第4話  突然のプロポーズ

 ジェドに告白して、玉砕したニナの成績は、だだ下がりであった。

 魔法学専攻が決まりかけていたのに、アリシアよりも下がってしまった。

 それで、運よくというか、人数の関係でアリシアの魔法学への専攻が許されたのだ。

 これにも教授たちは、大変に頭を悩ました。

 なんとか、ニナ・フランカを魔法学の専攻に残し、アリシア・エメットを職にあぶれることのない治療師に仕立て上げようとしていたのだ。

 神殿公認ならば、何処でだってやっていける。

 が、アリシアの父のアンスニィがこの好機会を見逃すはずもなく。

 アリシアの意見も聞かずに、魔法学専攻コースへ捻じ込んできたのである。


 代わりにニナが、治療師見習いとなった。

 アリシアは、やるせない思いでいっぱいになった。

 そして、ジェドにフツフツと怒りが込み上がって来て、何か言ってやらないと気が済まなくなっていた。


 ジェドは、大抵中庭の池の所で、親友のレフといることが多い。

 との、学校中の噂だ。

 二人とも、成績優秀で上級生にも目を付けられているとかで、あまり二人に近付く者もいないらしい。


 今日は、レフ一人だった。

 顔の痣が増えている。


 薄茶色の髪が、もう少しで目に入りそうだというのに邪魔じゃないのか……。

 と考えていたら、古書に目を落としていたレフが顔を上げ、茶水晶の瞳をこちらに向けてきた。


「何か用か?」


「うん、ジェドは?」


「あいつに何の用なんだ?」


 レフは、苛立たし気にアリシアを見つめてきた。


「ニナに謝って欲しいの!あの子、ずっと泣いてるのよ!」


「ニナに言われてきたのか?」


「ここに来たのは、私の意志よ」


「悪いがあいつは、ああいう奴だ。興味の無いものには、全く興味を示さないし、あいつは今、大事な時なんだ。これ以上あいつに構うなら、俺が許さないと伝えてくれ」


「でも、ニナは魔法学の専攻から外れたわ。それで私が魔法学専攻に入れても嬉しくないの」


「ジェドには、関係ない話だな。……レトア語が壊滅的なお前が魔法学専攻だって?」


 レフは、口の端で笑った。

 アリシアは、それを見逃さなかった。


「そうだな……Dランクの下級位にはなれるんじゃないか?まだ、卒業までには十年もあるからな」


 アリシアは、レフの言葉にカチンときた。


「言ったわね!!そんなもんじゃないわよ! 絶対ぜ~ったい! ロイル姓を貰うわ! そうしたら、ジェドに謝ってもらうわよ!」


 レフは吹き出した。


「有り得ない約束はするものじゃないぞ。DランクにはDランクの仕事があるそうじゃいか」


「Dランクって決めつけないでよ!! 私が卒業の時にSSSランク貰ってたらどうするの!」


 レフは、有り得ない結果として、こう言った。


「俺の就職先は、故郷のデュール谷だと決まっている。もし、ロイル姓が貰えたら、勤務先をデュール谷にしろ。俺がお前を貰ってやるよ」


 アリシアは、突然のプロポ-ズに固まった。

 レフは、冗談で言ったので、アリシアの反応に大変に満足していた。


 夕餉を知らせる金の音が鳴った。


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