第3話 ダンジョン配信part1

「銅の剣と皮の鎧で……50万円になります」

「ご、50万……!」


俺はギルドにある装備屋で、武器と防具を買おうとした。

だが思ったより高い……!


「お兄ちゃん……お金ないの?」

「今すぐに50万円はな……」

「わかった。ここはあたしが払っておくね」


奏はクレジットカードを出した。


「すまん」

「いいよ。ダンジョン配信手伝ってくれるし」


まだ社会人1年目の女の子が、50万をポンと出せるなんて……

探索者はよほど儲かるんだろう。

俺も探索者になれたらなあ……


◇◇◇


ギルドの地下にあるゲートから、俺と奏はダンジョンに入った。

現在、1F。

何かがうめく声。

かすかに血の匂いもする……


「お兄ちゃん……大丈夫?」


奏は俺の手を握った。

昔は、俺が一人でトイレに行けない奏の手を握っていたのに。

今は立場が完全に逆転している。


他に探索者はいない。

もっと深層に潜っているようだ。


「そーだなあ。今日はここで配信しよう」

「OK。準備する」


俺はスマホとPCをセットする。


「今日はどんな動画を撮るんだ?」

「初心者向けの攻略動画。スライムの倒し方をやる」


スライムって……ファンタジーに出てくる最弱モンスターだよな?


「ここでレベルを5にして、次の階層に行けば楽だから。あと、スライムがドロップする銅の剣を売って、皮の鎧を買れば序盤が安定するの」

「なるほど……」

「Twitterで告知しよ!」


奏のアカウント「ダンジョン・スレイヤー」はフォロワー2万人を超えている。

さらに、ダンジョンユーチューバー、通称「ダンチューバー」のほうのチャンネルは、登録者数は1万人いた。


「まだまだ底辺ダンチューバーね。もっともっと伸ばしたいなあ」


俺からすれば1万人も自分の動画を見てくれる人がいるのはすごいと思うが、ダンチューバー的には「底辺」らしい。


告知をした直後、すぐにTwitterで反応がきた。


《ダンスレの更新キタ!》

《ワクテカ》

《ダンスレちゃんの声聞きたい》


ファンがちゃんといるんだな……

奏の配信を楽しみに待っている人がいるんだ。


――にゅるん!


「あれが……スライム!」


初めて見た。

青い流線形のプヨプヨしたボディ。


「お兄ちゃん!カメラお願い!」

「お、おう……」


俺はスマホをカメラをオンにする。


「ほら!そこにセットして!」

「わ、わかった」


よおし!しっかり撮るぞ!


――この後、まさか放送事故があるなんて……







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