第28話

 だんだん雑になってきている。なぜなら紙や布、のり、粘土、針金など、使えるものは全て使って伝えてきた。木材の加工は立ち会った大工さんがやってくれたし。それに。

 どうぞ。

 あれから私は林檎以外にも不思議な異世界からほのぼのとした、奥深いものをもらって、それはそれで、生活を豊かにしていた。もらったものを売ったわけじゃない。なかには真珠のネックレスとイヤリング、セットであげるわ、と言った人もいたけれど貰って帰ってから、急に私が手に入れたらおかしくないか?と考えた。

 綺麗な箱ごと貰ったお品。

 この世界では果たして、盗品だったりする可能性も。私は最初タイムスリップを疑っていたが、なんせ魔術、法術、あるいは自然を味方につけて激昂する本物の魔法使いにまで会ったのだ。

 その方とのやりとりは。


 その方には、片思いの人に素敵な思いが伝えられない、というジレンマがあった。 

 こんなに激しい思いがあるのに、一向に魔法では伝わらない。

「ならば、レターセットです!そして、特別な絵の美しい切手!これでまず目を引きましょう!」


なぜ、わざわざ声を通わさずに手紙を送る。切手、とやらも、あれも値段ごとに絵を分けているだけだ。


「ならお花も添えましょう」

 魔法使いは大嵐、砂嵐、とにかく雷雲轟かせるお爺さんだった。


花なんぞ、送ったこともない。

 

「そういう文化はないと?」

 

いや、あるが、枯れないように処理した花を送ったところで思いは伝わらないと廃れていった。


 造花のことか?それとも魔法でプリザードフラワーにした可能性も。

 

「あえて、生花を送って枯れていく姿を見せてみては?」


 ものの哀れだ。


なんだ、それは。それではまるでわしの思いが


 ちょっと考えだした。もしかしたら、いよいよ思いが尽きたのか、とか、もしかしたらちょっと心配してくれちゃったり。

 切手、この世にあるんだ。魔法とか魔術で会話出来たり、手紙を遅れるならチャラじゃないか。

 私も誰かに手紙書いてみたい、と思った時。

 葉書なら100均商品より安いな。レターセットはともかく切手も84円くらいだ。

 もやしの方がもっと安いな。

 どこまでもお金。どこまでも計算。

 結局、自然を操る魔法使いのお爺さんは、


直接言う。


 最高にクールで古典的な手法を取った。

 私の愛の伝え方はなんだったの?


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