第5話  やる気になったアリシア

 レフは、本気ではないだろう。

 だが、アリシアは本気になってしまった。

 よし!!必ずSSSランクになって、ロイル姓を貰うのだ。


 ♦️


 アリシアには、精霊を見る力は無い。

 だが、レフの頭上の火竜の精がいることは、知っていた。

 火竜の精は、火竜の分身みたいなものだ。火の精霊とは違う。断然に火の魔力が強いのだ。そして、この火竜の精こそがレフの魔法の源であることも。


 レフの頭上に火竜がいることは有名で、これが彼が皆から遠巻きにされる誘因にもなっている。

 そして、高位の火竜の精だからこそ、アリシアの目でも見ることが可能だった訳だ。


(……とすれば、私も上位の精霊と契約して、トップの成績を狙えば良いんだわ)


 何とも、短絡的な発想である。


 此処は、この世界の聖地だ。精霊はウジャウジャ居る筈なのに、アリシアは一匹たりと見たことは無い。

 魔法学専攻の中には、既に自分の精霊を持っている子が何人かいた。

 だが、いずれも下位である。

 これから十年、共に修行をして精霊も自分も魔力が上がって行くのである。


 精霊の見えないアリシアには、下位の精霊さえ見つけることが出来ないのである。


 同室のニナには、下位の大地の精霊と契約していた。

 魔法学専攻にあぶれたニナは、この力を使って治療師の勉強していくことになる。


「ニナは、どうやって精霊と契約したの?」


「私は、親が子供の頃に契約してくれたのよ。ある程度力があれば、魔法使いは自分の子供に守護の精霊をつけてあげるものよ。逆に、アリシアのお父さんは、Aランク魔法使いなのにアリシアに何も教育させてないとか!! 信じられないわよ」


 ニナは呆れ顔で言う。

 アリシアは、フッと溜息をついた。


「父さんは、自分磨きで精一杯で家族には見向きもしないのよ。ねぇ、ニナ。精霊との契約ってどうやってするの?」


 椅子から転げ落ちたニナ。


「まず、精霊が見えなきゃ駄目よ! とにかく、精霊を見つけなさい!そうしたら、名前を言うの。愛称じゃ駄目よ。精霊も名前を教えてくれたら、契約完了よ」


「フ~ン……可笑しいわね~ 私には、精霊なんて見えないのよ~」


「それより、古代レトア語を何とかしないと!! 私のノートで良いなら貸すから」


「嬉し~ニナ。有難う~~私は、SSSランクの魔法使いになって卒業するわ!」


「何があったの!?アリシア?」


 アリシアは、口をつぐんだ。

 まさか、ロイル姓になったら、レフがプロポーズしてくれるとは言えない。

 ニナは、優秀な魔法使い候補のジェドに告白して、玉砕して魔法学の専攻からも外れたのだ。

 そのことは、本人が望んで行ったことなので、治療師になることは、ニナも受け入れていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る