第4話 コスメは必要経費だから、ノット散財

 コスメは必要経費である。

 散財ではない。むしろタダだ。

 

 と母親に言った時、母親の反応は呆れを通り越していた。

 それはそうだ、その時私の後ろにはダンボールの山。

 BLACK FRIDAYという大きなお祭りセールにかこつけて、約9万円分のコスメを買っていたからだ。

 オーストラリア、ドイツ、イギリス、アメリカ、ドバイ、中国、韓国、日本。

 相当ワールドワイドに品物が届いており、受け取ったおばあちゃんからは「あんた警察にだけはお世話にならないでよ」と念押しされたくらいだ。

 安心してくれ、全てコスメだ。入っている白い粉は、うん、ペロッ、ラメ入りのフェイスパウダーである。

 

 そう私はそこそこコスメオタクである。

 それも、海外コスメ好きなのだ。

 

 なぜ海外コスメが好きか。特に、アイシャドウパレットが好きなのか。それは、携帯性無視した大きくて、デザイン性やユーモアにに振り切ったアイシャドウパレットが多いからである。

 

 例えばだ、私の手持ちにバイオレットカラーのベルベット生地が貼られた六角形のジュエリーボックスのようなアイシャドウパレットがある。

 本当にここに豪奢なダイヤのネックレスが入っててもおかしくない、そんなパレットの中には美しい紫ベースのアイシャドウカラーが18色も入っている。しかもアイシャドウには一つ一つエンボスがされており、王冠や王杯などの特殊なエンボスもある。

 盤面も美しい。色もまるでガラスの子なように光る美しいパープルラメや、毒々しいレッド、毒のような黒紫。

 色合いも美しい上に、カラー一つ一つに独自の名前もついている。

TAKE THE CROWN王座につく」っていう美しいゴールドパールが入った紫色、その上下線対象のところには「BETRAYAL裏切り」の濃い紫色もある。

 しかも「裏切り」の色のエンボスは、ギロチン。こんなオシャレで毒々しいアイシャドウパレット、他にはない。

 一時期はこの紫のパレットばかりでメイクしていた。まるで、自分が最強の王になった気分になれるパレットだ。

 

 また、こんな毒々しいのだけではない。パッケージに可愛いドーナッツの絵が書かれた愛らしいものもある。

 色名も「スモア」「ジンジャー」「モチ」「ワッフル」と言った美味しそうパレットもある。

 

 動物をテーマにしたアイシャドウパレットでは、狐をテーマにしたら「Fox tailきつねのしっぽ」というカラーには狐の尻尾のエンボスがあった。

 

 あとは、ケース自体にギミックがあるものもある。なんとチェス盤になるアイシャドウパレットがあったり、砂が入っていてさらさらと遊べるアイシャドウパレットもある。

 

 そして、最後にブランドの創設者のギリギリイラストが描かれたアイシャドウパレットがある。本当に描かれているし、なんならぷっくりエンボス加工されている。

 ちなみにタイトルは日本語訳するとカクヨムに怒られるレベルのアイシャドウだ。

 そのアイシャドウは、中身自体はコスプレイヤーさんにおすすめしたい一品。

 なにせ、30色マットアイシャドウが入ってるだけではなく、白からヌード色、ヌード色からブラウン、黒へと美しいグラデーションになっているのだ。

 ただ、持ち歩きするにはかなり勇気がいる。

 

 なにせ、アイシャドウカラーの名前も一筋縄ではいかない。

 

 そのアイシャドウの真ん中にある二色は

「TOP」「BOTTOM」だ。

 ちゃんとこの順番に並んでいる。

 さらに言えば、「Money Shot」「BED OR FLOOR?」なんて名前のものもある。

 ちなみに私が愛用していた色は「SILK ROBE」と「FLUFFER」である。日本語訳は気になった人だけしてくれ。

 え、過激なものをわざと選んだって?

 残念。寧ろまだ書けるラインを選んだ。

 ここに書けないもっと直接的なものばかりだ、アイシャドウパレットの名前も含めて。

 

 もちろん、それだけじゃなく、創設者が「もっとわかりやすく直感的に使いやすいアイシャドウを作った」といって用意されたパレット。

 アイシャドウカラー名は、「outer eye lid外まぶた」「lash lineまつげのライン」だ。どこに使うか本当にわかりやすくてびっくりだ。

 

 さらには、まるで芸術品のようなアイシャドウもある。創設者の目が描かれているもの。アフリカの民族メイクのイラストが書かれているもの。外箱が芸術品のようなアートな絵が書かれているもの。

 中身の輝きがすごいものもある。偏光といって光の角度で2色や3色、多色に光るアイシャドウ。

 ラメを超えてスパンコールが入ってるものもある。スターのスパンコールが可愛いが、少し落ちやすいのが難点だけれども。

 

 勿論、日本の携帯性や、シンプルなアイシャドウも好きだ。洗礼された無駄のないデザイン。色も絞られている分、何を使うべきか迷うことも少ない。

 最近は日本のアイシャドウを使うことが多く、特に鶴のような配色のものをよく使っている。

 

 さて、ここまでアイシャドウについて話してきたが、私は他のコスメも大好きだ。

 

 アイライナーはカラー展開まるまる買ってるブランドもある。まつげは基本ブラックだが、遊び心のために紫や青のマスカラもある。

 つけまつげも偶に着けるし、カラーコンタクトも三十路過ぎても使っていきたい。

 

 チークはそこまで使わないが、それでも5色くらいは持っていて、最近は買い足しを探している。

 顔を光らすハイライトも大好きで、一時期はハイライトで二万溶かしたこともある。今はプチプラで最強なのが出たのでそれを使っているが。

 

 リップはもう、好き好き好き好き好き好き好き好き好きッッ!!!!

 欲しい口紅は沢山あるが、とにかく紫色のリップがほしい。とある歌姫のリキッドリップに理想の紫色があるため、近々個人輸入決め込みたいところだ。

 勿論、リップクリームやプランパーという唇をぷっくりするやつも大好きだ。

 

 ファンデーションも、下地も、基本的には複数持っていて、肌の調子や時期に合わせて変えている。今もクッションファンデと、クリームファンデを使い分けている。下地なんて3種類を部分的に使い分けている。いいか、重ね塗りは叩き込むこれが肝だ。

 

 思えば、肌の調子といえば基礎化粧品というものもコスメであろう。

 洗顔、化粧水、乳液、美容液、フェイスマスク、クリーム。

 今の自分に合ってるもの調整していがなければならないところだ。

 

 一瞬話はズレるが、基礎化粧品で大好きなブランドがあり、むしろ信者レベルで使っているところがある。

 そのブランドが先日某SNSのトレンドに入っており、私は「新商品か!? キャンペーンか!?」って慌てて、検索したら一面ロボットがいた。

 驚きのあまりツイートしたら、それがプチバズをしてしまい、しかもまとめに乗ったという出来事があった。ブランド公式からはいいねまで頂いてしまったし。

 プチバズだからと、宣伝しなかったが、今更ながらにするべきだったと思う。

 

 そんな大好きブランドに、毎月私は2万近く注ぎ込んでいる。必要なものを継続して買うと、そうなってしまうのだ。

 

 しかし、ここの基礎化粧品が肌にあっており、好きなのだから仕方ない。それに、基礎化粧品があってないと、上のメイクも全て崩れていく。

 地盤が悪い場所には家も建てられない。そういうことだ。

 そう考えるとやはり、これは必要経費だから払う。そうだろ? な?

 

 さて、ここまで来て、私はどうして化粧をするのか考えてみた。

 実は、別に私は四六時中メイクをしてるわけではない。在宅勤務だし、家の近くやアルバイトのときはすっぴんで行ける。

 でも、推しに会う時、友人と遊ぶ時、どこか一人で行く時、私は必ず化粧をする。

 

 それは多分、化粧には気持ちを高揚させてくれる力がある。また、自分の弱いところを隠し、安心感を得るという力もあるのだ。

 

 そして、私の化粧は正直ケバめである。これは、粗を隠した結果ではなく、好きと有用性を突き詰めた結果だ。

 

 まず、有用性としてはケバいメイクをしてると、変な人に絡まれなくなる。痴漢とかナンパとかじゃなく、いきなり怒鳴りつけてくるやつとか、わざとぶつかってくるやつとかだ。

 

 正直、女子中高生時代や可愛いOL目指してた時代はそういう奴らに散々苦汁を舐めさせられてきた。一度傘で殴られたこともあるし、カバン投げつけられたこともある。

 

 それが、大学の派手髪時代や、今のケバい女になってからどうだろうか。

 ぶっちゃけ、ほぼ皆無である。一回だけ、他の女の子にフラれたナンパ野郎に勝手に「見んじゃねぇよ!」とキレられたことがあるくらいだ。

 

 そして、単純にかっこよく強いメイクをしている自分が好きだからである。自分のことを好きと言える瞬間があることは、とても大事だ。

 たとえメイクをしていても。

 自分の好きだと言えるなら、どんなメイクをしてても良い。他の人に言われる筋合いはない。

 私は自分を好きだと言うために、メイクが必要だからする。

 

 メンタル維持のために、メイクが必要。

 

 その道具のコスメも、必要。

 だから、コスメを買うのは必要経費なのである。証明完了である。

 

 コスメは必要経費。散財じゃないの。

 ちなみにだが、上で紹介したアイシャドウの殆どはもう消費期限(大体一年半くらい)が切れているため、お飾りや色の確認にしか使えない。

 コスメとしての役割を終えたら、飾りにもあるアイシャドウパレット。

 

 うん、これは、必要経費超えてタダである。

 

 そう思って私はまた、アイシャドウを買い足すのであった。

 

 

 

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