第31話 サーベルベア

ハクとのサバイバル生活にも慣れてきた。

 ぼくたちは、雷の神獣に会うために一つ目の山を越えている途中だ。

 

 やまと言えば危険が沢山有りそうなイメージがあるだろ。

 いま、まさにサーベルベアに囲まれているところだ。


 サーベルベアというのは、その名の通り爪がサーベルのようになっている熊の事である。爪一本一本がサーベルのようになっているので実質十刀流だ。


 なぜ、こんな状況になってしまったかというと時は3時間ほどさかのぼる。ハクにのり移動をしていて山道ということもあり、ぼくもハクも疲れてしまった。山で眠るのは危険だと分かってはいたが疲労の限界を迎えて休憩することにした。

「ハク、少し休もう。」


「クン」

 ぼくを包むように丸くなって、クッションになってくれた。モフモフの毛で暖かくて気持ちがいいな。と考えていたら寝落ちしてしまった。

 数時間したぐらいだろうか、ハクが獣の匂いに気が付いて目を覚ました。つられてぼくも目を覚ます。ぼやける視界のいたるところに大きくて茶色いものが映る。

 目をこすり、よく見るとサーベルベアで有った。


「え、まじかよ。」

 思わず声が出た。6頭ほどのサーベルベアに囲まれている。

 ハクが全体に気を張りながら威嚇し合っている。


 ハクが負けることはないだろうが、もし怪我をしたら大変だ。


「移動で疲れただろ、ハク。ここは下がってな。」


 旅の食料も心配になってきたところなので、全部倒して燻製のようにして保存食にしようと考えた。

 

 ぼくは刀に手をかけた。

 そして目の前の熊を睨みつけた。相手からも圧力を感じる。


 正面のサーベルベアが、こちらに向かって飛び掛かってきた。

 空中で腕をクロスさせて、着地と同時にぼくを切り裂くつもりだろう。ぼくはそのサーベルベアを正面から受け止めた。刀と爪がぶつかる。刀で押し、相手がのけ反った隙に腹から一刀両断した。

 後ろから、襲ってきたサーベルベアは振り向きざまに心臓を一突きして仕留めた。

 二頭が左右から追ってきた。

 「雷剣」

 回転しながら、相手の爪ごと真っ二つにした。爪の強度はかなり高いが雷剣なら切ることができた。

 残り二頭に関しては、襲ってこなかった。ほかの四頭が倒されたのをみて後ずさりしている。襲ってこないのに、こちらから切りかかるのはなんだか気が引けたので様子を見ていたら、逃げて行った。


 「ハク、終わったよ!」

大人なしく待っていたハクを撫でてて上げた。嬉しそうに頬ずりをしてくる。


「このサーベルベア、燻製にして保存食にしようね」

ハクが良くわからないような顔をしている。


 そのあとに捌いて、燻製にしたものを上げたらハクは大喜びしていた。

 ハクにとってはビーフジャーキーみたいなものか。

 

 

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小説 異世界ファンタジー タイトル 孤独死したぼくが異世界で成り上がり【無双】して幸せに暮らす 月日 @tukitotaiyou96

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