第7話 世界ランク1位から電話

「栄光の翼は選ばれた探索者しか入れないんだよ。まさかお兄ちゃんが招待されるなんて信じられない……」


俺も信じられない。

俺は今日、初めてダンジョンに入った。

探索者ランクは最低のFランク。

スキルはファイアボール(極小)だ。

使えないクソスキル。

……探索者として底辺な俺に、どうしてSランク探索者たちが興味を持つ?


「で、お兄ちゃんはなんて返事するの?」

「無視するよ。イタズラだ」

「そーだよね」


今、俺たちはバズりまくっている。

開設した「ダンスレ兄貴」のチャンネルは、たった10時間で登録者数は20万人を超えている。

俺たちを利用して、稼ごうという奴に違いない。


◇◇◇


「ふぁー!やっと地上だ!」


俺たちはダンジョンから地上へ帰ってきた。

奏が俺の周りを飛び回る。

俺はゲッソリとしていた。


「もおー!お兄ちゃんグロッキーすぎ!そんなじゃ探索者やっていけないよ?」

「ゴブリンと10時間ぶっ通しで戦いながら配信もしていたんだぞ?激務すぎるだろ」


トータルで、1日12時間以上は働いたことになる。


「探索者は個人事業主だから『残業』という概念はありません!」


ピッと、奏は指を立てる。

探索者に労働基準法は適用されない。

新しい職業の探索者は、あらゆる法律の埒外だ。

政府も規制が追いついていないらしい。


「ブラックすぎるな」

「でも、楽しかったでしょ?」

「ああ。楽しかった」


ダンジョンに潜って、自分の力で稼ぐ。

サラリーマンでは味わえない、圧倒的達成感だ。

探索者にハマる奴の気持ちがわかる。


——プルルルル!


電話が鳴った。


スマホの画面に、知らない番号が表示されている。

いったい誰だろう?

もしかして会社の人かな?


「もしもし。蔵田≪くらた≫です」

「ソータ・クラタの携帯で間違いないな?」


若い女の子の声だ。

アニメ声優みたいなかわいい声。


「そうですが」

「ソータ。どうして私のDMを無視した?ソータは私のパーティに必要な人材だ」

「すみません。どちら様ですか?」

「アルウィン・ウェブスターだ」

「え?」


世界探索者ランキング1位の人間。

そんなすごい奴が俺に電話……?




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