第6話 スパチャがガッポガッポ

「スパチャが……100万」

「お兄ちゃん。あたし、もう死にそう」


俺は我が目を疑った。

某巨大掲示板の元管理人じゃあるまいし、こんなに課金されるわけない……


「何かの間違いだよな?」

「ううん。たしかに0が6つある……」


1000000円をたった15分の配信で稼いだ。


≪兄貴とコラボして!≫

≪ダンスレちゃんの兄貴、顔出し希望≫

≪兄貴イケメンだったらどうしよう≫


ダンスレのTwitterに、兄貴とコラボ希望のDMが大量に届いていた。


「お兄ちゃんもダンチューバーやろうよ!今やればめっちゃくちゃバズるって!」


奏は大はしゃぎだ。


「いや、俺みたいな陰キャが動画に出てもなあ……」

「どうせ会社クビになったんでしょ?今のお兄ちゃんには失うものないじゃん。無敵の人だよ」


無敵の人。

今の俺には何もない。まさに持たざる者だ。


「今、あたしたちはバズってるの。この奇跡に乗れないと、一生後悔すると思う」

「……わかった。俺もダンチューバーやるよ」

「さすがお兄ちゃん!スマホ貸して。あたしがアカウント作ってあげる♡」


奏は俺のスマホを引ったくって、すごい勢いでタップしまくる。


「おいおい。そんな強くしたら壊れるだろ」

「はい!お兄ちゃんのアカウントできたよ。名前はダンスレ兄貴(仮)にしといたから」


なんだよ。(仮)って。

つーか、アカウント作るの早すぎる。


「よし!さっそくコラボ始めるぞー!」

「ちょっと待って——」

「ざぁこども!今日のダンスレちゃんは兄貴とコラボしちゃうぞー!」


◇◇◇


それから俺たちは、ダンジョンで10時間もぶっ通しで配信した。


1Fから5Fまで進んで、ゴブリンやらオークやらフェンリルやらを倒しまくった。


チャンネル登録者数は500万人を突破し、Twitterのフォロワー数は100万人に増えた。


スパチャは凄まじい額になり、一夜にして6300万円も稼いだ。


「奏……そろそろ帰ろう」

「えー⁉︎まだまだ配信しようよ!」

「もう体力が限界だ」

「もおー!ヘタレ兄貴め!」


俺はふらふらになりながらダンジョンの出口まで歩く。


——ピコン!


あ、ダンス兄貴のTwitterアカウントにDMが来ている。

……discordの招待だ。


「……オンラインサロン≪栄光の翼≫にあなたを招待しますって、何だこれ?アルウィン・ウェブスターって奴から来てるが」

「お、お兄ちゃん……嘘でしょ?」


奏がぶるぶる震えていた。


「どうした?」

「栄光の翼は、Sランク探索者しか入れないオンラインサロンだよ。あと、アルウィン・ウェブスターは、世界探索者ランキング1位の人……」

「……マジで?」



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