第5話 となりのサギシ

 皆さん、散財、してますか?

 

 私は来月推しが日本に来る関係と、

 すでにすっからかんのため、なんも散財できなくなった。悔しい。

 しかし、これは嬉しい悲鳴ではある。

 何故なら散財したとしても、イベントもあるし、推しに会える。

 しかも、推しからサインももらえるし、ハイタッチもできるし、やったね!!! しゅき!!!!!

 27000円は安すぎだけど!

 これは実質貯金だわ()

 

 ただ、これもすべて、チケットをちゃんと手に入れられることと、そのイベントが飛ばないことが重要である。

 

 そんなことあるかって?

 あるんだなぁ、それが。

 

 どちらも、私は被害にあってはないけれど、間近で起きたとんでも事件のお話をしよう。

 

 まず、ライトな方、イベント会社が飛んだ話である。

 

 そのチケット会社は新しく出来たばかりで、皆名前も知らないような会社だった。

 私もとあるアイドルグループの初来日イベントで、そのイベント会社の名前を知り、そんなところもあるのかと思っていた。

 仮にS社としよう。

 

 そのS社のイベント、私はチケットの支払いを忘れていた。繁忙期で、すっかり入金し忘れたのだ。これは私のミスである。

 

 仕方ない、諦めるか。と私はそのイベントに行かないことにした。

 

 しかし、そんなミスをした中、なんと知らない番号から電話がかかってきたのだ。

 

 基本、知らない電話番号は出ずに、留守番の内容を確認する。留守番の音声が無ければ、番号ネット検索だ。

 

 そんな中、掛かってきた電話には留守番が入っていた。

 

「〇〇のイベントチケットですが、未入金のため、〇〇日まで延ばしました」と。

 

 その時の心境は、「親切だなあ」と。呑気に思っていたし、その電話を受けてすぐに支払った。実際に開催されたイベントもよかった。

 

 その後、S社が他のアイドルのイベントのチケットも売り始め、更には新人アイドルを集めたイベントも売り始めた。

 

 友人の何人かも買っていた。私は日程が合わず行けないけれど。

 

 しかし、それが、いきなり雲行きが怪しくなった。

 

 なんと、その新人アイドルの会社から

「イベント予定はない」というお知らせだ。

 

 おや? うん? おや?

 イベントがキャンセルになった通知が、S社から出る。ふむふむ。

 

 払い戻しもするので、お知らせをお待ち下さいも出た。

 そして、そのチケット会社は飛んだ。

 しかも、そのS社の前身が割れ、そこも昔同じことをしていた。

 

 ちなみに、未だに返金はされていない。

 なんちゅー詐欺会社だ。

 

 しかも、また名前を変えて同じことをしたとさっき知った。

 なんという世の中だ。

 

 しかし、これよりもやばいがいた。

 

 今から約7年前、私はとある女の子と知り合った。当時、隣国10人超えのアイドルグループを推していた。めちゃくちゃ推していた。

 ハイタッチしたくて、香港のライブにまで飛んだことがあるくらいである。本当に楽しかった、ハイタッチ待ってるおしきゃわわわわわわわわわわ。

 

 さて、そのアイドルグループの日本のライブで、仲良かった友人経由でとある子とであった。

 

 その子はHちゃんとしよう。

 

 Hちゃんは、日本で一番人気の子を推していた。

 推しはまじのイケメンで、私も最初生で見た時は思わず見惚れてしまったほどだ。

 さて、そのHちゃんは、何度も韓国のサイン会に参加し、誕生日プレゼントには10万はする服をプレゼントし、スケジュール全部に着いていくなど相当強火の人だった。

 しかも、当時結婚していたと言っていた。私と同い年だったので、驚きである。

 

 そんな彼女の周りには、それはそれは強火の人が多かった。軍団だ。十人近く若い子たちに囲まれていた。しかし、その中で彼女と同担は一人もいない。彼女が同担拒否というよりも、彼女の同担に対するキツめのマウントのせいだろう。

 

「〇〇くんと目があった」と言えば、

「〇〇にコーヒー奢ったことあるけど?」

 

「〇〇くんのサイン当たった」と言えば、

「〇〇から似顔絵描いてもらったことあるけど」

 

 こんな具合にだ。

 そんな彼女と私は、実は追ってるアイドルが他にも被っていた。

 そこでも、彼女は一番イケメンの子を追っていた。

「〇〇と飯屋で出くわして、一緒に飯食ったことある」

 と豪語していた。

 

 ちなみに、私は多分、彼女にとっては必要な人であった。

 何せ、私はどちらのグループでも一番人気のない子を推していた。びっくりするくらいに人気ない子である。なんで、そうなったか。

 知らん、一番好きになったらそうなってしまったんだ。

 

 なので、彼女には随分良くしてもらった。というよりも、在庫処分係になっていたと思う。

 アイドルの個人ランダムグッズや、トレーディングカードなど、人気のない子を無限回収してるとなると、数が限られてくるのだ。

 

 さて、そんな私は彼女とは会えば話すし、売られれば買う。そういういい関係を気づいていた。

 

 しかし、時の流れは残酷でそのアイドルを推すのをやめて、私は別のアイドルに、その子も別のアイドルにと一年くらい合わない時期があった。

 

 そこから次彼女と出会ったのは、また別のアイドルZのCDを購入しにいった時であった。

 

「あれ、Hちゃん?」

「え、木曜日じゃん」

 

 なんと、とんでもないオタクの行列の中折り返しして並んでた向こうに、Hちゃんがいたのだ。

 しかも、Zでもお互いの推しは別であった。

 

 Hちゃんは、その時もまた若い子たちに囲まれていて、囲んでいる子が10代の子達も多かった。その時も若い子たちが4人ほどいて、紹介されたのを覚えている。

 

 そんな彼女は、やはり私を重宝してくれた。そりゃ、彼女の周りにはいない子を推していて、金の使い方が荒い私だ。しかも、無限回収癖もある。

 そりゃ、重宝してくれるのだろう。

 

 ある日、彼女から仕事中に急に連絡が来た。

「今から一時間以内に渋谷のxxに来い。Zたちがポスターにサインに来るぞ」

 

 その時、私はもうすでにやめる気満々で辞表叩きつけ済みの会社にいた。仕事も干されて、そんなにない。

 

「午後半休いただきま〜す!」

 

 私はにっこりと渋谷に向かった。

 そして、Zたちは本当に来た。その子曰く、そのCDショップの店員と繋がりがあるらしく、情報を引っ張ってこれた。

 

 ちなみに、私は時間がなさすぎて、源泉徴収を印刷した紙の裏で推しの名前を書くしかなかった。推しからはハートもらえた。クソかわいかった。

 

 そこにいた若い子たちも、彼女の情報のお陰で来れたらしく、その場にいた子たちは彼女にお礼を言っていた。私も感謝したし、今もそのことについては有り難いと思っている。

 勿論ZのCD特典のイベントでも、彼女は活躍しており、若い子たちはその恩恵からか相当信頼していた節があった。

 

 しかし、時は11月。その友人との連絡が取りづらくなっていた。体調を崩したとは聞いていたし、その取り巻きの若い子たちから「Hさんと連絡が取れないか?」と聞かれることが増えた。

 

 最初はなんでだろう? と不思議ではあった。最初に出てきた共通の友人にも連絡したら、その子も最近は連絡とれてないと話していた。

 

 しかし、とんでもない事件が起きる。

 

 時は1月。私はとあるアイドルオーディション番組オタクをしており、勝ち残った子たちがOというグループ名になり、デビューファンミーティングをした。

 そのチケット争奪戦は、熾烈を極め、敗戦者の屍がごろごろしていたと思う。その裏では、チケットの転売ヤーも元気に動けた頃で、ツイートではそういう転売も横行していた。

 私は追加になった初日が当たり、平日ではあったが参加することは出来た。

 

 幸せだなあとファンミーティングの余韻享受していた時、Hちゃんたちの取り巻きの子たちからこんな相談が来た。

 

「私たちの総額100万円くらい、Hちゃんに持ち逃げされました。

 しかも、今Hちゃん、Oで、チケット詐欺していて問題になってます」

 

 おや???

 

 その子達の話を聞いた限りのHちゃんの、まず100万巻き上げたやり口はこれだ。

 1.Zで知り合った若い子たちに、自分のライブ遍歴やサイン会実績を言う

 2.実際に言ってる写真とか証拠を見せる

 3.「特典券交換してあげる」「サインしに来るよ」「推しが見やすい場所教えてあげる」「ホテル一緒に泊まろう」などのローコストの親切をしてあげる

 4.信頼構築後、「サイン会代行してあげる」「ライブチケット代行してあげる」と上手いことを言ってまとめて金を出させる

(サイン会やライブチケットは隣国の店に直接行ったり、隣国サイトを使うしかないためコツがいるのだ)

 5.金を出させた後体調不良と言って、音信不通

 

 

 うん、まじの詐欺師の手口やん。

 

 そして、チケット詐欺もまた単純だ。

 

 1.SNSで「チケット譲ります」と出す(ちなみにチケットの売買は公式に禁止されている)

 2.それに食いついたある一定の時間に来た全員に「あなたと交換します」と返信し

 3.ツイートを削除(こうして貴方と交換しますというツイートの真実味を出す)

 4.そして、金を先に指定銀行に振り込ませる

 5.振込確認後そのまま飛ぶ

 

 シンプルイズベストなやり口だ。

 

 前者が被害者が5人で被害総額約100万円。

 後者が被害者が40人超えの被害総額約200万円超え。

 

 なんとまあ、えげつない。

 しかも、厭らしいのは個人にしたら被害総額が少なく、弁護士立てて取り戻したところで労力と費用に見合わない額なのだ。

 

 ただ、オタクというものの怒りは、時として損益の範疇を超えていく。

 なにせ、推しに会えるという機会を、詐欺の道具に使われたのだ。

 

 詐欺にあった人たちが、全員で被害者の会として彼女を訴えたのだ。

 

 ただ、驚きはこれだけじゃ収まらない。

 なんと、その経緯で彼女が過去に同じことを2やっており、逮捕歴があったのだ。

 

 しかも、本名で検索したらSNSの海で過去の悪行も出てくる具合にだ。

 怖すぎるだろ、どうなってんだ本当に。

 その昔の被害にあった人が「あいつまだやってたんか!?」って驚いてるのを見て、そりゃ驚くよなと思う。

 

 私もまさか、こんなことになるとは思わなかった。幸い、私や仲良い友人たちは被害に会わなかったが、明日は我が身だったのは確かだ。

 

 その後は、やはり第三者が入ったからどうなったかはわからない。

 少額なりにもお金は返ってきたとだけは聞いた。

 

 詐欺した理由は、Hが別の推しに使うためだったようだ。誕生日プレゼントや、サイン会に行っていたそうだ。

 

 そんな汚い金で推し事をするな!!!!

 と激しく思う。

 

 さて、私はそんな思い出を抱えつつ、またチケットを買う。推しに会うためだ。

 お金稼がないとな。世の中世知辛い。

 

 そして、久々にオタ活のアカウントを開く。

 去年、その取り巻きだった子達から連絡が来ていた。

 

「アイツ、メン地下で知り合った女の子のキャッシング勝手にやって、ボイカフェ行ったらしく、また捕まったらしいです。被害者から連絡きました」

 

 

 あいつ、まだやってたんか!?

 

 

 恐ろしい世の中である。こわやこわや。

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