目指すべき場所


夕焼けの下、灰色の噴煙が舞う焚き火場の前で、六つの巨大な尻が横一列に並べられていた。


俺とナラントンは洞窟の前で、酒や果物、猪の丸焼きなどが並べられたテーブルを挟んで台座に座る。俺は頬杖をつきながら、肉をつまんで口に運ぶ。


「…フォ…フォアァ…アアァアァッ…ァ!?ナアノ!?カミンフォアァ!?!?」

「お!?ハハハ!コイツ!イキながら目覚ましたぞ!!」


どうやら今回捕まえた二人の女のうちの片方が目を覚ましたようだ。あれだけ大量にジャブの煙を吸えば、死ななくても最低で2日は目を覚まさないはずだが、体の穴という穴に陰茎をぶち込まれたせいで流石に目が覚めたか。


だか捕まえた女が目を覚ましても、犯していたゴブリンの無慈悲な腰を打ちは止むことはない。濡れた肉と肉がリズム良く弾ける。槌で突かれた餅のように、女のケツが地面にはねて、縦に、そして横に伸びる。目を覚ました女の悲鳴と、喘ぎ声が混ざった絶叫が、陽気な太鼓の音色とともに、音宴の場に響き渡っていった。


「ナァノッ!!ナノォ゙ア!?アァ!?ナァノオォオッ!?カムゥッストプア!?フランツッ〜!!!」


「ハハッ!ハハハ!やっぱゴブリンの種付けプレスは絵になるなぁ?なあナラントン。いいぞお前たち〜!!もっとやれやれ〜!!」


俺は台座に座り、拳を前に掲げながらゴブリンたちにエールを送る。俺の眼の前で腰を振るうゴブリンたちも、後ろを向いて俺にエールを返してた。


「こいつのデケェチンポコでも入るようにちゃんとガバマンにしろよ〜」


「「「うぇーい!!!」」」


みんなイキイキしてていいね。

森で採れた果実を囓りながら、俺はナラントンの方を振り向いた。お前の仲間入りを祝う宴でもあんのに、なんでさっきから不機嫌そうなんだよ。


「おい!!ナラントン!オメェも楽しんでっか!?」


俺はナラントンの名前を叫ぶ。口から果実の欠片が俺の足元にいた女の頭にかかった。俺はすぐに口から出た欠片を払うと、俺の方をじっと見つめてきた女の頭を後ろから押さこんだ。 


「ごっ…ぶっぉ…ぎゅる…」


頭を押さえ込まれた女は、目を瞑りながら喉の奥を鳴らした。女のえずき声に合わせて、喉がうねり、無数のヒダが絡まり始めた。


「これが本当の踊り食いってな」


俺は独り言を呟きながら、脚を組むように女の頭を固定する。こうすると苦しそうな顔をするから見てて楽しい。


「小僧、それで、これからどうするつもりだ」


ナラントンは本当に相変わらずだね。今日と明日ぐらいなにも考えずに飲み明かしてもいいだろがよ!


「んん゙ん゙!まぁ…それじゃあ一つ首脳会談といきますか。俺もいろいろ考えてるんでね」


俺がこの里を支配してから、そして人間と接敵した一週間前から俺も今後の展望について考えていた。俺はこの里がこれからやるべきことをナラントンに話していく。


「俺たちがこれからやるべきことは沢山あるけど、今すぐに出来ることと、時間がかかるものの二つがある。今できることはまず住環境の改善。ゴブリンが住む木の小屋じゃ、敵の大砲とか炎魔法が飛んできたら、簡単に破壊されちまう。今日の戦いでやっとマリクリと融合できるようになったからな、奴の土魔法を奪って頑丈な住居を建設する。それにこれから増えてく人口のためにも、三階建ての家を建てようと思ってる」



三階建ての家の広さは一部屋あたり5畳もあれば十分だよな。中央に上へと上がる階段を作って、一階層に8部屋で合計24部屋か。


一つの住居で大体100平米くらいかな。この里の広さは大体見積もって直径が縦横300メートルほどだから、焚火場や倉庫とか、新たに施設を作るための余白も考えたら最大でも50棟が限界かね。1棟あたり24人のゴブリンが住めるから、現在の里の広さだと1200人までは収容できるか。


現在の人口は子供が少し増えて65人になった。それでも今は数は少ないが、この一週間だけで5人増えてる。それに明日には俺が可愛がってる女の出産予定日だ。そして今回の戦いで女は二人増えて、合計で八人になった。このままのペースでいけば、一月で48体のゴブリンが生まれてくる。その半分は成人する前に死んでしまうだろうが、それでも一年で280人以上の人口が増えていく。


今の芋畑と、狩りで養える人口は多くて100人が限界だ。これ以上の人口を養うためには、もっと芋畑を広くするか、ほかのゴブリンの里を滅ぼして狩場を奪うしかないな。


ただ現状、芋の栽培に必要な水は井戸からの地下水に頼ってる。大量に必要な水を井戸から汲んで畑まで持ってくるのは非効率だし、なにより広い畑には使えない。だから畑を広くするためには、西の川から水を引いてくるしかない。そのために水路の整備と、畑にする場所に生えてる木の伐採が必要になる。正直これだけなら一週間もあれば終わると思う。


マリクリの魔力でも、五日あれば里全体を覆う壁を建設できた。だから40体近くのゴブリンと融合し、レベルもマリクリ以上に上がった俺なら、より大規模な工事を短期間でできるはず。まぁ長く見積もっても一月あればできるだろ。


芋の収穫は一年に二回。春と秋だ。夏も過ぎて最近は少し肌寒くなってきた。芋の収穫も近い。だから早めに水路を引いて畑を拡張したい。西の川から俺の里まで高低差はそこまでないので、水路を引いてこれば簡単に水源を確保できる。


それに畑を作りたいのは芋だけじゃない。これからはケッシ―の花も栽培していきたいと思ってる。ケッシ―の花はこの台地周辺からしか取れない。以前はゴブリンたちの娯楽だけに利用されていたからそれでも良かったが、今後の人間との戦いを考えると、シャブ玉の大量生産は必須になる。だから俺の里から滅ぼした北の里あたりまでを土魔法で開拓する。硬い土をあんな粘土みたいに自由に動かせるなら、木々が生えてる場所の土をミキサーみたいに混ぜて、木ごと粉々にしちまえばいい。


「――だから今できることはこれぐらいかな。ケッシ―の花の栽培は初めてだから時間かかるだろうけどね。あと狩り組も居残り組も、時間がある時は銃の訓練をすることぐらいだね。今回の略奪で五千発分の弾薬は手に入れられたし。まぁそれでも数に限りはあるから簡単に射撃訓練はできないけど、模擬演習や装填の練習はできるさ」


戦力を強化するにしたって、その人口を養う食糧がないと意味ない。治水と開拓は土魔法のおかげで時間はかからなくても、芋やケッシ―の花の栽培には時間がかかる。人口だって急激に増えていくだろうが、人間たちと張り合えるまでにはかなりの時間がかかる。


「おそらく、今回の敵は正規軍じゃない。いずれ主力が来るかもしれないけど、向こうもそんな簡単に準備は出来ないよ。特に俺たちの存在と城壁の存在があればね」


「ふむ…分かった…」


なんとか?ナラントンは納得してくれたようだ。


「あとは…直ぐにって話じゃないけど、できればこの森の外にゴブリンの見方を作りたい。俺たちと同じ文化水準じゃなくて、人間でもいいから優れた文明を持つ味方の存在がほしい。森の外に味方が出来れば、交易も出来るし、利害が一致すれば援助や同盟も結べるかもしれない。そうなるのが理想だけど、無理でも敵への牽制にはなるから」


これは長期的な目標だな。

いずれ俺がこの森の外を目指す時の足掛かりにしたい。


「それで、ナラントンって長生きしてるよね?なんか味方になってくれそうな奴ら知ってる?」


「味方になるかは知らないが…確か……この森の北側の沿岸に、エルフの住処があったはずだ。俺が川の近くに里を移す前から奴らは住み着いていた…」


え?エルフ⁉

エルフって言ったの⁉

いるんだエルフって…エルフ居ますやん…。


いやでもアレだね、

エルフとゴブリンが揃ったら碌なことにならんぞきっと。


「だがエルフは危険だぞ。奴らは全員、生粋の魔法使いだ。数年前にエルフと人間の戦いを見たことがあったが、銃と魔法を使って人間側を圧倒していた」


「えぇ…やだ怖い」


「銃があるだけ、魔法使いもいると思え。無駄に刺激するべき相手ではないが…エルフは確か非常に長寿な生き物だ。俺たちゴブリンが知らないモノを沢山知っているかもしれん」


うーん、なるほどねぇ…。

エルフかぁ。

まぁでも一度ぐらいはヤッテみたいもんだ。

それに長寿なら一人でも捕まえられたら長く使えるし。


早くエルフとヤリたいし、こりゃ悠長なこと言ってられん!

明日にも住環境の改善は初めていかないと。


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