実習中に契約をする子もいた。

専攻の授業が始まってアリシアは、レフもジェドもいないことに気が付いた。


「ジェドは個人レッスン、レフは2学年スキップだよ。」


クラス委員のクリフが言った。


古代レトア語は、ニナのノートと猛特訓の成果が出て、クラスで中位の成績まで上達してきた。


そんな時アリシアは、ふとレフの言ったことを思い出した。


(ロイル姓が貰えたら、俺の故郷を任務地として選べ)


そう言ったのだ。


(レフの故郷って何処なの?)


と思っていたら、ニナが教えてくれた。

ジェドに恋するあまり、彼の周りのことは全て知りたくなって調べたらしい。


「レフは、デュール谷の谷長の次男よ。デュール谷は、ここから北の位置にあるわ。

魔法陣があるから、ひとっ飛びよ!!アリシア、レフの故郷に興味があるの!?」


「いえ……あの人、火竜の精なんか頭に乗っけてるでしょ?どんなところの生まれか気になって……」


「ふ~ん?」


ニナはニタニタと笑っていた。

何か悟られたかもしれない。


「手続きは私がしといてあげるから、アリシアは寝なさい。」


無理やりベッドに押し込められてしまった。


次の日___



アリシアは、課外授業と称してデュール谷へ向かったのである。

学び舎の魔法陣は揺れるので嫌いであったが、一瞬なので我慢した。

一瞬の目眩と耳鳴り、それが治まって目を開けると銀の森とは違った別天地が待っていた。


空が真っ青なのだ。

空気も良く、心地の良い風が吹いていた。

花も草木も色とりどりで、この土地の豊かさを表していた。


「わぁ~!!夢の国みたい!!」


<ありがとう、銀の森の学生さん>


何処かから声がした。


キョロキョロと見渡したけど、誰もいない。

しばし、呆然とするアリシアであった。

少しすると、金髪と空色の瞳の少年がアリシアの方へ向かって歩いて来た。


「お姉さんが銀の森の人!?昨日学生が一人来るって連絡があったんだけど。僕は、谷長の三男のアンドリューだよ。お姉さんは?」


「アリシア・エメットよ。レフの弟さんなの!?」


「そうだよ、お兄様は、僕が小さい頃に学び舎に入ってあまり会ってないけど、仲は悪くないと思ってるよ」


「あの、無愛想レフと仲が良いの!?」


「お兄様は、感情を出すのが人より苦手なだけだよ。それより、ここへは何しに来たの!?課外授業の申請が出てたよ。精霊でも探しに来たの?」


アンドリューの言葉にアリシアは、唖然とした。

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