第17話 斗亜も永遠も冷静すぎてキモイ

「「そんじゃ、暴れてやろうじゃねぇか。」」


 勢い良く俺に斬りかかってきた機械を”俺”が正面から殴り飛ばす。


「なっ…」


 男も、他の研究員らしき奴らも全員絶句している。だが俺のやったことは簡単なこと。心の内側にいた”俺”を具現化し、二人で戦えるようにしただけだ。


「この機械だけ潰せば良いんだろ?」

「ああ、暴れようぜ。」


 迫りくる機械達を手から生み出した氷で凍らせ、上から重力をかけることで一気に潰す。”俺”は人間とは思えない速度で動いている。襲い来る刃物を躱し、刃物を持つ手を捻り投げ飛ばす。そうして大体の機械を壊した時。


「じゃあ次はこれを相手してもらおう。」

「「でかくね?」」


 現れたのは蜘蛛のような機械だった。しかもゾウ並みの大きさだ。見た目が機械じゃなかったら俺は無理だっただろう。虫は嫌いだ。


「キモいんだよ!さっさと引っ込め!」


 俺は”俺”を自分の内側に戻し、蜘蛛に向けて炎を放つ。それだけであっけなく蜘蛛は壊れた。


「なんか…弱くね?」


 俺のことを舐めていたのか、それともまだなにかあるのか。それはわからないが驚く程に弱い。とても本当に研究しようとしているとは思えな…


「…素晴らしい!これこそ私の求めたものだ!!」


 そう言いながら俺の元に歩いてくる男。狂ったような笑顔を浮かべている。


「予定変更だ!貴様のその能力を他者に譲渡する方法だけを探す。出来るだろ?そんな馬鹿みたいな事が出来るんだから!期限は今週中だ。できない場合お前の大事な人を殺す。」


 そう言い男は去っていった。今日は…火曜日か。あいつは多分能力がほしいだけだ。恐らく俺を攫ったのもそれが理由だろう。先程の真面目が俺を目が醒めた部屋に戻し、俺は一人になる。


 どうせ俺の大事な人を殺すなんてしないだろう。そもそも俺が受験前日に行方不明になっているんだから警戒が強くなってるはず。でも…警告するに越したことはない。ほんと、つくづく便利な能力だな。


【斗亜、聞こえるか?】

【お前脳内会話とかできたのかよ。】

【まぁ、とりあえず簡単に説明する。なんか俺の能力がほしい研究者に攫われた。んで能力を他人に渡す方法見つけろって言われた。多分しばらく帰ってこれない。】

【アニメかよ。って笑いたいけど実際お前行方不明だしな…てか本当にできんのか?譲渡なんて】

【まぁ出来るんだよね…できないふりでもして時間を稼ぐ。後は警察とかに期待だな。

とにかく、そういうことだ。じゃあな。】

【早く帰ってこいよ。キャッチボールしようぜ。】

【ああ。】


 斗亜との会話を終え俺は改めて考える。あの男に自爆能力を付与すればそれだけで終わるんじゃないか?だが奴らは誘拐なんてする連中。簡単に終わるとは思えない…とにかく、今は従うフリだ。出来るかを試し、出来ないフリを続けよう。その時の反応で対応も決める。


 そしてその日から毎日、まずは小動物から能力付与を試すと言われ部屋の中にネズミの入ったゲージが置かれた。俺は毎日、頑張っているフリをして凌いだ。実際、頭の中ではこいつらを潰す方法をずっと考えていたが。それを数日繰り返し、とうとう男がキレた。

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